思い出を未来へつなぐ――記憶と物語を宿すミニチュアドールハウスのものづくり

ミニチュアドールハウスRUNA 代表 谷本 朋子氏

ミニチュアドールハウスRUNAは、実家や店舗など、思い出が詰まった建物をミニチュアとして再現し、その場所に刻まれた記憶や物語を未来へつなぐ作品づくりを手がけています。お客様一人ひとりの想いに寄り添い、丁寧なヒアリングを重ねながら制作する姿勢が大きな特徴です。本記事では、代表の谷本朋子氏に、事業への想いや創業のきっかけ、作品づくりで大切にしていること、そして今後の展望について伺いました。

建物に刻まれた物語をかたちに

――現在の事業内容と特徴について教えてください。

ミニチュアドールハウス作家として活動しています。メインの事業としては、実家や店舗など、事情があって手放さなければならなくなった建物を、写真とヒアリングをもとに再現した「思い出を残すミニチュア」を制作しています。

ただ建物を精密に再現するのではなく、お客様から思い出やエピソードを丁寧に伺い、写真には写っていない小物や空間の雰囲気まで作品に落とし込んでいるのが特徴です。

近年は3Dプリンターなどを活用して模型を制作するケースも増えていますが、私はアーティストとして、お客様の記憶やストーリーを作品に込めることを何より大切にしています。そこにあった暮らしや人の温もりまで感じられる作品を届けられることが、私たちならではの強みだと思っています。

――どのような理念や想いを持って活動されていますか。

私たちが目指しているのは、単にミニチュアを作ることではありません。建物には、家族の歴史や人生の歩み、そこで過ごした時間が詰まっています。その大切な思い出を形として未来へ残し、お客様が前を向いて新たな一歩を踏み出すきっかけになればと思っています。

古い建物を壊して建て替えることが当たり前になりつつある今だからこそ、そこに刻まれた歴史や思い出をどう受け継いでいくかを考える機会にもなれば嬉しいですね。ミニチュアという形で思い出を残せることを、一人でも多くの方に知っていただきたいと思っています。

悲しみを乗り越え、「好き」が使命へ変わった日

――この仕事を始めたきっかけを教えてください。

子どもの頃から小さくてかわいいものが大好きで、人形遊びでは家具や小物を並べることに夢中になっていました。子育て中にミニチュア制作の本と出会い、趣味として作り始めたのが、この世界へ入るきっかけです。

趣味として制作を続けるなか、娘を交通事故で亡くし、人生は大きく変わりました。深い悲しみのなかで過ごす日々が続きましたが、「このままではいけない」「娘もこんな姿は望んでいない」と自分に言い聞かせ、自分らしく笑っていられる場所を考えるようになりました。その時に思い浮かんだのが、子どもの頃から大好きだったミニチュアです。「これを仕事にしよう」と決意し、プロを目指して技術を学び始めました。

技術を学ぶなかで、中小企業の経営者との交流会で「実家や店舗をミニチュアで残す仕事を事業の柱にしてはどうか」と助言をいただいたことをきっかけに、現在の事業へ本格的に取り組むようになりました。

――仕事をする上で大切にしている価値観を教えてください。

何より大切にしているのは、お客様の想いやストーリーです。制作に入る前にはじっくりと時間をかけてお話を伺い、その場所でどんな時間を過ごし、どのような思い出を育んできたのかを丁寧にお聞きしています。

お話を伺う途中で涙を流される方も少なくありません。作品は私たちだけで作るものではなく、お客様と一緒に作り上げていくものだと思っています。想いを共有しながら制作を進めることで、完成した作品だけでなく、その過程もお客様にとって大切な時間になれば嬉しいですね。

夫婦だからこそ生まれる、想いに寄り添うものづくり

――現在の制作体制について教えてください。

現在は夫婦で制作を行っています。私は作品づくりやお客様へのヒアリングを担当し、長年メーカーでエンジニアとして働いてきた夫は、3Dプリンターやレーザー加工機を活用しながら、制作期間の短縮や品質向上を担っています。

私はアーティストとしての感性を、夫はエンジニアとして培ってきた技術を活かし、それぞれの強みを発揮できる役割分担が今の制作スタイルです。

――お客様との関係づくりで意識していることはありますか。

作品づくりでは、まず私たちのコンセプトや考え方を丁寧にお伝えし、その想いに共感してくださる方と一緒に作品を作り上げていくことを大切にしています。

制作が始まってからも、ヒアリングや打ち合わせを重ね、必要に応じて追加の写真や資料をご提供いただくこともあります。そうしたやり取りを積み重ねることで、お客様の想いに寄り添った作品へと仕上がっていきます。「お願いしてよかった」とのお言葉をいただけることが、私たちにとって何よりの励みになっています。

技術と想いを次の世代へ――未来につなぐ挑戦

――今後挑戦したいことを教えてください。

私たち夫婦も年齢を重ねてきたので、この仕事を受け継いでくれる人を育てていきたいと思っています。現在もプロを目指して学びに来てくださっている方がおり、写真から情報を読み取る力や空間認識力など、「思い出を残すミニチュア」を制作するために必要な技術や考え方を伝えています。

もう1つ大切にしているのが、アーティストとして感性を磨き続けることです。世界中の美しい建物や風景に触れ、その経験を作品づくりに活かしていきたいですね。この仕事を通じてしっかりと収入を得ながら、夫婦で世界を旅し、多くの場所に足を運ぶことも目標の1つです。

――これから目指していきたい姿を教えてください。

この仕事を続けながら、「思い出を残す」という文化そのものをもっと広げていきたいです。事情があって建物を手放さなければならない方に、ミニチュアという形で思い出を残す方法があることを知っていただき、その選択肢を届けていきたいですね。

また、受け継いでいきたいのは技術だけではありません。お客様一人ひとりの想いに寄り添いながら作品を作り上げる姿勢も含めて、次の世代へつないでいくことが私たちの使命だと思っています。

感性を磨き続ける、その先にある一つひとつの作品

――感性を磨くために大切にしていることを教えてください。

アーティストとして作品を作り続けるためには、感性を磨き続けることが欠かせません。建物や街並み、美しい景色など、さまざまなものに触れながら新しい刺激を受け、その経験や感動を作品づくりに活かしていきたいと考えています。

また、現在の制作スタイルは、夫婦で何度も話し合いを重ね、お互いの考え方を理解し合うなかで築いてきました。これからも感性と技術の両方を磨きながら、一つひとつの作品に真摯に向き合い、より良い作品づくりを続けていきたいです。

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