FUN SPIRITS株式会社 代表取締役 日景 太郎氏
FUN SPIRITS株式会社は、「街の魅力にエンターテイメントを掛け算する」という独自の発想で、全国各地のまちづくりに新しい風を吹き込んでいます。代表の日景太郎氏は、バンダイで玩具開発に携わった経験をもとに、エンタメの力を地域活性化へとつなげる道を選びました。地域に長く残る“遊びの仕組み”をどう生み出しているのか、その背景とビジョンについて伺いました。
目次
遊びが地域を変える──エンタメ×まちづくりの新しい形
――まず、現在の事業内容と特徴について教えてください。
当社は「街の魅力にエンターテイメントを掛け算する」というコンセプトのもと、地域を舞台にした謎解きイベントや体験型コンテンツの企画・制作を行っています。私自身、もともと玩具メーカーのバンダイに勤めており、そこで“遊び”が人に与えるエネルギーや経済効果を実感しました。その体験を地域づくりに活かしたいと考え、独立してFUN SPIRITSを設立しました。
これまでに全国で約300件のプロジェクトを手がけてきました。最近では、単なるイベント制作だけでなく、観光戦略の立案やマーケティング支援など、上流工程から関わるケースが増えています。自治体との協業も多く、私の地元である秋田県、東京都、沖縄県、名古屋市など現在約60自治体様ほどなどでまちおこし事業を展開しています。民間企業ではコナミデジタルエンタテイメントさんやJR東日本さんなど、大手企業様と連携しながら、地域と企業をつなぐ「エンターテイメント×地域活性」を進めています。
“好き”が生み出す経済効果──創業の原点にある想い
――起業のきっかけや、仕事をするうえで大切にしていることを教えてください。
私は秋田県大館市の出身で、地元が年々人口減少していくのを見てきました。大学進学を機に東京へ出て、玩具メーカーで働いていたとき、「推し活」などファンが自分の好きなことに情熱を注ぎ、経済を動かす姿を目の当たりにしたんです。そこで、「この熱量を地方に還元できれば、地域経済はもっと豊かになる」と気づきました。
エンタメの力を使えば、地域に“関係人口”を生み出すことができます。たとえば、ある町のキャラクターや歴史をテーマにした謎解きイベントを行えば、ファンがその町を訪れるきっかけになる。それが消費や雇用を生み、地域に継続的な経済効果をもたらす。そんな仕組みをつくるのが、私たちの役割だと考えています。
また、仕事をする上で何より大切にしているのは“現場に行くこと”です。実際にその土地の空気を感じ、地元の方と話をし、食を味わわなければ本当の魅力はわかりません。島根県益田市を訪れたとき、市の代表的な河川である「高津川・益田川」に心を打たれたことがありました。現地の人は「何もない町」と言いますが、外から見ると宝石のような自然がある。そうした“気づき”を形にして発信していくのが、私の使命です。
若いチームで築く「誠意と信頼」の文化
――組織運営やチームづくりで意識されていることはありますか。
現在は3名のコアメンバーに、業務委託や副業のメンバーを含めて約20名ほどで活動しています。若い世代が中心ですが、誠実さと信頼の積み重ねを何より大事にしています。
ミッション・バリューの中でも、「ごめんなさい」「ありがとう」など、人として当たり前の礼儀・姿勢・誠意を持つことを掲げています。地方自治体や地域の方々と関わる中では、約束を守る・報告を怠らないといった基本的な姿勢が信頼につながります。私はそれを“人としてのマナー”として徹底しています。
また、エンタメの仕事は感覚的な要素が多く、正解がない世界です。だからこそ、コミュニケーションでは「なぜそう思うのか」「どう感じたのか」を言葉にして伝えることを意識しています。右脳的な発想を扱うからこそ、左脳的な言語化が必要なんです。素直で誤魔化さない、嘘をつかない──そんな人と一緒に働きたいと思っています。
遊びがつくる未来──全国10万人が楽しむ日を目指して
――今後の展望を教えてください。
今後3年以内に、年間10万人が弊社のコンテンツを体験する世界をつくりたいと考えています。単発のイベントで終わるのではなく、長期的に観光資源として使われるコンテンツを全国に増やしていくのが目標です。その結果として、地域に雇用や経済効果が生まれ、関係人口が広がっていくような循環をつくりたいと思っています。
一方で、今後の課題は人材です。より多くのプロジェクトを進めるためには、企画力や営業力のあるメンバーを増やしていく必要があります。組織としての成長を加速させながら、地域とエンタメをつなぐ新しい価値を創出していきたいです。
“遊び心”を忘れずに──リフレッシュの時間
――最後に、仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
実は趣味はポケモンカードやボードゲームなんです。完全にプレイヤーとして楽しんでいます。考えることや戦略を練る感覚が、仕事の企画づくりにもつながっている気がします。
“遊び”が人をつなぎ、笑顔を生み出す。そんな世界をこれからも広げていけたらと思っています。

