行政書士法人Tree 代表 櫻井勇輝氏
「30分話すだけで1万円」といった高額な相談料が、市民と法律を隔てる大きな壁になっている――。
その疑問を出発点として、「誰もが気軽に相談できるリーガルサービス」を掲げ、行政書士法人Treeは誕生しました。
相談料無料と明確な価格体系を徹底し、市民に寄り添う法務サービスを提供している同法人。
今回は代表の櫻井氏に、事業への想いや経営方針、組織づくり、そして未来への展望について伺いました。
市民の暮らしに寄り添うリーガルサービス
――現在の事業内容と経営方針について教えてください。
当法人は、市民の方々に向けた「市民法務」を中心に事業を展開しています。離婚協議書、契約書、遺言書、相続関係業務、借金問題、そして外国人の在留資格に関する手続きまで幅広く対応しています。
私たちの理念は「法律をもっと身近に」です。法律問題は人生の大きな岐路に関わるケースが多く、身近に感じられる存在であることが大切だと考えています。そのため相談料は何度でも無料にし、料金も明確でリーズナブルな体系にしています。誰でも安心して相談できる環境を提供することが、私たちの最大の使命です。
「やりたいこと」が導いた行政書士の道
――経営者を志したきっかけについてお聞かせください。
私は「経営者になりたい」と強く志していたわけではありません。理学療法士やシステムエンジニアとして活動する中で多様な経験を重ね、「自分が本当にやりたいことを突き詰めていった結果」として、今の道にたどり着きました。
医療分野に携わっていた頃から「人と関わり困っている人を助けたい」という思いが強くありましたが、法律の世界に入ってからもその根本は変わりませんでした。
法律世界の現場では、料金体系が不透明で相談しにくいという課題を目の当たりにし、「もっとリーズナブルで安心できる仕組みを提供したい」という思いが一層強まりました。その結果、現在のように相談料をずっと無料とし、明朗な料金体系を掲げるスタイルへと至りました。
自由な働き方で社員の力を引き出す
――組織運営や社員との関係で大切にしていることはありますか。
現在、アルバイトを含めて約13名の社員が在籍しています。社員一人ひとりが主体的に働けるよう、自由度の高い働き方を導入しており、家庭や子育ての事情に合わせて自らシフトを調整できる仕組みを整えているため、安心して働ける環境を提供しております。
結果として離職率は低く、働きやすさがそのまま社員のモチベーションや充実感につながっていると実感しています。働くうえで重要なのは「環境」「お金」「やりがい」の3つですが、その中でも会社が意図的に整えられる「環境」と「やりがい」を特に重視しています。
具体的には、社員一人ひとりの得手不得手や意見に耳を傾け、幅広い業務の中から興味や関心のある分野を専門的に担当できるよう工夫することで、それぞれが強みを発揮し、やりがいを感じられる仕組みを整えています。
また、柔軟なシフト調整や相談しやすい職場体制など、家庭やライフスタイルに合わせて安心して働ける「環境」づくりにも力を入れており、働きやすさと成長の両立を目指しています。
そして、AIシステムの導入やDX導入を進める中で、社員が自ら業務効率化のアイデアを提案し、実際に業務改善につながったこともありました。こうした主体性が、組織を強くしていると感じています。
AIと人間の共存、全国展開への挑戦
――今後の展望についてお聞かせください。
弊社のサービスは自信を持って提供できるものと考えており、その価値をより多くのお客様に届けるため、今後は全国への支店展開も視野に入れています。ただし、その実現には支店を任せられる人材の育成が不可欠です。新たに仲間を迎え入れ、支店長として成長していただける方を育てていくことを目指しています。
そして、士業の分野にはAIに代替される部分も多いと感じています。書類作成などの単純業務は今後ますますAIに置き換わっていくでしょう。しかし一方で、実務的な取り扱いや高度な専門知識を要する分野においては、依然として人が優位に立っていると感じています。
さらに、お客様の感情に寄り添い、人生の岐路に並走することはAIにはできない、人間ならではの役割です。だからこそ、AIと人間がそれぞれの強みを活かし合う「共存の形」を築いていきたいと考えています。
さらに、グループ会社であるシステム会社や人材紹介会社と連携し、法律・住まい・仕事といった生活基盤をワンストップで支援できる体制を整えていきます。今後も人と技術を融合させることで、より多くの方々にTreeのサービスを届けていきたいと思います。
後悔しない人生を実現する行動力
――経営や人生において大切にしていることを教えてください。
「やりたいと思ったことは必ず実現する」ことです。後悔する人生は送りたくないので、思い立ったらすぐに行動するようにしています。常に新しい挑戦を続けることで、自分自身も成長し続けられると考えています。
プライベートでは一人で映画やゲームを楽しむ時間を大切にしています。仕事とは正反対の「一人の時間」が最高のリフレッシュであり、オンとオフの切り替えが、日々の集中力を高めてくれます。
これからも挑戦を恐れずに行動を続け、法律をより身近にするサービスを全国へ広げていきたいと考えています。