「これでいい」から「これがいい」へ――LGBTQの選択肢を広げ、生活のインフラをつくる

合同会社rare. 代表 遠藤 せな氏

合同会社rare.は、LGBTQ+を取り巻く生活上の困りごとに向き合い、マーケティング、商品開発、イベントの企画運営などを展開しています。代表の遠藤せな氏自身もトランスジェンダーの当事者として、必要な選択肢が届きにくかった経験を事業の原点としてきました。「これでいい」と諦めるのではなく、「これがいい」と思える選択肢を増やしたい。その思いの背景や事業の特徴、経営で大切にしている価値観、今後の挑戦について伺いました。

自身の経験から生まれた、選択肢を届ける事業

――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。

2020年に個人事業主として独立しました。それ以前はスポーツトレーナーとして会社員をしていましたが、父が経営していた会社の事業を継ぐことも考え、一度その会社に入りました。当時は経営への興味関心もあり、経営について学べるのではないかと考えていたんです。

ただ、現実は違うことばかりで、ここでは話せないことも多々ありますが、結果父とはウマが合わず、約3カ月で事業承継は辞退しました。「こんな思いをするくらいなら、自分でやろう」と思ったことが独立のきっかけです。最初はスポーツトレーナーの業務委託や複数のアルバイトを掛け持ちするところから始めました。

――そこから現在のLGBTQ+に関する事業へ、どのようにつながったのでしょうか。

私自身がトランスジェンダーの当事者で、大人になってから、日常生活の中で困ることが増えていったんです。

困りごとを解決したくても、ネットで調べても必要な情報が出てこない。欲しい商品や使いたいサービスもなかなか見つからない。「これだけ情報がある時代なのに、なぜセクシュアリティが理由になると選択肢が見つからないのだろう」と感じました。そこから、LGBTQ+の方も利用できる商品やサービスを集約したポータルサイト「CHOICE.(チョイス) 」につながる取り組みを始めました。

“面白い・楽しい・かっこいい”から社会課題に触れてもらう

――現在の事業内容と、その特徴を教えてください。

一つはポータルサイト事業です。「CHOICE.(チョイス)」では、100以上の掲載サービスを24カテゴリーに分け、累計利用者は3万人を超えています。市販では見つけにくかった商品や、対応してくれる店舗、専門家などを集め、LGBTQの生活上の困りごとを解決する選択肢を届けています。

そこから派生した「GOOD CHOICE MARKET. 」という体験型イベントも行っています。オンラインでは靴などを実際に試すことができないため、会場で体験や試着、購入までできる場を設けています。

そのほか、力を入れているのはLGBTQのマーケティング事業や、「Normless.(ノームレス)」というコミュニティも展開しています。「これでいい」と諦めていた物事を「これがいい」に変え、ないものは自分たちでつくっていこうという考え方のもと、自分たちが望む暮らしや仕事、商品を仲間と形にしていく場です。

――事業を通じて大切にしている考え方は何でしょうか。

パーパスとして掲げているのが、「面白い、楽しい、かっこいいを通じて、誰もが『これがいい』と思える生活を届ける」ということです。

社会的なテーマは、どうしても重い、堅苦しいという印象を持たれやすいと思っています。ただ、本当に課題を解決していくには当事者だけではなく、さまざまな人の協力が必要です。だからこそ、最初からLGBTQ+やジェンダー問題を強く前面に出すのではなく、「面白そう」「楽しそう」「これなら関わりたい」と感じてもらえる入口をつくりたい。蓋を開けてみたら、実はジェンダーの課題解決につながっていた、という見せ方を大切にしています。

正しさだけでは人は動かない。心が動く仕事をつくる

――経営判断では、何を大切にしていますか。

正しさよりも、「楽しいか」「面白いか」「やりたいか」を大切にしています。正論を述べること自体は簡単ですが、それだけで共感してもらえるとは限りません。心が動かなければ、体も動かないと思うんです。

「楽しそうだからやってみよう」「面白いからいいよね」という感覚が仲間にも伝わって、今につながっていると思っています。それが誰かのためになり、結果として仕事や収益にもなっていく。やらされている仕事ではなく、共感して心が動くから行動する、という状態を大事にしています。

――一緒に働くメンバーとのコミュニケーションで意識していることはありますか。

「無理なら無理と言ってほしい」と伝えています。やりたくないことを無理にやっても続きません。やると決めたなら責任を持ってやる。その代わり、本人がやりたいことや、楽しそうだから挑戦してみたいと思えることに取り組んでもらいたいです。

私自身、以前は体育会系の環境に長くいた影響もあり、勝ち負けを意識しすぎて相手に緊張感を与えてしまうことがありました。リーダーシップの取り方を間違え、組織がうまくいかなかった経験もあります。その反省から、今は自分の弱さも見せて、「助けてほしい」と言うようにしています。完璧に見せるのではなく、信じるから信じてほしいという関係をつくることを意識しています。

LGBTQ+の「生活のインフラ」を世界へ

――今後、実現したいことを教えてください。

直近では、LGBTQ+の方にとっての「生活のインフラ」を確立したいと考えています。私たちが言う生活のインフラとは、電気やガスということではありません。保険や医療、不動産をはじめ、生活の中で困ることすべてを含めて捉えています。

まずは、自身も当事者であるトランスジェンダーの困りごとを解決する仕組みをつくり、その事業だけで成り立つ形を日本でつくりたい。そして、将来的には日本だけでなく世界にも展開できる事業にしたいと考えています。そのために資金調達や組織体制の強化、現在検証しているLGBTQ+向けマーケティングの仕組みを活用したデータ収集などにも取り組んでいく予定です。

――これから新たに挑戦したいことはありますか。

LGBTQ+の起業家を増やすためのプロジェクトにも取り組んでいきます。本当は別の仕事をしたいのに、選択肢がないことで諦めているように見える人も少なくありません。だからこそ、雇用されることだけに頼らず、自分で生活をつくっていける選択肢も届けたいと思っています。

学習コンテンツや起業時の資金調達のサポートなどを、さまざまな企業や協力者と連携しながら形にしていく予定です。「ないものは自分たちでつくったらいい」。その精神をプロジェクトを通じて伝え、「これでいい」ではなく、一人ひとりが「これがいい」と思える仕事や暮らしを選べる環境を増やしていきたいです。

Contact usお問い合わせ

    お問い合わせ内容
    氏名
    会社名

    ※会社・組織に属さない方は「個人」とお書きくだい

    役職

    ※会社・組織に属さない方は「一般」をお選びください

    メールアドレス
    電話番号
    どこでお知りになりましたか?
    お問い合わせ内容

    プライバシーポリシーに同意して内容を送信してください。