株式会社ハタメタルワークス 代表取締役 畑敬三氏
株式会社ハタメタルワークスは、東大阪で金属製品の製造を行う企業として、銅に特化した加工技術を磨き続けています。銅を専門に扱う加工業者は多くなく、全国から少量多品種の依頼を受けられる体制が強みです。三代目の畑敬三氏は、主要取引先の変化や業界の波に直面しながらも、事業の再構築と効率化を進め、独自のポジションを築いてきました。本記事では、社員との関係づくり、働きやすい環境整備、そして今後の挑戦について伺いました。
目次
銅加工の専門性を高め、幅広く貢献できる企業へ
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当社は金属製品の製造業を営んでいますが、その中でも銅に特化している点が大きな特徴です。銅は用途が多く、建築資材や電気部品など幅広い分野で使われる一方、扱いが難しく、求められる精度も高い素材です。加工には経験が必要で、一般的な金属よりも「現場の感覚」が仕上がりに影響します。そのため対応できる会社は限られていますが、全国からの依頼に応えられる体制をつくることで、多様な案件を受けられるようになりました。
少量多品種の加工は手間も多い反面、銅に特化した強みを発揮しやすく、一社の大口に依存せずに事業を安定させやすいという側面もあります。専門性が伝わることで問い合わせも増え、着実に依頼の幅が広がってきました。
三代目として継承した決断と、会社を変えた転機
――事業を継がれた経緯や、印象に残っている出来事を教えてください。
私は三代目で、創業した祖父と、製造業へと事業を広げた父に続いて会社を継ぎました。ただ継ぐ前は別業界で7年間働いており、家業に戻るかどうかは大きな迷いがありました。当時は会社の状態も決して良くなく、「このまま畳む」という選択肢も現実的に議論されていたほどです。
その状況に追い打ちをかけたのが、主要取引先の合併による大幅な受注減でした。ほぼ一社に依存していたため影響は大きく、値下げ要請も重なり、会社の存続が揺らぐほどの危機でした。まさに事業の岐路で、そのなかで「続けるのか」「終わらせるのか」の判断を迫られました。
しかしこの出来事が、むしろ事業を見直すきっかけになりました。依存リスクを減らすため、新規の取引先を増やす方針へと切り替え、営業の仕組みや受注の幅を広げる取り組みを少しずつ進めました。銅加工に特化する方向性が固まったのもこの頃で、結果として会社の軸が明確になったと感じています。
効率化を進め、働きやすい環境をつくる
――組織づくりや社員との関わりで意識していることはありますか。
リーマンショックの時期、仕事が大きく減り、定時まで作業が続かない日も増えました。その時に「仕事が少ないなら早く終わらせて帰ろう」という方針に変えたところ、社員一人ひとりが自然と工夫するようになり、効率化が一気に進みました。段取りの組み方や作業方法を自ら改善しようとする習慣が根づき、現在の働き方の基礎になっています。
今でも仕事が予定より早く終われば17時に退社できる日もあり、「決められた時間に向けて集中して働く」という姿勢が組織全体に広がりました。こうした文化は、少量多品種の案件が多い当社にとって大きな強みになっています。
コミュニケーションでは、一方的に指示をするのではなく、社員の話を丁寧に聞く姿勢を大切にしています。個別面談だけでなく、普段の会話の中でも気づいたことをすぐ相談してもらえる環境づくりを意識しています。採用では、「言われたことをこなすだけでなく、自分なりに効率化を考えられるか」を重視しています。
「銅加工といえばハタメタルワークス」と言われる存在へ
――今後の展望について教えてください。
目指しているのは、銅加工の専門企業としての強みをさらに磨き、「銅加工といえばここ」と認識される存在になることです。現在の設備では対応できない加工もあるため、設備投資を継続してより幅広い依頼を受けられる体制にしたいと考えています。
また、少子高齢化が進む中で人材確保は今後さらに難しくなると感じています。だからこそ、若い人にも働きたいと思ってもらえる工場環境づくりが欠かせません。ロボットやAIの導入にも前向きで、生産性の向上だけでなく、社員の負担を減らすことも目的としています。技術と環境の両面から会社を強くしていきたいと考えています。
日常を切り替え、前に進む力をくれるもの
――お仕事以外で大切にしている時間を教えてください。
休日は子どもと過ごす時間が中心です。日常のやりとりの中で自然と気持ちが切り替わり、仕事のことばかり考えてしまう状態から離れられます。また、子どものパパ友とソフトボールをして体を動かす時間も大切で、気分転換になるだけでなく、新しい発想が生まれることもあります。

