合同会社エデュプレ 代表 鈴木啓容 氏
学習と心の成長を両輪で支える塾運営
━━ 御社の現在の事業内容とその特徴について教えてください。
当塾は、東京都葛飾区で小学生から高校生を対象にした学習塾を運営しています。最大の特徴は、学力向上だけでなく、メンタルトレーニングを学習指導に積極的に取り入れている点です。
メンタルトレーニングは、もともとスポーツ心理学に基づくトレーニングで、競技者が最高のパフォーマンスを出すために心の状態を整える手法です。
私自身、10年間ほどサッカーコーチを務めた経験があり、選手の心の持ち方が結果に直結することを実感してきました。
そこから「心のトレーニングは学習にも応用できる」と確信し、塾でも取り入れるようになりました。
━━ メンタルトレーニングとは具体的にどのようなものですか?
メンタルトレーニングでは、集中力の持続や自己効力感の向上、緊張の軽減、モチベーションの維持など、さまざまな心理スキルを体系的に鍛えていきます。
学習においても、子どもたちは「できないから自信がない」のではなく、「自信がないからできない」ことが多いです。学習塾エデュプレでは、メンタルトレーニングを通じて、目標設定の仕方や気持ちとの向き合い方、継続するための心構えなどを身につけ、自分で考え行動する力を養います。
━━ 企業理念やビジョン、業界での御社の強みは何でしょうか?
私たちの理念は「子どもたちの可能性を最大限に引き出す」こと。知識だけでなく、子どもが自分らしく学べる環境づくりを重視しています。
実際に、保護者様からも「前向きに取り組むようになった」「失敗しても立ち直れるようになった」といった声をいただいています。
ある中学生の生徒は、もともと自己肯定感が低く、なかなか教室に入れない時期もありました。しかし、目標設定ワークと振り返りの習慣を続けることで、「自分から取り組んだことが成果につながっている」と実感できるようになり、少しずつ表情が明るくなりました。今では自ら勉強の計画を立てて実行できるようになっています。
これはメンタルトレーニングの成果だと感じています。
異色の経歴が導いた独自の教育モデル
━━ 学習塾を始めるまでの経緯やきっかけは何だったのですか?
もともとは学校教員を目指していましたが、試験が学力偏重で画一的な評価に偏っていることに疑問を感じ、「本当に一人ひとりの力を伸ばす教育とは何だろう」と考えるようになりました。
そんな中、教育関係の仕事に携わっていた知人から「塾をやってみないか」と声をかけていただきました。
━━ 雇われ塾長から独立を決意した背景を教えてください。
26歳で塾長に就任し、4年間運営のすべてを任されました。
経営や教務の経験を積んだのち、自分自身の理想とする教育を追求したくて独立しました。
開業当初は資金もなく、生徒集めに苦労しましたが、メンタルトレーニングを取り入れたことで信頼が広がり、生徒数は60名以上にまで増えました。
━━ 最も印象に残っている経験について教えてください。
やはり、メンタルトレーニングを塾の指導に取り入れたことです。これがなければ、今のような成果や手応えは得られなかったと断言できます。
子どもたちは自分で決めた目標に向かい、その達成を通して自己効力感(「やればできる」という感覚)を育んでいます。
また、メンタルトレーニングの考え方を生徒の保護者の方々にも丁寧にお伝えし、子どもとの関わり方についてもアドバイスを続けてきました。例えば、結果よりも努力や行動を認めること、小さな目標を積み重ねて達成感を感じられるよう促すことなどです。
こうした声かけやサポートは、単なる「テストが近いから勉強しなさい」という短期的な指示から、長期的な視点で子どもの成長を見守る関わり方へと変化するきっかけとなります。
結果として、目指していた「主体性を育む教育」が塾だけでなく、家庭にも広がりつつあると感じています。
心に届く教育を広げる次なる挑戦
━━ 現在注力している新たな取り組みについて教えてください。
今はまだ道半ばですが、「学習×メンタルトレーニング」のノウハウを外部に展開することに注力しています。スポーツクラブや習い事教室と連携し、学びと心の成長を両立させる新しい教育モデルを広げていきたいと考えています。
━━ 今後、業界全体はどのように変わっていくとお考えですか?
今後は学力だけでなく、非認知能力、つまり自己管理力や共感力など、数値化できない力が重要視される時代になると思います。
当塾の取り組みはまさにそのニーズに応えるものだと感じています。
━━ 事業展開における課題や乗り越えるための取り組みは?
現在の課題は、メンタルトレーニングのノウハウをどう体系的に外部へ提供するかという点です。商工会議所などと連携しながら、事業化に向けて慎重に進めています。
また、将来的には地域の学校や行政とも連携し、子どもたちの心の拠り所になるような存在を目指していきたいです。
私にとって教育とは、知識を与える行為ではなく、子どもたちが「自分で未来を切り拓ける力」を育てる場です。そのために必要なのは、学力だけでなく“折れない心”や“信じる力”。
これからも、時代や環境がどう変わっても、子どもたちが安心して自分と向き合える場所を提供し続けていきたいと考えています。