人と機械の協働で地域の未来を切り拓く――株式会社カイタクシが描く新たな開拓の形

株式会社カイタクシ 代表取締役 丹野北斗氏

人口減少や人手不足が深刻化する中、多くの企業が事業継続や成長のための新たな打ち手を模索しています。特に北海道では人口減少の進行が著しく、地域経済を支える中堅・中小企業にとって人材確保は大きな課題となっています。そうした状況の中で、AIやロボットを活用した現場改善を支援しているのが株式会社カイタクシです。同社は単なる機器導入にとどまらず、設計から導入、運用までを一貫して支援し、人と機械が共に働く未来の実現を目指しています。今回は代表の丹野北斗氏に、起業の経緯や事業への想い、今後の展望について伺いました。

北海道から始まった挑戦と事業への着目

――会社を立ち上げた経緯を教えてください。

もともとは東京で勤務していましたが、花粉や気候の問題もあり、地元である北海道へ戻ろうと考えました。ただ、その時点では北海道で働く具体的なイメージがあったわけではありません。そこで「それなら自分で会社を作ろう」と考えたことが起業のきっかけです。

――現在の事業を始めた理由を教えてください。

北海道は人口減少が非常に速いペースで進んでおり、人手不足が深刻な課題になっています。一方で、AIやロボットによって代替できる業務は増え続けており、その導入コストも下がっています。

当社では、AI・ロボットを中心に取り扱っています。今後は人が担う仕事とロボットが担う仕事の境界が変化していくと考えており、その中で何を人が行い、何を機械が行うべきかを設計し、実際に現場へ実装していく役割が必要になると感じました。

しかし、その領域を包括的に担う企業は多くありません。商社やシステムインテグレーターは存在しますが、「なぜ導入するのか」「どこに導入するのか」「資金面をどう考えるのか」といった上流部分まで支援できるプレイヤーは限られています。そこに大きな可能性を感じ、この事業に取り組んでいます。

北海道の開拓精神を受け継ぐ理念

――会社の理念やビジョンについて教えてください。

社名の「カイタクシ」は、北海道の歴史に由来しています。

明治時代の北海道には、地域を切り拓いていった「開拓使」という組織がありました。官民連携によるイノベーションを推進し、先端技術を導入しながら新しい産業やインフラを生み出していった存在です。この精神に強く影響を受けています。

また、北海道から大阪まで交易を行っていた「北前船」の存在にも着目しています。彼らは自らリスクを取りながら商品開発や販路開拓、資金調達まで行っていました。その挑戦する姿勢にも共感しています。

現在の北海道や日本は人口減少という課題に直面していますが、だからこそ改めて「開拓」が必要な時代だと考えています。当社では「できないをできるに変える」を掲げ、人と機械が協働しながら価値を生み出す「人機協働(じんききょうどう)」をスローガンとして活動しています。

顧客価値を軸にした経営判断

――経営判断をする際に大切にしている価値観は何でしょうか。

判断基準は非常にシンプルで、それが顧客への提供価値と自社サービスの価値向上につながるかどうかです。

地方の中堅・中小企業では、最新のロボットやAIの情報を収集したくても、時間的な制約から展示会やセミナーに足を運ぶことが難しいケースが少なくありません。実際にロボット関連の大規模展示会に参加した際も、北海道からの来場者は非常に限られていました。

そうした現実を見て、お客様が情報を取りに行けないのであれば、こちらから情報を届けるべきだと考えるようになりました。単に情報を集めるだけではなく、お客様に必要な形へ編集し、価値として提供することを重視しています。

また、この業界では売りやすい商品や利益率の高い商品を提案することもできますが、当社ではお客様の現場に本当に適しているか、長期的に事業として成立するかを重視しています。誠実な情報提供を続けることが、最も大切な考え方です。

自立した人材が力を発揮できる組織へ

――社内コミュニケーションで大切にしていることを教えてください。

会社としての判断基準を共有することです。その基準が揃っていれば、細かなルールで縛る必要はないと考えています。

判断の軸さえ共有できていれば、それぞれが自主的に考え、真摯に取り組むことができます。そのため、細かな管理や統制よりも価値観の共有を重視しています。

――どのような人と一緒に働きたいと考えていますか。

大切なのは、自分自身が情熱を注げるものを持ち、その方向性が会社のミッションと重なることです。自立して行動できる方、自分のやりたいことを会社という場を通じて実現したいと考える方と一緒に働きたいと思っています。

全国へ広がるAI・ロボット活用の未来

――今後の展望について教えてください。

地方銀行や信用金庫、信用組合、機械工具商社、農機メーカーなど、多様な顧客設定を持つ企業と連携しながらAI・ロボットの活用を広げていきたいと考えています。

人手不足という課題を抱えながらも、何から始めれば良いか分からない企業は数多く存在します。そうした企業に対し、これまで蓄積してきた知見や実績を活かしながら支援し、日本全国へ普及を進めていきたいと思っています。

――今後の課題と、その解決に向けた取り組みについて教えてください。

当社の強みは現場を実際に見て調査し、最適なソリューションを提案できることです。しかし現状では、その多くを私自身が担っているため、対応できる件数に限界があります。

そのため、現在は業務の標準化を進めています。現場でのヒアリングから提案、資金調達を含めたプロセスまでを手順書やマニュアルとして整理し、再現性のある仕組みにしていく考えです。

さらに、画像や動画、遠隔モニタリングなどの技術を活用しながら、北海道を拠点に全国の現場へ対応できる体制づくりも進めています。品質を維持しながら支援の範囲を広げていくことが今後の大きなテーマです。

限られた時間を何に使うのか

――影響を受けた出来事について教えてください。

家族の病気や自身の体調不良を経験したことが大きな転機になりました。

そうした出来事を通じて、自分や家族の時間には限りがあることを強く意識するようになりました。その結果、「今取り組んでいる仕事や時間の使い方は、本当に命を燃やすに値するものなのか」を常に考えるようになっています。

――休日のリフレッシュ方法を教えてください。

起業してからは、仕事そのものが最も楽しい時間になっています。もともと旅行が好きで、異なる地域や文化に触れることが好きでしたが、現在の仕事では全国各地を訪問し、多様な現場や課題に触れることができます。

現場ごとに異なる課題に向き合い、解決策を考えること自体が大きな楽しみです。

また、温泉やサウナも好きなので、出張先で利用することがあります。各地のご当地グルメを楽しむことも含め、仕事と自身の楽しみが自然に結びついている感覚があります。

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