「人のためになる仕事を」――ウィンウィンを貫く株式会社電車道の挑戦
株式会社電車道 代表取締役 熊谷 太助氏
テレビ業界で制作畑を歩んできた経験を生かし、人の心に残る映像制作に取り組んできた株式会社電車道。系列会社とともに展開する終活支援には、熊谷太助氏ならではの「AIにはできない」「人間にしかできない仕事をしたい」という思いが込められています。仕事を選ぶ基準や人との関係づくり、これから目指す事業の姿について伺いました。
無理をせず、本当に必要とされる仕事を
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
現在は、TVやSNSの番組企画・制作、タレントマネジメントや広告代理業、終活のサポートをしています。特に現在は終活のサポートに力を入れています。
弊社は、仕事を無理に取りに行かなくてもいい状態を既に構築しています。財政状態が良くないと、本当はお客様のためにならないと思いながらも、お金のために仕事を取ってしまうことがありますよね。そういう仕事はやらないようにしています。
だからこそ、本当の意味でお客様の立場に立てるようになりました。自分の都合だけではなく、相手にとってどうなのかを考えて仕事を選べることが、当社の強みだと思っています。
――会社として大切にしている考え方はありますか。
「ガツガツやらない」ということですね。今のテレビ業界は非常に厳しい状況で、競争も激しくなっています。無理をしないと仕事が取れない、利益率も過去と比べて極めて良くないという状況です。
一方、SNSなどの映像制作ではAIの活用が進み、編集やテロップ、ナレーションなどにもAIが入ってきています。AIにはAIの良さがありますが、私は人間にしかできない仕事に目を向けています。その一つが、現在力を入れている終活支援です。
――終活支援では、具体的にどのような映像を制作しているのでしょうか。
大きく三つあります。一つ目が「遺言VTR」です。遺言を紙に残すだけではなく、なぜそのような内容にしたのかという本人の気持ちを言葉で残します。そうすることで、残された人が「なぜこう書いたのか」を理解でき、無駄な争いを防ぐことにもつながります。
二つ目が「葬儀VTR」です。生前に、葬儀に参列された方々への感謝や、残された家族への思いなどを自分自身の言葉で撮影しておきます。
そして三つ目が「自伝VTR」です。例えば会社創業者の人生の転機や創業に至る経緯、会社への思いを映像として残し、残された社員たちに伝えるといった使い方ができます。ドラマ仕立て、ドキュメンタリータッチ、対談形式、バラエティ風など、つくり方はご要望に沿います。
「一生現役で制作を続けたい」から始まった経営
――経営者になられた経緯を教えてください。
私はもともとフジテレビにいて、制作畑を歩んできました。その中で感じていたのが、ある年齢になると現場を離れ、管理側に回らなければならないということでした。人や物の管理に携わるようになるのではなく、一生現役で番組などの制作を続けたいという思いがずっとありました。
そこで資産運用を始めました。当時はテレビ業界の景気も良く、運用に回すお金を得ることができたので、早い時期から株式投資をしてきました。そして50歳になった頃には、働かなくてもいい状態をつくることができました。お金のために無理をして仕事をする必要がなくなったことが、今の仕事のスタンスにもつながっています。
――仕事をする上で大切にしている価値観は何でしょうか。
「ウィンウィンだな」と思える仕事しかやらないことです。こちらのメリットのほうが多い仕事は、希望していません。
どうしてもお金が絡んでくると、目先のお金が欲しくなって、相手より自分たちが少し得をする仕事を選んでしまうと思うんです。でも、弊社は会社が維持できればそれでいい。だからこそ、やっていて「気持ちのいい仕事」をしたいと思っています。
特に「この人のためになっているな」と思えないと、仕事への意欲が湧いてきません。他人に損をさせて仕事を終えたら、この会社は終わりだと思っています。「ウィンウィンではない仕事をしないこと」は、これからも譲れない部分です。
プロを集め、一つの作品をつくる
――組織運営で意識していることを教えてください。
現在はアシスタントが一人いて、秘書のような役割を担ってもらっています。基本的には、仕事ごとに必要な人を集める「テレビスタイル」のようなやり方です。
テレビでは、ドラマならこの人、ドキュメンタリーならこの人、バラエティならこの人というように、外部のスペシャリストが中心となって制作します。当社も同じように、仕事が見えてきたら「この仕事ならこのメンバー」という形で一気に人を集め、スケジュールやギャランティを決めて進めています。
意識しているのは「信頼される」ことです。普段から良好なコミュニケーションと適度な距離感で、プロたちと接するようにしています。そして仕事を通じ、局面局面を一緒に乗り越えることで、強固な信頼関係を築いていくことを意識しています。
皆さんプロ中のプロで、他にもたくさんの誘いがあります。その中で「自分と一緒に仕事をしたい」と思ってもらうには、相手のことを知り、相手が「自分となら困難でも一緒に乗り越えたい」と思ってもらうことが大切だと考えています。
人にしかできない終活支援を、もっと身近に
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
今は終活の分野を、もう少し広げていきたいと考えています。ここまで需要があることが分かってきたので、もっと世の中に認知してもらい、前向きに取り組んでいただけるような事業にしていきたいですね。
終活支援については、系列会社と連携して取り組んでいます。系列会社の強みは遺言書の書き方やエンディングノートの書き方、終活に関する法的なサポートなども行えることです。映像だけではなく、終活そのものを支援できる形をつくっています。
――事業を広げるうえで、現在感じている課題はありますか。
「広げる」という意味では、宣伝が難しいことです。終活に関する映像なので、「こういうVTRをつくりました」と実績を簡単に発表することができません。制作後も個人情報がありますから、実績を紹介しづらいんです。
しかし基本的には「闇雲に事業を広げたい」という考えはなく、「必要だと心の底からお考えになる方のサポートをしたい」という思いですが、「遺言VTR」「葬儀VTR」「自伝VTR」のサンプル動画を制作してありますので、そうした映像を見てもらいながら、この仕事を知ってもらえればと考えています。
人とのつながりを楽しみ、仕事を続ける
――最後に、リフレッシュ方法を教えてください。
特に休日を決めているわけではありませんが、旅行には行きます。予定がポンと空いたら、FIREしている友人を誘ってふらっと海外に出かけることもあります。
それ以上に多いのは、周りの人の趣味に付き合うことですね。皆さんそれぞれ趣味を持っておられるので、それに付き合って遊びに行くことが、自分にとっても良いリフレッシュになっています。ウィンウィンといったところです。
これからも「ウィンウィンな仕事」を意識し、人間にしか創れないものを創り出して行きます。