映像の力で医療を支える──“伝わる説明”が患者と医師をつなぐ未来へ

株式会社クロムビジョン 代表取締役 伊藤 彩 氏

医療現場における「伝わる説明」を映像で支える株式会社クロムビジョン。NHKで培った制作技術を活かし、医師と患者の理解をつなぐインフォームドコンセント支援映像を開発しています。本記事では、映像が切り開く医療の未来について、伊藤彩代表に伺いました。

映像で医療現場を変える。インフォームドコンセント支援の挑戦

――まずは、現在の事業内容について教えてください。

弊社は「映像の力で医療を支える」という理念のもとに設立しました。主力事業は、医師と患者双方を支援するためのインフォームドコンセント用映像「Videos for Informed Consent(V-IC)」の制作・提供です。

インフォームドコンセントは医師の説明義務として非常に重要ですが、専門用語や手技の複雑さから患者には理解が難しいことも多いです。NHK報道局で約30年間培ってきた映像制作の経験を活かし、「中学生にも理解できる医療説明」を目指して開発しました。

たとえば名古屋大学医学部麻酔科との共同研究では、V-IC導入によって年間1,000時間以上の医師の業務削減が実現。浮いた時間を教育や研究、診療報酬がつく医療行為に充てることで、医療の質と経営効率の両面に寄与しています。

患者にとっても、事前に手術内容を理解できることで安心感が高まり、医師にとっても説明業務の負担が軽減される──そんな「医療の新しい形」を目指しています。

NHKから起業へ。“正しく伝える”使命を胸に

――この事業を始められたきっかけを教えてください。

NHK時代、報道やドキュメンタリー制作に携わる中で映像に宿る「伝わる力」と同時に、「印象操作や誤解につながる危うさ」も痛感していました。医療現場でも誤解や情報の偏りから患者が不安を抱くことが多く、映像を正しく使えばそのギャップを埋められるのではないかと感じたのが原点です。

インフォームドコンセントは、医師が「説明した」と思っていても、患者が「理解した」とは限りません。双方が納得して医療を受けるためには、共通の理解基盤が必要です。私たちの映像は、医師の専門知識と患者の生活感覚、その“間”に橋を架けることを目的としています。

また、他社との差別化として、AIナレーションやアニメーションではなく、実際の医療現場を撮影する“実写”にこだわっています。現場の音や空気感、人の声や息づかいこそが、患者の理解と納得感を深めると考えているからです。

一人親方として走り抜く。信頼の輪で広がる組織づくり

――現在の組織体制や、日々の運営について教えてください。

現状は私と事務スタッフ1名、そしてプロジェクトごとに集まる業務委託のクリエイターで構成しています。撮影や編集の都度、信頼できる仲間を招集してチームを組み、案件ごとに最適な体制を整える方式です。

営業活動は現在、私自身が全国を回って行っています。医療業界は紹介がなければなかなか会えないことも多いのですが、患者安全を専門とする先生方を中心にネットワークを広げています。医療の質・安全学会や日本臨床麻酔学会、医療安全全国共同行動などで出展や講演を重ね、「この人の言葉なら聞いてみよう」と思って頂ける関係を築くよう努めています。

たとえ大多数ではなくても「志を共有できる仲間と語る」ことで、着実に丁寧に一歩一歩、信頼を積み上げていきたいと考えています。

アフリカから世界へ。映像が拓く“命を守る教育”

――今後の展望を教えてください。

国内ではV-ICの普及をさらに広げ、いつかは日本中の大学病院や総合病院で「映像を見てからサインするのが当たり前」になる未来をつくりたいと考えています。3年後には導入施設を現在の20~30倍に拡大し、医療の世界で認知を広げることが目標です。

同時に、アフリカでの医療教育映像の展開も構想しています。南アフリカでは医療事故や訴訟が多発しており、映像を通じた正しい知識の共有が必要だと思います。例えば帝王切開のリスク説明や新生児医療、感染症予防など、現地のニーズに合わせた多言語版の教育映像を制作し、JICAやJETROとも連携して展開できればと考えています。

「映像を見て納得できる医療を選択する」という文化を世界に広げること──それがクロムビジョンの次なる挑戦です。

愛犬との時間が教えてくれる“寄り添う力”

――お仕事以外で大切にされている時間について教えてください。

一番の癒しは、まもなく20歳になる老犬と過ごす時間です。結婚や離婚を経て人生の転機をいくつも経験してきましたが、どんな時もそばにいてくれました。最近は体調を崩しがちですが、「その最期を見届けること」がいまの私にはとても大切なことに思えます。

医療現場は患者と医療者が命と向き合う真剣な現場です。私も身近な命としっかり向き合いながら、“伝わる映像”とは何かを問い続けていきたいと思います。

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