弁護士法人 永 総合法律事務所 代表 永 滋康 氏
中小企業法務と不動産業務、寺社法務の3つを中心に事業を展開する 永 総合法律事務所。代表の永 滋康 氏は、僧籍を持つ弁護士として、法律の力で人に寄り添い、企業が安心して成長できる環境づくりを支えることを使命として日々業務に向き合っています。今回は、事務所の理念、永氏自身のキャリアや価値観、組織づくりへの思い、そしてこれから挑戦したい未来像についてお話を伺いました。
目次
企業法務と寺社法務を柱に「予防法務」を重視
――現在の事務所の特徴や強みについてお聞かせください。
当事務所は、中小企業を中心とした企業法務、不動産取引、そして寺社関連の法務を3つの柱に掲げています。特に大切にしているのは“予防法務”の考え方で、これは開業当初から一貫して変わらない信念です。トラブルが起きてから弁護士が対応するのではなく、そもそも問題が起きないようあらかじめ配慮して環境を整える。そのために契約書の整備や取引の仕組みの見直し、経営者との定期的なコミュニケーションを重視しています。
予防法務はトラブルを発生させないという性質上目に見える成果が表れにくい領域ですが、企業の安定や成長に大きく寄与します。「あの時相談しておいてよかった」と言ってくださる瞬間は、弁護士冥利に尽きますね。
――理念に込めた思いとはどのようなものでしょうか。
「共に歩み、共に成長し、共に喜びを分かち合えるパートナーシップを。」という理念を掲げています。お客さまの言葉の奥にある本質的な課題を捉え、最適な道筋を共に考える、あたかも“カウンセラー”のような役割こそが弁護士の大切な仕事だと考えています。お客様と長く寄り添い、企業の成長を共に喜べる関係を構築していくことが理想です。
独立に込めた思いとターニングポイント
――独立されたときのお気持ちはどのようなものだったのでしょうか。
独立は弁護士になったころからの目標でした。勤務していた事務所の仕事はとても面白かったのですが、「いつかは自分の事務所を」という思いが心のどこかに常にありました。しかし、お客様と長い時間を共に寄り添って、共に成長していくことを考えればこそ「できるだけ若いうちに独立しなければ」と思い、独立に踏み切りました。
独立当初は顧客ゼロ。名前も実績もありません。電話が鳴るたびに期待し、鳴らない日は不安になる。そんな日々でしたが、いただいた案件にひとつひとつ誠実に向き合うことで少しずつ信頼が積みあがり、今日に至ります。
――キャリアの中でターニングポイントとなった出来事はありますか。
二つの転換点があります。ひとつは、独立して事務所を構えたこと。もうひとつは、共同経営を解消し一人で舵を取る体制に戻したことです。どちらもリスクがありましたが、結果として自分の信念や理念をより明確にし、「どのような法律事務所を創りあげていきたいのか」を深く見つめ直す機会になりました。
また、第二東京弁護士会の副会長を経験したことも大きいですね。多くの弁護士や地域の方々と関わる中で視野が広がり、弁護士が果たすべき役割や社会的責任を改めて意識するようになりました。
アットホームで風通しのよい組織づくり
――組織運営で意識されていることを教えてください。
弁護士と事務局の上下関係を強く作らず、互いをパートナーとして尊重する雰囲気づくりを意識しています。事務局の存在がなければ弁護士の仕事は成り立ちません。役割は違えど、対等な関係で意見をぶつけて高め合っていける環境が大切だと考えています。
――印象に残るエピソードはありますか。
事務作業のマニュアルを事務局スタッフが自主的に作り上げてくれたときは、本当に感動しました。ひとつひとつ写真入りで新しいスタッフでも理解できるほどわかりやすい。しかもそれを「これがあれば新しく入ってくる人も困らないですよね」と自然に共有してくれたのです。
こうした自発的な行動は、事務所にとって代えがたい財産です。自分の役割だけにとどまらず、事務所全体の未来を考えて動いてくれる――そんなメンバーに恵まれていることを誇りに思います。
寺社法務の発展と、より多くの企業を支える未来へ
――今後の展望や挑戦したいことについてお聞かせください。
寺社法務の分野には今後さらに力を入れていく予定で、年明けには関連書籍の出版も準備しています。また、メインとなる中小企業法務の領域でも顧問先を増やし、より幅広い業種をサポートできるよう体制を強化していきたいと考えています。そのためには弁護士の増員や営業活動の強化も必要で、ひとつひとつ丁寧に進めていきたいと思っています。
頭を空っぽにしてリフレッシュする時間
――お休みの日はどのようにリフレッシュされていますか。
昔から体を動かすことが好きで、時間があればゴルフに行ったりジムで汗を流したりしています。そして、運動の後のサウナは欠かせません。サウナでは強制的に頭が空っぽになり、余計な思考が抜けていく感覚があります。普段は仕事のことを考え続けてしまうので、そうやって完全にリセットできる時間は貴重ですね。
サウナから出ると不思議と新しいアイデアがひらめくこともあります。体を整えることは、結局仕事の質を高めることにもつながると実感しています。

