発明力で日本を再び元気に――知財教育を通じて創造性あふれる社会を目指す    

一般社団法人発明力開発協会 代表理事 田中一正氏

日本は資源に乏しい国でありながら、これまで知恵と技術力によって発展を遂げてきました。しかし近年、日本経済の停滞や国際競争力の低下が指摘される中で、改めて求められているのが「発明力」の向上です。

一般社団法人発明力開発協会では、企業や個人が発明を生み出す力を高めるための教育事業を展開しています。発明力を育てることで企業の成長だけでなく、日本全体の活性化につなげたい――。今回は代表理事の田中一正氏に、事業への思いや経営理念、今後の展望について伺いました。

発明力を高め、日本経済の再活性化を目指す

――現在の事業内容について教えてください。

当協会では、企業や個人の「発明を生み出す能力」である発明力を高めるための教育事業を行っています。発明力は個人の資質だけでなく、経験やスキルによって高めることができると考えており、教育を通じてその力を育成することを主な目的としています。

日本は資源が豊富な国ではありません。そのため、知恵や技術力によって価値を生み出していくことが重要です。発明力を高める人材が増えることで、新しい商品やサービスが生まれ、日本経済の活性化につながると考えています。

――どのような企業を対象に支援を行っていますか。

現在は売上規模20億円から200億円程度の企業を中心に支援しています。ただ、今後は中小企業への支援をさらに強化していきたいと考えています。

日本企業の大多数を占める中小企業において、経営者や社員が商品開発や業務改善の視点を持ち、自ら発明力を発揮できるようになれば、大きな可能性が生まれます。その積み重ねが日本全体の成長につながると考えています。

製造業と知財の経験を活かした独自の指導

――これまでのご経歴について教えてください。

私は日産で約20年間、車両開発の業務に携わってきました。その後、特許庁で審査業務にも従事し、多くの発明や知的財産に触れてきました。

製品を生み出す側の視点と、発明を評価・審査する側の視点の両方を経験していることが、現在の活動の大きな強みになっています。

――どのような業界に強みをお持ちなのでしょうか。

これまでの経験から、自動車メーカーや部品メーカーをはじめ、産業用機械、空調関連などの製造業分野に強みがあります。

また、発明を生み出すための考え方だけでなく、既存のデータベースを活用しながら発明を組み立てていく手法についても指導しています。アイデアは偶然生まれるものではなく、一定の方法論によって再現性を高めることができると考えています。

退職を機に社会へ還元した知識と経験

――協会を立ち上げたきっかけを教えてください。

退職のタイミングで、自分が培ってきた知識や経験を社会に還元したいと考えたことがきっかけです。

これまで身につけてきた「技術を活用して発明を生み出す方法」と、「迅速に先行技術である 発明を理解する方法」を多くの人に伝えることで、日本のものづくりや産業の発展に貢献したいと思いました。

また、日本のGDPや特許出願数の状況を見る中で、かつて技術立国として世界をリードしていた日本の強みを取り戻したいという思いもあります。

――経営理念や大切にしている考え方を教えてください。

私が目指しているのは、特許庁のミッションである「知が尊重され、一人ひとりが創造力を発揮したくなる社会」です。

人は置かれた環境や感情の状態によって発想力や処理能力が大きく左右されます。そのため、創造的な活動に取り組みやすい環境づくりを重視しています。

企業の中では、「現実的に考えろ」「つまらないことを言うな」といった言葉が無意識に使われることがあります。しかし、こうした言葉は創造性を阻害する要因になりかねません。社員が自由にアイデアを出せる環境を整えることも、発明力向上のために重要な要素だと考えています。

AI時代だからこそ人が主体になることが重要

――AIの活用についてはどのように考えていますか。

AIは非常に有効なツールですが、人間が主体となって使いこなすことが重要だと考えています。

AIは効率化に役立つ一方で、もっともらしい誤った情報を生成する可能性もあります。そのため、最終的な判断や確認は人間が行わなければなりません。

また、人間の思考する能力が退化してしまっては元も子もありません。

今後はAIを活用して発明に関する情報を効率よく検索したり、特許マップの作成を支援したりすることで、従来、手間が掛かっていたステップを効率化し、発明創出に向けた創造力を発揮できる環境づくりを進めていきたいと考えています。

――現在のサービス内容について教えてください。

無料セミナーや概要説明を入口として、その後は月1回、全6回から12回程度のワークショップ形式で指導を行っています。

また、顧問契約による継続的なコンサルティングも提供しています。セミナーやワークショップによる単発支援と、顧問契約による継続支援の両方を組み合わせながら、企業の発明力向上をサポートしています。

指導者育成と事業拡大で発明力を全国へ

――今後の展望について教えてください。

現在は私とバックオフィスを担当する理事の少人数で運営していますが、今後は発明力を指導できる講師を育成し、より多くの企業や個人へ支援を届けられる体制を構築したいと考えています。

また、将来的には株式会社化も視野に入れています。事業基盤を強化しながら、発明力教育をさらに広く普及させていきたいと思っています。

販路拡大の面では、東京商工会議所や工業所有権情報・研修館(INPIT)などの公的機関でセミナーを開催し、多くの方に発明力の重要性を知っていただく機会を増やしていきたいと考えています。

――今後目指していきたい社会についてお聞かせください。

日本が再び技術立国として発展していくためには、人への投資と発明を生み出すための教育が欠かせません。

一人ひとりが持つ創造力を発揮できる環境を整え、知識や知恵が正しく評価される社会を実現したいと考えています。そのために、発明力を高める教育と知財教育の普及に取り組み続けていきます。

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

カラオケに行ったり、散歩をしたり、外の景色を眺めたりして気分転換をしています。

知財の仕事は考える時間が長く、意識が内向きになりがちです。そのため、意識的に外の世界へ目を向けることで気持ちを切り替え、良い状態を保つようにしています。

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