顧客視点とチームの力で新たな価値を生み出す――伴走支援で企業の挑戦を支える

K’s CREA Partners 代表 小杉 知司氏

K’s CREA Partnersは、新規事業や商品開発に取り組む企業に対し、顧客視点を軸とした事業づくりやチームづくりを支援しています。代表の小杉知司氏は、20年以上にわたり「0→1」の商品開発に携わり、さまざまな企業や技術者とともに課題解決に取り組んできました。その経験から重視しているのが、企業の中に入り込みながらともに取り組む「伴走支援」です。今回は、これまでの経験から培った考え方や、新規事業を前進させるために必要な視点、中小企業への思いについて伺いました。

20年以上の「0→1」経験から生まれた伴走支援

――現在の事業につながった、これまでのご経験について教えてください。

これまで20年以上、新しい商品や事業を生み出す「0→1」に携わってきました。携帯電話にカメラが搭載され始めた頃には、使い方に合わせて形状を変える機構に関わり、特許も取得しています。

当時の携帯電話は、落下して壊れてもユーザー責任ではなく、メーカー責任になるという異質な商品でした。当然、部品メーカーに落下に対する品質基準はありません。試験未実施のまま納品された多くの部品が落下試験でNGとなる異常事態が起きたのです。加えて1ロット数十万台という規格外の生産量も大きな壁となりました。

本来この不具合は部品メーカーの責任ですが、納期を守るためには立ち止まれません。自ら企業の中へ入って設計者と協議し、生産現場でものづくりを改善し、時には現場の技術者と一緒に徹夜することもありました。

そうした経験を通して、新しいことに挑戦するなら、外からのアドバイスだけでは足りないと感じるようになりました。相手の企業と一緒になって課題を解決していく。そこが現在の伴走支援につながる原点になっています。

――商品開発では、どのような考え方を大切にしていますか。

大きく変わったのは、美顔器の商品開発に携わった経験です。それまで培ってきた論理的な設計だけではなく、「なぜお客様がその商品を使いたいのか」という感情まで考える必要がありました。

日本の女性は「私なんて化粧が似合わない」というネガティブな感情を抱えている方も多く、ヒアリングではなかなか本音が出てきません。「本音は行動に現れるはずだ」と考えた私は展示会に足を運びました。デモ前は不安げだった女性が、デモの後に鏡を見て、自分の肌を触り、納得して笑顔になる。その姿を見て、やはり「ここがお客様の求めているものの原点なんだ」と実感したんです。

また、どれほど優れた機能を搭載していても、重くて使いにくければ手に取ってもらえません。「いくら機能が優れていても、私にも無理なく継続できるだろうか」というお客様の不安や思いに寄り添えなければダメなのです。機能を設計するだけではなく、使う人がどんな体験をするのかまで考える「体験設計」が必要なんですね。 

新規事業を前進させる「仮説検証」という考え方

――新規事業を進める上で、重要なことは何でしょうか。

人は、共通体験のない内容についてはなかなか理解することができません。まだ存在していない未来の事業について「こういう事業になります」と話しても、本当に実現するかは誰にも分からないからです。

だからこそ、まずは仮説を立てて、未来のビジョンを言語化する必要があります。言語化することで、チームや経営陣との間にコミュニケーションの土台ができます。そして、その仮説を検証していくことで、次のステップへ向けた方針が明確になり、事業が前進していくんです。

――仮説検証には、どのようなメリットがありますか。

先ほど申し上げた「コミュニケーションの土台ができる」ことに加えて、モノを見る感度が高まるというメリットがあります。検証した結果が仮説と異なっていた場合、「なぜ結果が違うのだろう」と深く考えるきっかけになり、新たな気づきを与えてくれるからです。

この際、仮説検証は段階的に進めることが重要です。まず一つの仮説を検証し、「これはいける」と思えれば次の仮説の検証を行う。未来が分からない中でいきなり多額の投資をするのは経営側にとっても怖いものですが、仮説検証ごとに段階的に投資を行えば、結果を見ながら修正もでき、最低限のリスクで済むわけです。

私自身も新しいことに挑戦した際には、周囲から反対されることが多くありました。だからこそ仮説を立て、「次はここまで証明します」と少しずつ形にしてきたんです。デモの完成度が上がるにつれて、「意外とできるかもしれない」と周囲の見方も変わっていく。そうやって味方を増やしていくことも、新規事業では大切ですね。

中小企業だからこそ、顧客視点とチームづくりが重要

――中小企業を支援したいと考える理由を教えてください。

中小企業は、経営者が腹落ちすれば物事が前に進むからです。大企業では会議を重ねても、なかなか決まらない場面を数多く経験してきました。

一方、中小企業では社長自身が成長したいという意思を持ち、ワンマン経営だけでは限界があると感じているのであれば、チームを育てることで次のステップへ進める可能性があります。

中小企業にとっての新規事業とは、自分たちの商品・サービスを顧客視点から見直すことです。そのためには、商品・サービスを「顧客の理想の体験を実現するツール」として捉える必要があります。その使用シーンに最適な形にしていくことが重要であり、次の成長を真剣に考えている企業であれば、取り組む価値は十分にあると思っています。

――中小企業の経営者に、特に伝えたいことは何でしょうか。

まずは「マーケットイン」、つまり顧客視点を持つことです。お客様のことを理解しようとしなければ、本当に求められる商品はつくれません。

そして、中小企業にとって重要な差別化を生み出すのは「人」だということ。特定の誰かだけに頼るのではなく、チームとして独自性を生み出せる仕組みをつくる必要があります。

商品を少し変えようと考えるだけでも、「お客様は何を求めているのか」と向き合わなければならなくなる。その積み重ねが顧客視点につながり、企業ならではの価値を生み出していくんです。

これまでの経験を伝え、元気な企業を増やしたい

――今後、K’s CREA Partnersを通じて実現したいことを教えてください。

新しいことに挑戦し、成長していく企業がどんどん生まれる環境をつくりたいですね。

私自身、これまで大企業で仕事をする中で、多くの中小企業に支えてもらいました。昔は大企業と中小企業の距離も近く、無理な依頼をしたら「自分で部品を取りに行って、お礼をしてこい」と上司に言われるような文化もあったんです。そうした企業に育ててもらったという思いがあります。

だからこそ、今度は中小企業へ恩返しをしたい。日本には良いものを持っている企業がたくさんある一方で、顧客視点の考え方や、それを形にするチームづくりが十分でないために、力を発揮できていないケースもあると感じています。

これまで自分が培ってきた経験を伝えながら、お客様の感情まで見つめ、チームで独自の価値を生み出せる企業を増やしていきたい――それが、これから実現していきたいことですね。

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