学生と企業が対話からつながる。北海道の採用を変える、21歳起業家の挑戦
株式会社NEXT INCEPTION 柴田 陸空 氏
株式会社NEXT INCEPTIONは、北海道・札幌を中心に、学生のキャリア支援と企業の新卒採用支援を手がけています。学生コミュニティを基盤に、企業が一方的に説明する従来型の合同企業説明会ではなく、学生と採用担当者が本音で対話し、互いを知ることのできる交流型イベントを展開。2026年4月に法人を設立した柴田氏に、起業の背景、事業に込めた思い、組織づくり、今後の展望について伺いました。
目次
就職をゴールにしない、学生のキャリア支援
――現在の事業内容について教えてください。
学生に対するキャリア支援と、企業に対する採用支援の両方を行っています。学生向けには、キャリアをテーマにしたコミュニティを運営しています。
学生は就職そのものをゴールに設定しがちですが、実際には就職後も長く働き、転職する可能性もあります。だからこそ、どの会社に入るかだけではなく、将来どうなりたいのかまで考えられるように支援したいと思っています。
コミュニティの中では、「どの会社に行きたいか」「自分に合う会社はあるか」といった相談が多くあります。一方、北海道内の企業からは学生との接点を求める声がありました。そこで、学生と企業をつなぐ取り組みを始めました。
――採用支援では、どのような場をつくっていますか。
従来の合同企業説明会は、企業が学生に向けて一方的に説明する形式が中心です。それだけでは、学生も反応に困りますし、企業も学生が本当に興味を持っているのか分かりにくいと感じています。
私たちのイベントでは、フリーマッチングタイムを設け、企業の担当者と学生が立ったまま自由に会話できるようにしています。まず人として話し、興味を持った学生が企業ブースで詳しい説明を聞く流れです。
企業で働く人が何を大切にしているのか、担当者が会社のどこに魅力を感じているのかなど、学生が本当に知りたいことを対話の中で引き出せる設計にしています。
イベントには企業約30社、学生約100人が参加します。企業からの一方通行ではなく、双方が質問し合いながら理解を深められることが特徴です。
北海道の人材課題から始まった起業
――事業を始めたきっかけを教えてください。
北海道内の経営者と話す機会が多く、その中で最も大きな課題として聞いていたのが人材不足でした。日本全体で人口が減る中、北海道は道外への人材流出も激しい地域です。
学生が就職先を選ぶ際、賃金の高さを理由に道外へ出ることも多く、人が足りないために成長が難しくなっている道内企業があります。一方で、東京は賃金が高くても物価も高いため、北海道で一定の賃金を得られる企業に入ったほうが、生活の幸福度が高い場合もあります。
しかし、学生はそうした情報に触れる機会が少なく、自分の将来像を十分に設計できないまま就職先を選んでしまうことがあります。まず学生に考え方や選択肢を伝えたいと思ったことが、事業の出発点です。
法人設立は2026年4月20日ですが、その約1年前から学生コミュニティを運営し、小規模なイベントなどを通じて学生と社会人のマッチングを続けてきました。卒業後も就職はせず、この事業を続けていく予定です。
――経営で大切にしていることは何ですか。
誰も損をせず、全員が得をするエコシステムをつくることです。採用には多くのお金がかかります。高い費用をかけても、入社後にミスマッチが起き、早期離職につながることもあります。
採用コストを抑えられれば、企業の資金面に余裕が生まれ、その分を新卒社員や既存の従業員に還元できます。
学生にとっても、企業を知る機会やキャリアの選択肢が広がります。企業、学生、社会のいずれにも意味がある仕組みをつくり、社会貢献を中心に事業を進めることは譲れません。
19人の組織で、学生の挑戦を実践に変える
――現在の組織体制について教えてください。
業務委託を含めると、全体で約19人です。雇用しているのは、私を含めて2人です。学生との接点を持つコミュニティがあり、札幌市を中心に周辺大学の学生ともつながっています。
新たに始めた営業代行事業でも、実際に営業を担うのはほとんどが学生です。営業経験のない学生がほとんどですが、社内で営業の考え方やノウハウを伝え、インサイドセールスとフィールドセールスの両方に取り組んでもらっています。
私自身、以前にコールセンターや訪問営業を経験しました。その経験を生かしながら、学生が自ら動き、実績と能力を身につけられる場をつくっています。経験が学生自身の価値となり、学びにもつながる仕組みを増やしたいと考えています。
――組織運営で意識していることはありますか。
学生に仕事を任せるだけではなく、動けるようになるための知識や営業の進め方を教えることを重視しています。学生が経験を積み、自分の実績として残せることが大切です。
現在は、学生のキャリア支援、企業の採用支援、営業代行を並行して進めています。それぞれの事業を通して、学生が成長できる場と、企業の課題を解決する仕組みを結びつけたいと考えています。
採用コストを抑え、北海道で人が循環する仕組みへ
――今後、既存事業をどのように成長させたいですか。
北海道の企業が負担する採用単価を、とにかく下げたいです。将来的には、採用に大きなお金をかけなくても人が入ってくる仕組みをつくりたいと考えています。学生の成長の場と企業の採用を両立させるエコシステムを形にすることが目標です。
また、北海道の若者が成長に挑戦できる文化もつくりたいと思っています。学生は成長したくないわけではありません。挑戦できる環境や、成長を応援する仕組みが十分ではないと感じています。営業代行事業も、そのための取り組みの一つです。
中途採用の領域では、北海道内の企業だけで人材が循環する仕組みも構想しています。離職した人が高額な転職サービスだけに頼るのではなく、道内の別の企業へ移り、地域の中で働き続けられる形をつくりたいです。
――新たに挑戦したいことを教えてください。
採用におけるSNS活用の支援です。東京などではSNSを使った採用が広がっていますが、北海道ではまだ十分に浸透していません。他社とも協力しながら、SNS採用のコンサルティングを広げていく動きを進めています。
3年後には、現在の15倍の売上を目指しています。将来的には上場を実現したいです。ただし、上場時に採用支援だけを行っているとは限りません。コミュニティ形成というビジネスモデルに可能性を感じているため、日本国内にとどまらず、将来は海外にも展開したいと考えています。
ビジネスモデルを考えることが、日常の楽しみ
――仕事を離れた時間は、どのように過ごしていますか。
仕組みを考えることが好きで、基本的にはビジネスのことを考えています。テレビやニュースで会社の特集を見ると、「この会社はどのようなビジネスモデルなのだろう」と分析します。
勉強しなければならないという感覚ではなく、趣味として自然にやっています。休日であっても、勢いのある会社やさまざまな企業の仕組みを見ることが楽しみです。また、リフレッシュとして、時々温泉やサウナにも行きます。