子ども目線で暮らしを変える――本部明子氏が描く「ママと子どもが楽になる家づくり」
合同会社Kodomomesen 代表 本部 明子氏
子育て中の家庭では、片付けや家事、子どもとの関わり方など、日々さまざまな悩みが生まれます。合同会社Kodomomesenの代表を務める本部明子氏は、保育士、幼稚園教諭、小学校教諭、そしてモンテッソーリ教師としての経験を生かし、「ママと子どもの暮らしを楽にする」ことを軸に事業を展開しています。今回は、本部氏に事業への想いや今後の展望について伺いました。
目次
ママと子どもの暮らしを楽にする3つの事業
――現在の事業内容について教えてください。
私の仕事の軸は「ママと子どもの暮らしを楽にする家づくり」です。そのために大きく3つの事業を行っています。
1つ目は、お家を整える仕事です。整理収納や住まいの動線づくりを通じて、子どもが自立しやすく、お母さんが暮らしやすい環境づくりをお手伝いしています。
2つ目はモンテッソーリ教育です。27年前から学び続けており、子どもが自立するための関わり方や言葉掛けについて発信しながら、教育室も運営しています。
3つ目はモンテッソーリ家具です。子どもが自分でできる環境づくりに欠かせない家具を、自らデザインし、職人さんと一緒に形にしています。
すべてに共通しているのは、子どもが自立し、お母さんが少しでも楽になる暮らしを実現したいという想いです。
――住まいづくりではどのような視点を大切にされていますか。
私はインテリアの視点ではなく、教育の視点から住まいを見ています。
教育現場では「整理整頓」ではなく「環境整備」という言葉を使います。物があふれている環境では、子どもがやりたいことを見つけにくくなったり、探し物が増えたりします。だからこそ、子どもが過ごしやすい環境を整えることが大切だと考えています。
例えば、玄関から入ったときに手洗い場が見える位置にあるだけで、子どもは自然と手を洗おうとします。リビングに入ってから自分の荷物を置ける動線があれば、自分で準備を進められるようになります。
私は設計士ではありませんが、長年子どもたちと向き合ってきた経験をもとに、子ども目線のエッセンスを住まいに加える役割を担っています。
モンテッソーリ教育との出会いと家具へのこだわり
――モンテッソーリ教育に取り組むようになったきっかけを教えてください。
もともとは小学校の先生を目指していました。しかし、モンテッソーリ教育を実践する幼稚園を見学した際、子どもたちが驚くほど集中して活動している姿を見て衝撃を受けたんです。
私がそれまで抱いていた幼稚園のイメージとはまったく違いました。その光景に魅了され、「ここで働きたい」と思ったのが始まりです。
当時はまだモンテッソーリ教育を知る人も少なかったのですが、今では多くの方が関心を持つ教育になりました。私が開催している「モンテッソーリ教室」の講座も、募集開始後すぐに満席になることが多く、関心の高さを感じています。
――家具づくりにはどのようなこだわりがありますか。
私がデザインしている家具は、子どもの成長に寄り添うことを何より大切にしています。
一般的な棚には脚がありますが、小さな子どもにとってはその数センチの高さが大きな障害になることがあります。私の家具は床にぴったり接する構造にし、高さも低めに設計しています。ハイハイの時期のお子様でも、自分で玩具を選び、手に取ることができます。
赤ちゃんの頃はおもちゃ棚として使い、幼稚園では通園グッズ、小学校ではランドセルや教科書、高校生や大学生になれば参考書を収納する。本棚として使い続けているご家庭もたくさんあります。
将来、その子どもたちが親になったとき、また次の世代へ受け継いでほしい。そんな想いから兵庫県の工場で、職人が一つひとつ丁寧に製造しています。良質な木材にこだわり、長く使える家具を目指しています。
3人の子どもを育てるひとり親が選んだ起業という道
――経営者になられたきっかけを教えてください。
ひとり親として3人の子どもを育てながら、もともと整理収納の仕事やモンテッソーリ親子教室を個人事業として行い、保育園でも働いていました。子どもとの時間を大切にできる働き方を考える中で、このままでは続けることが難しいと感じ、法人化を決意しました。
そのとき、「会社を作ろう」と決めました。翌日には税理士さんへ連絡していましたね。
まずはやってみて、ダメならやめればいい。そんな気持ちで始めた会社でしたが、創業後は家具の販売をはじめ、公的機関や企業、さまざまな施設からご依頼をいただけるようになりました。今は子どもが家にいる時間を大切にしながら、自分らしい働き方を実現できています。
子ども専門だからこそできる支援
――現在もっとも売上が大きい事業は何でしょうか。
意外かもしれませんが、整理収納です。
私のところへ相談に来られる方は、「家が片付かない」「子育てが大変」「何から始めればいいかわからない」と悩んでいるお母さんたちです。
私は片付けを代わりにするのではなく、お母さん自身が片付けられるようになることを大切にしています。
訪問先では、赤ちゃんを私がお預かりし、お母さんに実際に手を動かしていただきます。情報を伝えるだけではなく、自分で考え、自分でできるようになってほしいからです。
時には片付けをせず、お話を伺うこともあります。
「今日は片付けではなく、話を聞いてほしい」
そう言われることも少なくありません。
子育て中のお母さんは、不安や悩みを一人で抱え込んでいることがあります。そんな時は、お母さんの気持ちを整理しながら寄り添うことも、私の大切な仕事です。
子ども目線の空間づくりを広げていきたい
――今後力を入れていきたい取り組みを教えてください。
今後は、お家やキッズスペースの監修にさらに力を入れていきたいと思っています。
実際に百貨店のキッズスペース監修では、モンテッソーリ教育の考え方を取り入れ、積み木を中心とした空間を作りました。すると子どもだけでなく、お父さんも夢中になって遊ぶ場所になったんです。
私は「子ども目線」で考えた空間づくりをもっと広げていきたいと思っています。
一方で課題もあります。整理収納、教育、家具、住まいづくりと取り組みが多いため、「何をしている人なのかわからない」と言われることがあります。
ただ、自分の中ではすべてがつながっています。子どもが自立し、お母さんが楽になる環境をつくる。そのために必要なことを形にしているだけなんです。
お母さんの笑顔が増える社会を目指して
――社会に対してどのような想いを持っていますか。
私は福祉や教育の現場で、多くの親子と関わってきました。
その中で感じるのは、お母さんが追い詰められてしまう背景には、暮らしの環境も大きく関係しているということです。
物があふれ、余裕がなくなり、イライラしてしまう。その結果、子どもに強く当たってしまうこともあります。
だからこそ、お家を整えたいんです。
虐待をゼロにすることは難しいかもしれません。でも減らすことはできると思っています。
お母さんが少し楽になり、子どもも安心して過ごせる。そんな環境が家庭だけでなく、地域にも広がっていけば、もっと子育てしやすい社会になるはずです。
そして起業を目指す方には、自分のサービスや商品を心から愛してほしいと思います。ただ売るのではなく、それを使ったお客様がどんな暮らしを送れるのかまで考えることが大切です。
私自身、家具を購入してくださった方と何年も連絡を取り続けています。その方の暮らしがどう変わったのかを知ることが、何より嬉しいんです。
これからも子どもと親の暮らしに寄り添いながら、「子ども目線」の環境づくりを広げていきたいと思っています。