RePuBrew合同会社 代表 畑 翔麻氏
静岡・三島から発信するRePuBrew合同会社は、常に新しい発見をテーマにクラフトビールの世界を切り拓いています。発酵学を専門に学んだ代表・畑氏は、学生時代の経験を原点に、クラフトビールを「高品質で多様な楽しみ方ができる存在」として広めてきました。飲食と醸造を一体化させた店舗展開や、環境負荷を考慮した新工場の設立など、挑戦を重ねる同社。今回は、畑氏のこれまでの歩みや経営に込める想い、そして未来へのビジョンについて伺いました。
醸造から提供まで一体化したクラフトビール事業
――御社の事業内容について教えてください。
弊社はクラフトビールの醸造と提供を一体化した事業を展開しています。定番6種類に加え、年間60種類以上の限定ビールを製造しており、常連のお客様にも常に新しい味を楽しんでいただけるのが強みです。
特徴的なのは、三島・沼津に構える店舗と醸造所を融合させ、お客様が料理と共にビールを楽しめる環境をつくったことです。また、コロナ禍の2ヵ月程前に缶ビール事業も開始し、全国でお楽しみいただけるようになりました。第2工場「ナチュラルルーツスタジオ」では、再生可能エネルギーや富士箱根の天然水を活用し、持続可能なビール造りを実践しています。
独立のきっかけと原点にある思い
――創業に至る経緯をお聞かせください。
私は学生時代に発酵学や微生物学を学び、日本酒や味噌づくりにも取り組んでいました。中でも、原料の安定性と自由な発想で味を生み出せるクラフトビールに大きな魅力を感じたのです。
居酒屋でのアルバイト経験も大きな原点になっています。店長がソムリエでもあり、多彩なお酒を提供する姿を間近で見て、「自分も将来は、お客様に直接説明しながらお酒を届けたい」と思うようになりました。独立時には、クラフトビール最大の魅力であるペアリングに注目し、レストランと醸造所を融合させた会社を設立しました。
社員と共に築く一体感と社内文化
――組織運営で大切にしていることは何でしょうか。
営業、製造、店舗のスタッフが一体となって「お客様の価値」を中心に考える文化を大事にしています。定期的な会議や試作会を行い、全員で味や提供方法を検討しています。
また、従業員の多くがお酒好きであることも特長です。飲み会や試食会を通じて自然と交流が生まれ、コミュニケーションが活発になっています。この一体感が、常に新しいビールを生み出し続ける原動力になっています。
趣味と仕事が重なる人生の楽しみ方
――プライベートでのリフレッシュ方法を教えてください。
私にとってクラフトビールは仕事であり、同時に趣味でもあります。休日もブルワリー巡りをしたり、他社の新作ビールを買い込んで自宅で飲み比べたりするのが大きな楽しみです。ビールはつくる側でありながら、常に「飲む側の目線」に立つことで、次のアイデアや発見につながっています。
また、旅行先では観光地巡りよりも、つい地元の醸造所や酒販店に足を運んでしまいます。各地域の水や原料の違いから生まれる個性に触れると、「次はこんなスタイルをつくってみたい」という意欲が自然に湧いてきます。
一方で、小さな子どもがいるため、家族と過ごす時間も欠かせないリフレッシュのひとときです。近所の公園で遊んだり、休日にサーフィンをしたり、地方の醸造所を見学したりして肩肘張らない時間が心を整えてくれます。家族と過ごす中で得られる温かい気持ちは、日々の経営判断や新しい挑戦に向き合うための大きな支えになっています。
世界を視野に描く未来のビジョン
――今後の展望について教えてください。
私の大きな目標は、アメリカで高品質なIPAを造ることです。IPAは世界的にも人気のスタイルで、アメリカ産のホップが重要な原料となります。現地の農家と契約を結び、最高の原料を使ったIPAを醸造し、日本にも届けたいと考えています。
さらに国内では、スーパーマーケットをはじめとする新たな販路開拓や、キャンプシーンとのコラボレーションにも挑戦しています。クラフトビールをもっと身近な存在にし、多様な場面で楽しんでいただける文化を広げたいです。クラフトビールを通して「ないものをつくり、新しい発見を届ける」挑戦を、これからも続けていきたいと思っています。