ご縁と流れを力に――「食べられる麦茶」で広げる新たな可能性
合同会社Style Be Office 代表取締役 塩谷 直子氏
自然栽培の佐賀県産二条大麦を使い、「飲む」だけではなく「食べる」という新しい楽しみ方を形にした「aru食べられる麦茶」。その始まりは、綿密な事業計画ではなく、一人の農家さんとの偶然の出会いでした。本業である音楽の仕事を続けながら、未知だった焙煎や商品開発に向き合い、人との縁に導かれるように事業を続けています。
本記事では代表の塩谷直子氏にお話を伺い、商品が必要とされる場所へ自然に届いていくことを信じながら歩んできたこれまでと、これからについて伺いました。
飲んで食べる、麦茶の新しいかたち
――現在、どのような商品を展開していますか。
自然栽培の麦を使った「aru食べられる麦茶」を中心に、ティーバッグや大麦粉などを展開しています。最初は丸麦を焙煎し、お湯で沸かして飲む昔ながらの形から始まりましたが、焙煎する際に苦味を出ないように浅煎りに焙煎するとそのまま食べてもとてもおいしいことが分かり、「飲めて、食べられる」という形になりました。
その後、より手軽に使えるティーバッグをつくったり、麦を粉にした商品をつくったりと、少しずつ広がっています。
――商品づくりで大切にしていることは何ですか。
一番は味です。麦茶の色を出すために焙煎を深くしすぎると苦くなってしまうため、香ばしく、食べてもおいしく、沸かしてもおいしいところで焙煎止めてもらう必要がありました。
最初の焙煎では、工場に何度も通い、自分が求める色や味を伝えました。通常は最後までしっかり乾燥させるところを途中で止めるため、工場の方にとっても初めての方法だったそうです。それでも水分を残さず仕上げることができ、形にすることができました。
偶然の出会いから始まった挑戦
――経営者になられた経緯を教えてください。
もともとは楽器演奏の仕事をしていて、今も続けています。麦茶とはまったく違う音楽の世界にいたので、農家さんから突然「麦茶を作らないか」と言われた時は、自分の仕事ではないと思いました。
ただ、自分の目の前に来たものを「合図」と捉える考え方を知っていました。そのことを教えてくださった先生に相談すると、「向こうからきたものは合図。それをどう捉えるかはあなたが決めればいい。それをやった人生と、やらない人生のどちらも体験です。」と言われました。
――それが、事業を始めるきっかけになったのですね。
そうです。このことに手をつけなければ何もやらなかった体験が残るだけで、もし手をつけたら失敗するかもしれないし、嫌な経験が増えるかもしれない、おいしいものができるかもしれない。結果「やる」方を選びました。
すると農家さんから麦を1トンいただくことになり、そこから待ったなしで焙煎所が決まり、商品づくりが始まりました。マーケティングや販路を先に考えたわけではなく、商品をつくった後に「どこで売ればいいのだろう」と考えるような、本当に逆の順番でした。
ご縁がつなぐ、商品の広がり
――現在は、どのような体制で事業を運営していますか。
今は一人で運営しています。発注や商品のことも含めて、自分一人で賄える範囲で続けています。
SNSやホームページを頻繁に更新したり、積極的に拡散したりすることは得意ではありません。そのため、販売はオンラインを使いながらも、実際には口コミや人づてほで広がってきた部分が大きいです。
――印象に残っている広がり方はありますか。
友人であるはなわさんのコンサートで、来場者へティーバッグを配ったことがあります。佐賀と新宿の会場を合わせて1500袋を自分で用意し、お客様にプレゼントしました。お祝いでしたので直接売上になるわけではありませんでしたが、その後、東京の有明にありますマタニティフード協会様からご連絡をいただき、認定商品につながるタイミングになりました。
ほかにも、大麦粉を料理や菓子づくりに使う店舗様からご注文をいただいたり、博多の老舗『チョコレートショップ』様で、aruを練り込んで宝石に見立てた美しいチョコレートを作っていただいたり、企業様の催事のお土産としてティーバッグを採用していただいたりしました。人から人へ伝わる中で新しい広がり方が生まれてきた感覚があります。
あり方を大切に、流れを信じる
――「aru」という名前には、どのような思いがありますか。
「あり方」は英語ではBEINGのBEにつながります。そこから社名を考え、「在る」という言葉をそのままローマ字として商品名にしました。自分のあり方をそのまま託したような感覚です。
――仕事を続けるうえで、大切にしている考えはありますか。
aruは必要な方や場所へ必ず飛んでいくと最初に意図を立てています。これまでにも、うまくいかずやめようと思った時にお話を持ってきてくださる方が現れたり、思いがけない連絡が入りご縁が結ばれたり、アイデアがふと湧いてきたりすることが何度もありました。
逆に、自分から「広げよう」と頭で動いた時ほど、思ったように進まない経験もしています。だから、自分が焦りや不安から無理に何かを動かすのではなく、目の前に来たものに対して、都度大きな視点に立ち直し「どうしたいか、どうありたいか」心を見ながら進むことを大切にしています。
必要とされる場所へ、歩みを進める
――今後は、どのように事業を続けていきたいですか。
一貫しているのは、「必要なところには行く」と信じていることです。既存の方法としてターゲットを決めて売り込みをしたり、有料広告を試したりしたことももちろんありますが、心は余計に揺れるばかりでした。
それよりも自然な私自身でいる場所に戻ったタイミングに連絡をいただいた時の方が、結果として商品が必要とされる場所につながってきました。つまりはどこまでいっても私の在り方が現象化しているんだと。
一方で、Instagramなどを管理してくれる人がいて共に商品や活動が目に見える状態にできればいいとも感じています。自分自身も、口で商品について伝えていくことはやめないようにしたいです。
――これから挑戦したいことはありますか。
「aru食べられる麦茶」というもの自体がまだ十分に知られていないので、この商品を必要としている人に届く道があるなら、その方法を知りたいと思っています。
また、災害時に水しか口にできなかった人の話を聞き、丸麦が非常時に役立つ可能性について考えるきっかけもありました。これからも、目の前に現れる出会いや出来事を受け取りながら、すでにある既成概念や枠に捉われず、商品が新たに届けられる場所を国内外問わず、広い視点で見つけていきたいです。