株式会社みらい創世舎 代表取締役 森 泰造氏
日本KFCホールディングスで5,000人以上の人材育成に携わり、赤字店舗の黒字化も実現してきた森泰造氏。現在は株式会社みらい創世舎の代表として、「GHCDコーチング」を通じてリーダーと組織の変化を支えています。適応障害や親の介護など自身の困難な経験を乗り越えたからこそ辿り着いた、“心の深い部分から行動を変えるアプローチ”とは何か。その歩みと今後の展望を伺いました。
軸は潜在意識に働きかけて行動を変える
――みらい創世舎では、どのような事業を展開されているのでしょうか。
現在は、①個人向けコーチングスクール、②経営者へのエグゼクティブコーチングや研修、③法人向けコンサルティングの3つを柱にしています。
いずれも「行動そのもの」ではなく、行動を生み出す前提――環境、価値観、思い込み(ビリーフ)、過去の体験や記憶――に働きかけるのが特徴です。
感情や思い込みにアプローチし、自分が本当に大切にしたいものや「ありたい姿」を明確にしていくことで、仕事観や生き方の軸が定まります。その軸を中心に物事をとらえられる人が増えることが、強い組織づくりにつながると考えています。
――現在の事業に至るまでの経緯を教えてください。
大学卒業後、カーネル・サンダースに憧れてケンタッキーフライドチキンに入社しました。現場では、高校生アルバイトがなかなか動いてくれない経験を通じて、「人はどうしたら動くのか」と常に考えていました。その後、店長やスーパーバイザーに昇進しましたが、上司との関係悪化や母の介護が重なり、適応障害で休職することになりました。
そのとき出会ったのが、コーチングと心理の技術です。いくつかのスクールで学び、自分のパターンに向き合っていくと、母との関係が短期間で大きく改善し、自分自身も元気を取り戻しました。
「人生を変えてもらった」という実感から、この技術を必要とする人はたくさんいるはずだと感じ、復職後に独立しました。
日本人の働き方マインドを変えるという使命
――事業や協会の活動に込めた思いを教えてください。
私は日本という国が好きですし、同時に「日本のリーダーはもっと元気になれる」と感じています。義務感だけで働いている限り、生産性も創造性も上がりません。「仕事が面白い」と心から思える人ほど、良い仕事をし、人を巻き込み、エネルギーを発揮できます。
だからこそ、「高揚感を持って楽しく働くリーダーが当たり前の社会」をつくりたい。そのために「日本人の働き方マインドを変える」というミッションを掲げ、GHCDコーチングを学び伝えられる人を増やしています。
自社スクールの卒業生向けにビジネス実践講座を行い、認定講師を日本各地で育成すること、そして将来的には世界にも広げていくことを目標としています。
伝え合い・理解し合う組織をつくる
現在は3人のスタッフと一緒に仕事をしています。毎週1回のミーティングで、互いが何をしているのかを共有し、感じたことを率直に言葉にすることを大切にしています。専門分野や強みが違うからこそ、「こういうやり方もあるのでは」といった意見が出てきますし、ポジティブなこともネガティブなことも含めて話し合える関係性をつくりたいと思っています。
その土台にあるのが信頼関係です。相手の言葉だけでなく、その裏にある感情や思い込み、過去の体験にまで思いを巡らせて理解しようとする。そうした姿勢を、初対面の方にも発揮できるよう技術として落とし込んでいるのが、私たちのコーチングでもあります。
認知を広げ、海外からも学びを得る
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
会社としての大きな課題は「認知度をどう高めていくか」です。コンテンツの独自性や効果には自信がありますが、「みらい創世舎やGHCDコーチングの存在を知られていない」という現実があります。
そのため最近は、1分間のショートドラマを使ったTikTok配信など、新しい情報発信にも挑戦しています。コーチングに対して「怪しい」「よくわからない」というイメージを持つ方にも、身近に感じてもらえるきっかけをつくっていきたいです。
また今後は、外国人クライアントとも仕事をしたいと考えています。海外の若者たちは、自分の欲求や将来像を率直に言葉にするエネルギーがあります。そのエネルギーの源泉から学び、日本のビジネスパーソンに還元していくことも、私にとって大切な挑戦です。
諦めない背中を見せ続けるために
――最後に、リフレッシュ方法を教えてください。
月に1回は必ず旅行の予定を先に入れて休みをつくります。日々のルーティンでは、朝の散歩やアファメーション、朝晩の瞑想、ストレッチ、週2回のジム、そして3年続けている尺八の練習を大事にしています。
自分自身の経験を通じて、「人はどうすればできるようになるのか」を探究してきました。そのプロセスをそのまま仕事にも生かしながら、一人ひとりが自分らしく豊かに働ける社会づくりに貢献していきたいと思います。

