「困っている人を断らない」――資金繰りに悩む企業に向き合い続ける資金調達のプロ
せんしん経営コンサルティング 代表/資金調達コンサルタント 桑山 吉嗣氏
せんしん経営コンサルティングでは、資金繰りに悩む事業者を中心に融資支援を行っています。金融機関との人脈と、経営者へのヒアリングをもとに作り込むアピール文章を強みに、約20年にわたり資金調達を支援してきた桑山氏。本記事では、事業を始めた背景や独自の支援スタイル、経営で大切にしている姿勢、今後も果たしていきたい役割について伺いました。
目次
資金繰りに悩む企業を支える“王道”の融資支援
――現在の事業内容や、資金調達支援の特徴について教えてください。
私は資金調達コンサルタントとして、主に業績が良くない事業者さんの融資支援をしています。
銀行からすると、業績が良い企業ほどお金を貸しやすい。一方で、借りる側は困っているときほど資金が必要になります。私は、その間にあるギャップを何とかしたいと考えてきました。
もちろん、どんな企業でも必ず融資を通せるわけではありません。ただ、「どこへ行ってもダメだった」という方でも、可能性があるなら何とかできないかを考え支援しています。
――融資を実現するために、どのような強みを活かしているのでしょうか?
一つは、これまで築いてきた金融機関との人脈です。関西を中心に、信用金庫や日本政策金融公庫など、さまざまな金融機関とのつながりを作ってきました。
もう一つが、経営者の方からヒアリングした内容をもとに作るアピール文章です。A4で20枚ほど書きます。
「裏技があるのか」「政治家の力を借りているのか」と聞かれることもありますが、そういうことは一切ありません。人脈と文章、この二つを使った王道のやり方です。
――事業に込めている思いや理念について教えてください。
大層な理念やビジョンがあるわけではなくて「目の前で困っている人を何とかしたい」という思いが一番ですね。
ほんの2、3ヶ月、資金繰りが苦しいだけで会社を畳まなければならないケースもあります。「ここ3ヶ月を乗り切れば良くなるのに」という企業も少なくありません。
そういう会社を何とか支えたい。その思いは20年前から今も変わっていません。
税理士事務所での経験から生まれた資金調達の専門性
――資金調達の支援を始めたきっかけを教えてください。
20年ぐらい前、私は税理士事務所で会計業務をしていました。そこでお客さんから、「資金繰りが苦しい」「融資を受けたいけれど、何とかならないか」と相談されることが多かったんです。
ところが、当時の私は答えを持っていませんでした。それなら自分で何とか対応できるようになりたいと思ったことが、資金調達を勉強し始めたきっかけです。
――独自のノウハウは、どのように身につけていったのでしょうか?
当時は教科書になるような本も少なく、師匠のような人もいませんでした。そのため、本をむさぼるように読んだり、周りの銀行員に嫌がられながら聞いたりして、情報を集めていったんです。
それを自分なりに整理して、実際に試して、失敗して、また試す。うまくいったものを少しずつ蓄積し、ノウハウにしていきました。
――独立して経営者になることを決めた背景を教えてください。
20年前に勤務していた税理士事務所では、一人で資金調達事業部を立ち上げさせてもらいました。続けるうちに融資支援の成功確率も上がり、お客さんにも喜んでもらえるようになったんです。
5年、6年と経験を積むうちに、「税理士を目指すより、資金調達を専門にしたほうがいい」と考えるようになりました。これだけを専門にやっている人に出会ったこともなかったので、それなら独立してやってみようと思ったんです。
「困っている人を断らない」目の前の相談に向き合う経営姿勢
――経営判断の軸として大切にしていることは何ですか?
基本的には、「困っている人なら、出来る限り断らない」ということですね。
経営者の方が真面目で常識的な方で、本当に困っているのであれば、会社の規模や状況に関係なく、可能性が少しでもある限り努力します。
――これまで取り組んできて良かったと感じることは何でしょうか?
目の前に相談に来た人に対して、一切手を抜かなかったことです。「これはお金にならないな」と感じる相談でも、できることは全力でやってきました。
すると、その方が後から口コミで紹介してくれることがあります。自分では「良い無料相談にならなかったな」と思っていた方から紹介をいただくこともありました。
だからこそ、お金になるかどうかではなく、目の前の悩みに真剣に向き合うことが大事だと思っています。
――人とのつながりや紹介は、どのように築いてきましたか?
ここ10数年は、人を選別せずにいろいろな方と出会うことを続けてきました。
経営者交流会にも参加していますが、売り込みはせず、とにかく人と仲良くなることを続けていたら、ありがたいことに、今では紹介だけでも毎日のように問い合わせをいただくようになりました。
舞台演劇と脚本で仕事から離れる時間
――お休みの日は、どのようにリフレッシュされていますか?
趣味は舞台演劇です。小さい劇団の脚本を書いたりもしています。結構時間を使っていますね。
自分で舞台を観に行くこともありますし、演劇の仲間と一緒に過ごすこともあります。舞台鑑賞や演劇が、仕事以外の時間になっています。
新しい事業より、今求められている役割を続けていく
――今後、新たに挑戦したいことや事業の展開はありますか?
新しく挑戦したいことは、はっきり言ってないですね(笑)。今でもほぼ毎日のように問い合わせがあり、手に負えないぐらい忙しくさせてもらっています。
可能性がある相談なら滅多に断らないので、睡眠時間を削って対応することもあります。自分では「救急病院みたいなもの」だと思っています。
ほかにやる人があまりいないのであれば、新しいことを始めるより、この役割をこのまま続けていきたいです。
――これから事業を続けるうえで、課題だと感じていることはありますか?
いえ、特には。需要と供給を考えても、資金調達に困っている企業は尽きないと思っています。私一人でたいへんですが、それはいたしかたないところです(笑)。
――20年間一人で事業を続け、今後も人を雇わないと考えている理由を教えてください。
私は20年間、一人でやってきました。今後も人を雇うつもりはありません。
この仕事のノウハウは、人に移植するのがなかなか難しいと思っているのです。時間をかけて教えても、その人が辞めてしまえば続きません。会計事務所やコンサル業界にいた中で、そうしたケースを多々見てきましたから。
人に教えにくいノウハウでもありますし、これからも基本的には一人で続けていくつもりです。