英語を「使える武器」に――Gateway Educationが育む、世界のビジネスで渡り合う力
NPO法人Gateway Education 代表 長谷川 桂子氏
NPO法人Gateway Educationは、英語を単に「話せる」ようにするのではなく、世界で活躍するためのコミュニケーション力や人間力を育む教育に取り組んでいます。特徴的なのが、英語だけで生活する合宿形式の短期集中研修です。代表の長谷川桂子氏自身が海外のアートビジネスの世界で感じた課題を原点に、利用者の成長を第一に考えた教育を追求してきました。現在はオンラインでの高校生向け指導にも力を入れながら、新たな教育の形を模索しています。今回は、事業に込めた思いや経営における信念、今後の展望について伺いました。
日本にいながら「海外と同じ環境」をつくる
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
最初は「Gateway English」という名で始め、現在はGateway Educationとして活動しています。目的はもともと、英会話そのものを教えることではなく、グローバル社会で活躍できる日本人材を育成することでした。そのために英語が必要だと考え、合宿研修を中心に取り組んできました。
合宿は10日間から2週間ほどの期間を設定し、原則的に英語しか使えない環境で過ごしてもらいます。緊急時を除けば、自分の意思を伝えるにも英語を使わなければなりません。「伝えたい」と思えば、知っている言葉を使って何とか工夫しますよね。そこが大切なんです。
――沖縄での合宿形式ならではの強みは、どのようなところにありますか。
日本にいながら、海外と同じような異国環境をつくれることです。与えられた英語を勉強するだけではなく、必要とあれば「必死に相手に伝える臨場感」を通じて、英語力を鍛えるという感覚を肌で理解してもらいたいんですね。
実際のコミュニケーションでは、単に言葉を話せればいいわけではありません。相手のことを知り、言葉になっていない雰囲気も感じ取る必要があります。合宿では少人数のグループに外国人スタッフが加わり、一緒に活動します。講師から表現や文法を学び、それを実際の活動で使う。この繰り返しによって、自分の英語を獲得してほしいと思っています。
海外で感じた悔しさが、教育への原点に
――現在の理念には、どのような思いが込められているのでしょうか。
原点にあるのは、私自身の苦い経験です。もともとはアートビジネスの世界にいましたが、日本の美術市場が低迷したことをきっかけに海外へ目を向け、サザビーズ・インスティテュートでアートビジネスを学びました。
そこで感じたのは、資格試験で測れる英語力だけでは、世界では通用しないということです。語学力だけでなく、人間力や交渉力など自分の能力をフルに活用することが必要でした。
日本には良い技術や能力を持っている人がたくさんいます。でも「良いものだから、使ってもらえれば分かる」という考えだけでは、海外では伝わりません。ビジネスでは、自分たちの良さを、何としても相手に納得してもらわなければならない。だからこそ、英語と一緒に「自分の熱度を伝える力」を身につけてほしいと思ったんです。
――経営の道に進まれた背景についても教えてください。
そのままアートの世界で仕事を続けたいと思っていました。ただ、海外でさまざまな経験をする中で、自分自身の夢を追うことだけでいいのだろうか、と考えるようになったんですね。
それなら、自分の海外経験を教育に生かし、日本のために何か役立つことをした方が、最終的には自分自身も満足できるのではないか。そう考えて、グローバル人材の育成へと方向性を変えました。今でも美術は本当に愛していますが、それでも挑戦する価値があると覚悟したんです。
利用者利益を最優先に
――経営判断で大切にしている軸はありますか。
私が株式会社ではなくNPO法人を選んだことにも、その考えが表れています。運営を続けるための利益はもちろん必要です。でも、利益そのものを目的にするのではなく、まず利用者が利益を得ることを一番にしたかったんですね。
合宿研修でも、「どうすれば短期間で効率的に実践力をつけて、自分の英語にしてもらえるか」というところにすべての配慮を向けたい。はじめに利益追求があるのではなく、利用者利益の優先がミッションです。
相手のために尽くしたことは、結果として自分たちにも返ってくると考えています。目先の利益ではなく、本当の意味で、相手に尽くすこと。その姿勢は、以前アートビジネスに携わっていた頃から変わっていません。
――一緒に活動する方々とは、どのような関係を築いていますか。
講師やスタッフには、活動のすべてを理解してもらうことを求めているわけではありません。「この部分なら共感できる」と思えるところで、それぞれの立場で参加してもらっています。
外国人スタッフはボランティアとして参加してくれる方もいて、「次はいつやるの」と聞いてくれたり、活動に合わせて来日する方もいます。そういう意味では、人に恵まれていると感じますね。
コミュニケーションも、いわゆる会社の上司と部下というものではありません。友人関係とも違いますが、「こんなことを考えている」「こんな方向性でやってみよう」と、人として対等な立ち位置で話すことを大切にしています。
オンラインで見えた課題を、次の教育へ
――現在向き合っている課題と、今後取り組みたいことを教えてください。
コロナ禍によって合宿が難しくなり、そこから高校生を対象としたオンラインの個別指導に力を入れるようになりました。大学受験を意識した内容ではありますが、英語の基礎力を高めることは、その先にもつながります。
指導を続ける中で感じたのは、英語ができる人と苦手な人との差が非常に大きくなっていることです。英語が苦手でも、科学や物理、情報分野など、別の分野ですばらしい能力を持つ人はいます。そうした人たちも、仕事では英語で交渉しなければならない場面が出てくるでしょう。
だからこそ、英語が苦手な人の力を底上げし、海外で対等に渡り合えるコミュニケーション力へ橋渡しする役割を担いたいと考えています。オンライン指導を通して見えてきた課題や改善点を合宿にも取り込み、以前よりさらに高品質な研修へ進化させたいですね。
――さらに挑戦してみたい教育はありますか。
アートビジネスの経験を生かし、「対話型美術鑑賞」の要素を英語の研修に取り入れたいと思っています。ワインと同じく美術のたしなみがあるということは、海外ビジネスの交渉の場で欠かせません。日本人は「美術」と聞くと尻込みしがちですが、「対話型美術鑑賞」は、「私がどう観たか」を大切にします。なぜ自分がそう考えたかを、言葉で伝えることが、海外では極めて重要です。ここから、本当のビジネス交渉が始まるものなんです。正解はないですから。そういう視点を研修でつかんでほしいですね。
大切なのは、人に合わせることではありません。自分の立ち位置で、自分の考えを語れるようになることです。英語という武器に、さらに自分自身の観点や教養を加えていく。そんな教育をこれから形にしていきたいですね。
私が守りたいのは、会社の目的を「利潤の追求」に置くのではなく、「受講生の利益」に尽くすという理念です。その軸を大切にしながら、時代に合わせて方法は変えていく。世界に出たときに、自分の言葉で相手と渡り合える人材を一人でも多く育てていきたいと思っています。