Dwill株式会社 代表取締役 新子兼麻氏
国内外の垣根を越え、ライブコマースという新たな形で日本のブランドや商品を世界に届けているDwill株式会社。「日本の誠実さや品質は、もっと世界に誇れる」。そう語る新子氏が掲げるのは、“ライブ配信×マーケティング”による新たな経済循環の創出です。本記事では、同氏が描く事業構想とその原点、そして未来への展望を紐解きます。
日本発の価値を世界市場へ
──現在、どのような事業をされていますか?
弊社は、ライブ配信を通じて企業やブランドのマーケティング支援を行う企業です。ライブコマースを活用し、商品やサービスをリアルタイムで紹介・販売する仕組みを構築しています。
同社が注目される理由の一つに“共感を軸にした購買体験”を提供している点があります。従来の広告やECサイトでは伝えきれない商品背景や想いを、ライブの双方向コミュニケーションによって届けることができます。
日本のメーカーやブランドは、品質の高さに対して価格競争に巻き込まれるケースが多い。けれど、ストーリーを伝えることで、“安さではなく価値で選ばれる”状態をつくりたいと思っています。
現地で感じた“日本ブランド”への信頼
──創業に至った経緯を教えてください。
Dwillを立ち上げた背景には、海外で経験したことが影響しています。前職ではタイに駐在し、日本人向けホテルのリレーションシップマネージャーとして勤務。その中で、日本のサービス精神や品質がいかに信頼され、また求められているかを目の当たりにしたのです。
現地の人たちが“日本製”というだけで安心感を持ってくれる。それは単なるブランドではなく、“信頼の文化”が根底にあると感じました。
しかし一方で、日本国内では少子高齢化や市場の縮小が進み、海外展開に課題を抱える企業も多いと思います。そこで選んだのが、デジタルを活用して日本の価値を海外へ広げる道でした。
「ライブコマースなら、物理的な距離を超えて日本の情熱を伝えられる」。この考えが弊社の事業の根っことなっています。
共感をベースにしたマーケティング
──御社ならではの強みはありますか?
Dwillの最大の特徴は、ライブ配信における「人」を中心に据えたマーケティングです。
単に商品を紹介するのではなく、配信者と視聴者がリアルタイムでやり取りを交わすことで、商品やサービスの“空気感”を伝えます。その結果、購買率やリピート率が高まり、企業にとっても顧客との関係性を長期的に築ける仕組みになっています。
モノを売る時代から、“想いを共感でつなぐ時代”へ。私たちの役割は、企業と消費者を“信頼”で結ぶことです。この姿勢は、かつて現場で一人ひとりの顧客と向き合ってきた経験からきています。
「日本を届ける仕組み」をインフラに
──今後の展望は何かありますか?
今後、東南アジアを中心にライブコマース事業の海外展開をさらに加速させていく予定です。メイド・イン・ジャパンの魅力を届ける仕組みを“インフラ化”したいと思っています。単なる販売支援にとどまらず、日本の企業が世界の市場でブランドとして根付くための総合的な支援を目指しており、現地の文化や消費者心理に合わせた戦略も重視しています。
さらに、新子氏はライブ配信の活用を通じて、若手クリエイターや配信者が活躍できる環境づくりにも注力しています。単に商品を売るだけでなく、配信者自身が成長し、視聴者とともに新しい価値を生み出せる場を提供したいと考えています。
「配信者が自由に表現できることが、結果的に企業や商品の魅力を最大化する。人と人がつながることで、購買体験はより深く、心に残るものになる」と新子氏は話す。
挑戦の先に、新しい“経道”を
──最後に読者へのメッセージがあれば、よろしくお願いいたします。
何かを始めるのに、完璧な準備は要りません。小さくても一歩を踏み出せば、道は自然と見えてくる。経営とは、決して華やかなことばかりではないけれど、信じた道を歩むことが“経道”だと思っています。

