親子で生んだ商品を世界へ――日本の素材と想いを届ける挑戦
株式会社CHANT 代表取締役 谷岡 亜希子氏
息子のために自宅でつくっていたシャンプーバーをきっかけに事業を始め、現在3期目を迎えるCHANT。髪・顔・体を一つで洗える全身シャンプーバーを主軸に、日本の未利用資源を活用した商品づくりにも取り組んでいます。代表の谷岡氏がブランドの中心に据えるのは、人を思いやる気持ちです。親子で始めた小さな商いから会社へと発展し、現在は仲間とともに事業を育てながら、海外への展開も見据えています。本記事では、事業が生まれた背景やものづくりへの思い、組織づくり、これからの挑戦について伺いました。
思いやりから生まれるものづくり
――現在の事業について教えてください。
主力商品は、私が独自に開発した全身シャンプーバーです。一般的なシャンプーバーは髪の毛用のものが多いですが、私たちの商品は髪だけでなく、顔や体まで洗えて、リンスも必要ないように調整しています。一つで約2カ月使える固形のシャンプーで、特許も出しています。
商品開発では、日本にある未利用資源にも目を向けています。例えば、椿油を搾った後の種や、お酒を搾った後の酒粕などです。活用されずに廃棄されているものでも、素材そのものには魅力があります。固形商品であるからこそ結果的に地球環境にも優しい商品なのですが、使っていくことで地球環境に良いワンアクションにもなる、そう思えるように商品をつくっています。
――商品づくりで大切にしている考えはありますか。
私たちの商品は、私自身の生活の中から生まれており、40、50代の女性に向けて作られています。育児や介護、仕事などで忙しく過ごしていると、どうしても自分のことが後回しになってしまいます。だからこそ、生活がシンプルに楽になることで少し余白が生まれ、その余白から家族を思いやれるような、良い循環につながる商品をつくりたいと考えています。
また、日本の良いものを生かしているからこそ、日本の美学、特に「思いやり」をブランドの中心に置いています。必要な人に必要なものを届け、その先に良い循環が生まれる方向になっているか。それが経営の判断軸です。
親子の挑戦から生まれた事業
――シャンプーバーを商品化したきっかけを教えてください。
もともとは、アトピーだった息子のためにつくったものでした。息子が小さい頃から何年も家で使っていて、最初は商品にしようとは全く考えていませんでした。
その後、教育の一環として、息子と一緒に小さな商いを経験してみようと考えました。いろいろなものを売ってみましたが、ほとんどはなかなか売れませんでした。一方で、息子の様子を見た方から「そのシャンプーバーが欲しい」と言っていただくことが増えていったんです。それなら商品化してみようと販売を始めたことが、現在の事業につながっています。
パッケージも私と息子で一緒に考え、Canvaを使ってつくりました。展示会などでは息子も大人が働く姿を見ることができ、本人にとってもインターンシップのような経験になっていると感じています。
――経営については、どのように学んできたのでしょうか。
私はもともとずっとサラリーマンでしたので、商売のやり方を知っていたわけではありません。経営を学校などで学んだ経験もなく、事業を進める中で出会った先輩経営者の方々からいただいたアドバイスを少しずつ取り入れながら、ここまで進んできました。
ものづくりについては自分が好きで得意な分野ですが、経営はそれだけでは成り立ちません。周囲から教えていただきながら、一つずつ進めています。
想いを共有する仲間とともに
――現在はどのような体制で会社を運営していますか。
業務委託の方が多く、コアメンバーは4人です。メンバーは、もともとの知り合いやママ友、学生時代の友人、長く商品を使ってくださったお客様など、オフラインでつながりのあった方が中心です。それぞれ担当を決めていて、Instagramや取引先のCRM、オンラインショップ全体の運営などを分担しています。BtoBのつながりについては、最初のきっかけを私がつくることが多く、その後の実務はそれぞれの担当に任せています。子育てなどで外に出にくくても働きたいという方もいるので、それぞれができる範囲で取り組める仕事をお願いしています。
――メンバーとのコミュニケーションで意識していることはありますか。
もともと関係性がある方が多いので、意思疎通もしやすく、楽しく仕事ができています。意見も日々上がってきますし、スタッフミーティングを開くなど、実際に会う機会もつくっています。
今後、ポップアップなどで人が必要になった場合も、できれば商品を好きでいてくださる方にお願いしたいと思っています。同じ熱量で「もっと良くしていこう」と考えられることを大切にしています。
日本の素材と想いを世界へ
――仕事を離れた時間は、どのようにリフレッシュしていますか。
絵を描くことが趣味です。私は自分自身を、割とクリエイティブで職人的な性格だと思っています。もともとものづくりが好きなので、趣味の時間にも絵を描いたり、何かをつくったりしています。商品づくりも趣味の一環のような感覚があります。ものをつくったり企画したりすること自体がとても楽しいんです。「ないのであれば自分でつくろう」と考える性格なので、それが今の商品開発にもつながっていると思います。子育て中でもありますので、仕事とのバランスも取りながら続けています。
――これから挑戦していきたいことを教えてください。
現在取り組んでいるのが海外輸出の準備です。支援を受けながら進めていて、インタビュー時点では来年までにアメリカへの輸出を実現したいと考えています。
日本のものづくりは、とても丁寧で、ぬくもりがあります。私たちも椿や酒粕など、日本ならではの素材を使っています。そうした日本の良いものを海外の方にも知っていただき、世界へ届けていきたいです。
一方で、輸出には商標や化粧品の規制、関税、輸送費、販売価格の設定など、クリアしなければならないことがたくさんあります。アメリカで商標を取得する際には、従来の名称がすでに使われていたため、ブランド名を「CHANTIQUE」に変更し、現地でも商標を登録しました。現在も指導を受けながら、一つずつ準備を進めています。
もう一つの大きな課題は、認知を広げることです。良い商品はあるので、まずは知っていただく。そのために広告やSNSにも取り組んでいます。ただ、スモールビジネスだからこそ、何より大切なのはお客様との信頼関係だと思っています。いただいた声にはできるだけ早く応えながら、ものづくりは誠実に、お客様の声をきちんと聞き、経営は柔軟に続けていきたいです。
CHANTIQUE 公式ストア:https://shop.chant.tokyo/