変化する社会に必要な「本当に役立つ危機管理」を追求して――企業に寄り添う次世代ソリューションとは

株式会社ノンマド・ファクトリー 代表取締役社長 松丸 俊彦氏

警視庁公安部を経て、官公庁・大手企業・海外大使館など幅広い領域で危機管理を担ってきた松丸俊彦氏。2023年に独立し、株式会社ノンマド・ファクトリーを創業した同氏は、現在13社の顧問業務と講演・研修を行いながら、企業のリスクに寄り添う「ワンストップソリューション」を掲げて活動しています。危機が多様化・複雑化する現代において、“現場で本当に使える知識と仕組み”の提供にこだわる同氏に、独立の背景から組織への想い、そして今後の展望までを伺いました。

危機管理を軸に“寄り添う支援”を提供する現在の事業

――現在の事業内容について教えてください。

現在は、西新宿に拠点を置き、1名体制で活動しています。

主な柱は2つあり、1つ目は13社を担当している顧問業務です。規模も領域もさまざまです。内容は各社によって異なり、国内外の事業所の安全対策や、爆破予告・不審者対応などのリスク管理、管轄警察署との連携方法作り、海外赴任者の安全研修、危険案件の裏付け調査、ボディーガードの手配まで多岐にわたります。

顧問契約は長期的な伴走型が中心で、企業内部の事情を深く理解した上で改善を重ねることを重視しています。「いざという時だけ呼ばれる」のではなく、日頃から社内に入り込み、未然防止につながる設計を行うのが私のスタイルです。

もう1つが講演・研修です。外務省や官公庁、企業研修のほか、外交官を対象とした研修も担当しています。テレビ出演や事件解説、本の執筆、NHKドラマの監修も行っています。社会に“正しい危機管理情報”を届ける活動も、企業支援と同じくらい重要な使命だと考えています。

独立の理由は「かゆいところに手が届く危機管理」を実現するため

―― 経営者になられた経緯をお聞かせください。

もともとは警視庁公安部でテロ・スパイ対策に従事し、日本にある外国の全大使館のアドバイザーとして勤務した経験があります。家族の健康事情で早期退職し、危機管理会社に数年勤めましたが、提供サービスが定型化しすぎていることに課題を感じていました。

危機管理は企業ごとに事情が異なり、画一的なメニューでは本質的な支援が難しいケースもあります。自分が本当に提供したい“きめ細かく寄り添う支援”を実現するため、独立を決意しました。現在は、私の経験が企業の大きな危機を未然に防ぐ一助となっていることに、このうえないやりがいを感じています。

今後仲間が増えたときに大切にしたい、専門家同士の“融和”

――将来的に組織を広げる構想があると伺いました。

今後は3~5年で5名程度の組織に拡大したいと考えています。危機管理の現場では、緊急の駆けつけが必要となるケースや、海外出張の同行、複数拠点への同時対応など、一人では限界が出る場面も多いです。また、企業の本社対策本部に常駐しながら情報整理を行うなど、人的リソースの厚みが支援の質に直結する領域も少なくありません。

一方で、警察・自衛隊・軍・外務省など、出身も専門も異なるプロフェッショナルが協働する際には、互いの経験や価値観がぶつかることもあります。だからこそメンバーが専門性を存分に発揮でき、かつクライアントの利益を最優先に考えられる“融和”の組織文化を作っていきたいです。目的はあくまで「企業の危機を最小限にすること」。そのための最適な組み合わせを作るのが、自身の役割だと考えています。

SNS時代における“危機管理の届け方”にも挑戦したい

――今後挑戦したいことは何でしょうか。

講演や書籍、テレビ出演を通じて発信してきましたが、若い世代には思った以上に届いていないことを痛感しました。特に20代は新聞もテレビも見ず、動画中心の生活という現実があります。

危機管理の知識は世代を問わず必要なものです。そのため今後は、SNSやYouTube、オンライン講座など、新しい手法を積極的に取り入れ、より多くの人に情報を届ける仕組みづくりに挑戦したいと思っています。

神社仏閣巡りが、自分を整える大切な時間

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

趣味は神社仏閣巡りです。出張先でも必ず時間を作って訪れるようにしています。鳥居をくぐると自然と気が引き締まり、静かな環境で自分をリセットできる感覚があります。仕事柄、緊張感を伴う案件も少なくない中で、心を整え、静かに向き合える大切な時間です。参拝で頭を下げるひとときが、次の案件への集中力を生み出してくれています。

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