1円に込めた覚悟──19歳社長が映像制作を通じて掴もうとする「経験という価値」

株式会社南翔グループ 代表取締役 今村 南翔 氏

映像制作を通じて、あえて「1円」という価格を設定する──。

株式会社南翔グループ 代表取締役 今村 南翔( イマムラ ミナト)氏は、19歳という若さで、現在単位制高等学校に在籍しながら会社を立ち上げ、YouTuberその他の動画クリエイター向けの映像制作に取り組んでいます。本来の生計を立てることを目的としないその姿勢の背景には、起業そのものを自らが経験し、将来に繋げたいという明確な意思がありました。映像との出会いから起業に至るまで、そして今後に見据える未来について話を伺いました。

映像制作を「学びの場」として行う現在の事業スタイル

――現在、どのような事業を行っているのでしょうか。

主にYouTuberその他の動画クリエイターさまから御依頼を受け、撮影済みのデータに、映像編集等を施して納品するスタイルを取っています。データはオンラインで共有いただき、こちらで映像編集等の代行をし、進める形です。基本映像制作プランでは、カット及びクリップ追加、画像・動画の素材投入、テロップ、BGM、効果音、録音音声、速度設定、トランジション、フィルター、エフェクト等に対応していますので、通常動画のみならず、TikTok、リール、YouTube Shortsその他のショート動画にも対応しています。また最近ではAIを活用した映像制作も試験導入しています。

――価格を1円に設定している理由を教えてください。

実は会社設立時には、自営業者として生計を立てていきたいとは考えておらず、主にファイナンシャル・インテリジェンス(会計、投資、市場の理解及び法律を組み合わせたもの)を高めるために、特に商品を売買するために必要なセールスとマーケティングを学習し、将来の糧となるために、経営の仕組みを自らが会社を立ち上げ、自営業者として学びたいとの意志に基づき、「自己投資」の一貫として事業を行っています。ただ無償(0円)にしてしまうと、これは単なる「ボランティア」になってしまうので、その線引きを明確に行う観点から、あえて1円という価格に設定しました。私自身は、たとえ1円であろうとも、当社を信頼していただいたお客さまの思い並びに1円というお金をいただくことへの重み及びありがたみを実感しています。

映像とともに育った原体験と起業を決意するまで

――映像制作との出会いはいつ頃だったのでしょうか。

幼い頃からカメラ、パソコン、スマートフォン等が身近にある環境で育ち、小学6年生から本格的に映像制作に励むようになりました。また2017年4月20日よりYouTubeを8年以上も継続しており、商品紹介をメインとしていた約3年前までは、企業タイアップも数件程度ですが経験させていただきました。またYouTube外の活動では、例えば小学6年生の頃に知り合いの御依頼で当時パソコン教室に通っておりましたので、講師の先生に御協力いただきお店のホームページを作成したり、2022年には大手ライブ配信アプリの公式アンバサダーに就任しました。

――起業を志すようになったきっかけを教えてください。

中学1年生の夏休みに、小学時代の親友2人が我が家に宿泊しに来た際に、映像制作の個人サークルを結成したことがきっかけです。その時は、「いつか会社になったらいいね」という単なる軽い戯言に過ぎませんでしたが、自分の中では、そこから起業への意識が強まりました。当時から家族、友人等の周囲の人に対して、「将来は会社を立ち上げる」、「いつか社長になる」と話していたので、無事に有言実行をさせることができました。

一人で経営するからこそ意識している仕事の進め方

――現在の組織体制について教えてください。

現在は自分一人で運営していますし、今後も従業員を雇用する予定は一切ありません。これは、自分自身のみならず、従業員やその家族の人生にまで大きな影響を及ぼすからです。ただ、商号に「グループ」がつけられているのは、前述通り、個人サークルの方では約20名ほどが所属しておりますので、その名残りから「グループ」という単語を含めました。

――お客様とのやり取りで大切にしていることは何ですか。

正式な納品前に、数十秒程度の短いサンプル映像をお送りし、仕上がりイメージを確認していただいた上で、お振込みいただき、納品する形を取っております。これは、私とお客さまの相互が納得した上で進めることが必要かつ重要なことであり、満足度の高い結果に繋がると考えているからです。

起業を経験したからこそ見えてきた、これからの選択

――今後、この会社をどのようにしていきたいと考えていますか。

この会社はあくまでも一つの目的でなく、手段だと考えています。そのため、数年以内には解散します。起業を実際に経験したことで、想像を超える大変さ及び不安さを感じるとともに、自営業者という立場に立たなければ視えなかった視点、責任の重大さ、達成感等を、自らが肌で体感するという経験は非常に大きいなものであると思っております。正直、これまでの人生の中で一番大変な時期ではありますが、将来の糧になるはずだとポジティブに考えておりますので、この経験が、将来どの道に進むとしても必ず活きてくると信じています。

――映像制作との関わり方は今後変わりますか。

映像制作は趣味として続けていきたいですね。私の場合は、好きなことを仕事にすることによって、反対に義務に感じ、苦しいと思う場面も少なからずはあることに気づきました。ただ私の中では、映像制作という分野に関してだけは絶対に嫌いになりたくないとの思いが強く、今後も専らこの感情は変わらないものだと確信しています。そのため、趣味という娯楽の範囲で楽しむことがベストなのかなと感じました。また将来的に映像制作という職に進むとしても、正社員やアルバイトのような従業員として従事するかと思います。

日常を整える習慣と心をリセットする時間

――日々のリフレッシュ方法を教えてください。

絵描き、アニメ鑑賞、バドミントン、AI、読書、音楽、登山、散歩、日記、コーヒーです。私の場合は、体力維持として、また、精神衛生の保持として、学校の日以外はほぼ毎日散歩をしています。少しの時間も無駄にしたくないと考えているからです。また日記は、今年4月18日から欠かさず毎日書いています。おかげさまで8ヶ月以上現在に至るまで続けられています。日記のメリットは、自分の気持ちや考えを文字として書き出すことによって、気持ちが安定し、問題解決にも早期に繋がる点及び自分自身のことを客観的に視れる点だと思います。

――その時間はご自身にとってどんな意味がありますか。

前述通り、自分自身のことを客観的に振り返る時間になっています。散歩で近くの公園に寄り、ベンチに座って缶コーヒーを飲みながら、日記を書き、一日を整理することで、気持ちを切り替えていますし、唯一の楽しみと言っても過言ではありません。(笑)

これからも、起業を通じて得た大きな経験のひとつひとつを大切にしながら、自分自身の将来と向き合い続けていきたいと考えています。私は自営業者である反面で、単位制高等学校の学生としての生活を送っている身分です。早いうちに始めたからこそ感じた迷い・不安、そして「起業すれば良かった」というやらなかったことに対する後悔をせずに済んだことも含めて、成功も失敗もすべて「自己投資」として受け止め、焦らず自分なりの道を選び取っていくつもりです。

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