株式会社FARM TO 代表取締役 徳万 隆良氏
山口県で無農薬・無化学肥料の野菜づくりから加工・販売、レストラン運営までを一貫して行う株式会社FARM TO。代表の徳万隆良氏は、19代続く土地への想いと家族の意思を受け継ぎ、植物性だけの食を地方から発信しています。健康を軸にした“本物の食”を追求する同社の事業モデル、家族経営の在り方、そしてこれからの展望について伺いました。
目次
無農薬×プラントベースを貫く“一貫型ファーム”という事業モデル
――現在の事業内容と特徴について教えてください。
農業、生産物の加工、そしてレストラン提供までをすべて自社で行っています。特徴は、自分たちで育てた無農薬・無化学肥料の野菜だけでレストランを成立させていることです。プラントベースのカレー、バーガー、ピザ、サラダなどを提供し、健康志向の高いお客様が県外からも訪れてくださいます。
加工品はチョコレート、パン、古代米など幅広く、OEM対応も行っています。大量生産ではなく、価値を理解してくださる方に届ける“少量高品質型”を大切にしています。
土地の価値に気づいた転機と、「本物の食」を追求する生き方
――代表ご自身のキャリアや、大切にしている価値観について教えてください。
もともと神奈川で育ち、家業を継ぐつもりはありませんでした。しかし、山口に移住し、農業に携わるなかで19代続く土地の価値に気づきました。さらに2人の娘が「農業をやりたい」と言い始めたことが大きな転機となり、法人化を決意しました。現在は長女が取締役社長として学びながら経営に関わっています。
仕事の軸は「本物を提供すること」です。自分たちが健康でなければ、健康をうたう野菜の説得力はないと考え、実際に自分自身がプラントベースの食生活を徹底し、2年間で26kg減量。肌荒れやアレルギーも改善し、身体の変化を実証したことで、お客様により自信を持って向き合えるようになりました。
家族4人で築く“信頼の経営”──50%だけ理解するというルール
――家族経営で大切にしているコミュニケーションとは?
家族4人で農場・加工場・レストランを回しており、役割は明確に分けています。大切にしているのは、**「相手を100%理解しようとしない」**ことです。
100%理解しようとすると必ず衝突しますが、50%だけ理解し、残りは相手を信じて任せる。このスタンスにしてから、家族間のコミュニケーションが驚くほどスムーズになりました。
子どもたちにも“対等なパートナー”として向き合い、年齢で上下をつくらず、良いものは良いと認め合う関係性を築いています。この信頼関係が、少人数でも大きな仕事を可能にしている原動力になっています。
地方の人口減少を見据えたデリバリー構想と30年先の事業戦略
――今後挑戦したい取り組みを教えてください。
地方では人口減少が加速し、お店に来られない高齢者も増えています。そこで、**“健康的なサラダやプラントベース料理を届けるデリバリー事業”**に挑戦しようとしています。店舗から15分圏内に行政施設や企業が多く、健康志向の方が多い一方で、時間が取れず来店できないという声を多くいただきます。
将来的には、30年先を見据え、地方での飲食業の在り方を根本から見直す必要があると考えています。大量生産・大量消費ではなく、価値を理解する方に丁寧に届ける仕組みをつくることが、これからの地方の食と農の未来を支える鍵になると思っています。
「休みはいらない」──お客様の笑顔が最大のエネルギー源
――リフレッシュ方法や日常で大切にしていることを教えてください。
明確な休みはありませんが、畑に出たり加工をしたりする時間そのものがリフレッシュになっています。一番の喜びは、お客様から「おいしい」「身体が軽くなった」と直接言葉をいただける瞬間です。自分たちの野菜を食べて笑顔になってくださる姿が、何よりの活力になります。
食は誰かの人生を支えるものであり、その人の体調や日々の気分まで左右します。だからこそ、これからも嘘のない“本物の食”を届け続けたいと思っています。
これからも、心と体にまっすぐ届く“本物の食”を家族一丸で届け続けていきます。

