株式会社Feux(フィウ) 代表取締役 松尾龍之介氏
近年、世界中で日本のアニメや漫画の人気が高まっています。そのブームを追い風に、Webマーケティングと海外展開という二つの軸で事業を拡大している若き起業家がいます。今回は、パリを拠点に日本のコンテンツを世界に発信する株式会社Feux(フィウ)の松尾龍之介社長にお話を伺いました。
漫画をアートへ昇華する二本柱の事業
――はじめに、御社の現在の事業内容と特徴を教えてください。
現在は2つの事業を展開しています。1つはSNS運用やSEO対策、サイト制作などを含むWebマーケティング支援です。もう1つはフランス・パリでの漫画公式商品の販売事業で、今年7月から小学館様と提携し「少年サンデー」や「サンデーうぇぶり」の版権を活用した原画展や公式グッズ販売を始めます。
――企業理念やビジョンについてお聞かせください。
根底にあるのは「日本の素晴らしいコンテンツを世界に広めたい」という思いです。漫画やアニメを単なる商品ではなく芸術として高め、フランスからヨーロッパ全体に発信することで、日本の文化を世界に届けたいと考えています。
――業界での強みは何でしょうか。
私自身がアニメ・漫画業界の経験者であり、業界に特化したWebマーケティング支援を提供できる点です。さらに、GoogleやBaiduなど海外の検索エンジン最適化の実績を持つため、多言語・多国籍対応のノウハウが豊富です。
起業の原点は挑戦、成長の鍵は信頼
――経営者になられた経緯を教えてください。
動機は2点です。前職で多くの企業サイトの未整備を見てSEOの重要性を痛感し、成果創出の確信を得て起業しました。加えて、アニメ・漫画業界での経験から「フランスで日本コンテンツを展開する日本人が少ない」という未開拓性に機会を見出しました。
――目標は何ですか。
短期ではパリでの漫画公式商品販売を成功させ、3年で欧州主要国へ拡大します。最終的には年商100億円・多国籍100名規模の体制で、日本コンテンツのグローバル展開を牽引します。
――大切にしている価値観はありますか。
「お金との向き合い方」です。稼ぎ方だけでなく使い方・投資の配分を設計し、効率を恐れず市場の障壁を突破する方法を選びます。
――印象に残る出来事は。
「1ヶ月で成果」を達成した案件で継続契約に至らず、お客様へのプロセス共有と関係構築の不足を痛感しました。以降は結果だけでなく、対話と透明性で信頼を積み上げる運用へ改めています。
Win-Winを重視した組織づくり
――現在の組織体制を教えてください。
現在は業務委託14名ほどで、2025年7月から社員はマレーシア人の女性デザイナー1人に入社していただきました。メンバーのニーズに合わせた依頼と報酬を設定し、Win-Winの関係を築くことで主体性を引き出しています。
――社員に求める資質は何でしょうか。
今後の採用では、自ら考え行動できる主体性と異文化理解を重視します。多国籍チームでそれぞれの強みを活かせる組織をつくりたいです。
――社内文化を一言で表すと?
「結果へのコミットメント」と「挑戦」です。無理な拡大はせず、大義を共有し、一人ひとりが自律的に挑む文化を大切にしています。
Japan Expo2025から広がるヨーロッパ戦略
――今後の展望について教えてください。
まずは7月のJapan Expo2025での出展を成功させ、小学館様との協業を軌道に乗せることができました。実際に多くのフランス人へのファンにアプローチすることがてきました。
その後はスペイン、ドイツ、イタリア、ノルウェーなどヨーロッパ各国へ展開し、漫画モチーフの指輪など新商品を主力に育てたいと考えています。
――業界の最新動向はどう見ていますか。
アニメ市場は世界で4兆円、フランスでも1,000億円規模。漫画アプリの普及が進んでいない今こそ大きなチャンスです。多言語対応とIT技術を駆使し、市場を切り拓けると確信しています。
――課題と対策について教えてください。
最大の課題はフランスでのコミュニティ形成です。オンライン広告だけでなく、現地イベントや出版社・書店との連携を強化し、リアルな信頼関係を構築していきます。
日本文化への誇りと未来への情熱
――経営以外で情熱を持っていることはありますか。
日本文化そのものです。海外に住んでみて改めて、日本の細やかさや精神性が世界から高く評価されていると感じました。その強みを漫画やアニメを通じて発信し、日本の存在感を高めたいと思います。
――最後に、未来への思いをお聞かせください。
日本のコンテンツをフランスから世界へ広げる挑戦は始まったばかりです。文化を愛する人々に届けるために、一歩ずつ挑戦を積み重ね、世界中で日本の漫画やアニメがさらに輝く未来を実現していきたいと考えています。