株式会社AMBITION&ASSOCIATES 代表取締役 成田 智 氏
企業経営における「リスク対策」として、多くの人がまず保険を思い浮かべます。しかし、それが本当に最適な手段とは限りません。
株式会社AMBITION&ASSOCIATESの代表取締役・成田氏は、時には顧客に「保険をやめる」という選択を提案することもあります。
保険会社での豊富な経験を経て独立し、保険販売にとどまらないリスクマネジメントを実践する成田氏に、事業への想いと経営哲学を伺いました。
保険は「目的」ではなく「手段」
━━ はじめに、現在の事業内容と特徴を教えてください。
弊社は法人向けに保険代理店業とリスクマネジメントのコンサルティングを行っています。重視しているのは、保険を売ることを目的にしない姿勢です。まず事業全体を俯瞰し、潜むリスクを徹底的に分析します。その上で「保険で備えるべきか」「教育や設備投資に回すべきか」を検討し、ときには「不要です」と伝えることもあります。保険はあくまで手段の一つ。企業が安心して未来へ進める最適な選択肢を提案することが、私たちの使命です。
独立を決意させた原体験
━━ 保険会社から独立された経緯について教えてください。
大学卒業後に損害保険会社へ入社し、代理店支援を担当していました。その後入社7年目に日本生命への出向で営業現場を経験し、多くのお客様が不安から保険に加入する一方で必要な対策が十分に検討されていない現実を知りました。また、米国保険業界の実情を勉強するために訪れていたハワイのNOGUCHI&ASSOCIATESの創業者である野口英夫氏に師事し、「保険を売るのではなく、事業を守る存在になりたい」と感じ、独立を決意しました。
━━ 仕事をする上での夢や印象に残っている経験はありますか?
夢は、代理店のリスク対応力を「保険販売を超えたサービス」として確立することです。事故処理で得た学びを活かし、未然防止に役立てることが業界の価値だと思います。若手時代には十分な保険金を支払えず期待を裏切った経験があり、その悔しさから「払うべきものは必ず払わせ、できないことは正直に伝える」との信念を持つようになりました。
規模よりも「深い信頼」
━━ 組織運営における考え方を教えてください。
かつては大規模代理店と合併し、100名規模の代理店に所属していたこともあります。しかし、文化や価値観の違いからまとめる難しさに直面しました。自分自身も大きな組織のルールより、自らのやり方でお客様と向き合いたいと感じるようになり、現在は少数精鋭の体制に切り替えました。
現在は2名体制で保険事業を運営し、1社1社のお客様と深い関係を築いています。経営者の方々とは、ビジネスパートナーであると同時に友人のような関係であり、「成田さんが言うなら任せるよ」と信頼いただける関係性が大きな力になっています。
保険代理店の価値を再定義する
━━ 今後の事業展開をどのように描いていますか。
これまで培ったリスクマネジメントの知見を、採用や財務、ファイナンシャルプランニングなど幅広い経営課題へ応用していきたいと考えています。事故や災害だけでなく、人材定着や資金繰りも企業にとって大きなリスクです。
また、海外進出を目指す日本企業の支援も強化します。特にアメリカ市場は法規制や商習慣が複雑ですが、現地代理店との提携により安心して挑戦できる環境を整えていきます。
━━ 直面している課題は何でしょうか。
「保険代理店=保険を売る」という固定観念をどう打ち破るかです。私たちの価値は「事故から学び、未来を守る知見」にあります。今後は顧客の課題解決をコンサルティングとして提供し、その対価を得られる新たなビジネスモデルを築いていきたいです。
人生は「幸せ」であるべき
━━ 経営や人生で大切にしている価値観を教えてください。
40歳までは仕事一辺倒でしたが、挫折を経て「人生の主体は仕事ではなく、幸せな生活だ」と考えるようになりました。経営においても「事故が起きた時こそお客様を助けるチャンス」と捉え、常にお客様の側に立つ姿勢を忘れないようにしています。
━━ プライベートの過ごし方についても伺えますか。
お客様と友人として語り合う時間が最大のリフレッシュです。信頼できる人たちと未来を語り合う時間こそが、生きがいであり、情熱の源泉です。
━━ 最後に、読者へのメッセージをお願いします。
「保険を売る」ことが目的ではありません。大切なのは、企業や人が安心して未来へ進める環境を整えることです。リスクを正しく見極め、一歩先を見据えた対策を取れば、必ず成長の道は拓けます。ぜひ、ご自身の事業にとって本当に必要な備えは何かを考えていただきたいと思います。

