有限会社サンホビー 山口取締役
岩手県遠野市に店を構えて約40年。有限会社サンホビーは「子供たちとかつて子供だったすべての人に夢と笑顔を」を掲げ、地域に根ざした玩具店として多くの人々に親しまれてきました。
今回は、3代目として経営を担う山口取締役に、これまでの歩みとこれからの挑戦についてお話を伺いました。
目次
実店舗にこだわる「顔の見える商売」
──現在の事業内容と特徴について教えてください。
主力は玩具・プラモデルの小売です。通販にはあまり頼らず、遠野市の実店舗で、お客様の顔を見ながら販売することを大切にしています。一部、ファンシー系文具も扱っていますが、基本は玩具中心です。私たちは「顔の見える商売」を掲げていて、お客様との会話や表情からニーズを汲み取るスタイルを続けています。
──企業理念に込めた想いとは?
創業者である祖父の想いを受け継いだものです。おもちゃは単なる商品ではなく、記憶や体験と結びついた存在。親子三世代が楽しめる場所として、子どもたちには楽しい思い出を、大人たちには懐かしさや温かさを届けたいと願っています。
地域密着で生き残る専門店としての強み
──業界全体が厳しい中、どのような強みで継続されているのでしょうか。
まずは地域のお客様との信頼関係。そして、お客様の声を聞き、求められる商品を可能な限り揃える柔軟性です。また、メーカーとの信頼関係も長年にわたり築いてきた財産です。最近では、地域の職人さんとコラボした木のおもちゃやオリジナルグッズも開発し、ふるさと納税の返礼品にもなっています。
おもちゃ屋の記憶を、未来に残したい
──経営に関わることになった経緯を教えてください。
祖父が創業し、母が事業承継した後、私も事業承継補助金を機に本格的に経営に携わるようになりました。幼い頃から店に親しんで育った経験が、今の仕事の土台です。
──今後の目標や夢は何ですか?
地元の子どもたちに「おもちゃ屋さんで過ごした記憶」を残してもらうことです。欲しいものを前にワクワクしたり、我慢したり、対面だからこその体験が、子どもたちの中に残ってほしい。将来、「そういえば地元におもちゃ屋があったな」と思い出してもらえたら、それだけで十分です。
地域の力に支えられてきた日々
──印象的だった出来事はありますか?
店舗の移転や東日本大震災、水害などで何度も事業継続の危機に直面しました。しかし、地元のお客様、異業種の仲間、業界関係者の支えがあって、ここまで続けることができました。特に被災時には、励ましや具体的な支援を受け、支え合いの大切さを実感しました。
──現在の経営体制について教えてください。
母と私の二人三脚です。世代は違えど、お互いの考えを尊重し合いながら、じっくり話し合って経営しています。家族だからこその信頼と気遣いが、今の形を支えてくれています。
今を大切に、無理せず、正直に生きる
──これからの展望をどうお考えですか?
将来的な大きな計画はありません。目の前の一日を誠実に生きること。まずは明日の営業を、そして今来てくださるお客様を大切にすることを重ねていく中で、未来が見えてくると信じています。
──経営で大切にしている価値観を教えてください。
「人に迷惑をかけないこと」と「正直であること」。無理に良く見せたりせず、今の自分たちの等身大の姿で、誠実に商売を続けていくことを大事にしています。
──これまでの原動力となっている人物は?
やはり祖父です。お店を立ち上げ、地域に根づかせてくれた祖父の姿を見て育ちました。その背中は、今でも私にとっての指針です。
地域の未来と子どもたちの笑顔のために
──経営以外で取り組まれていることはありますか?
遠野市の子育て支援や観光振興に関わる活動を行っています。教育委員や観光協会役員も務めており、地域の未来や子どもたちの環境づくりにも貢献できればと思っています。経営と同じように、遠野というまちと人に寄り添いながら、できることを一つずつ重ねていきたいですね。