糸一本に宿る“推し”の物語──アトリエとんからりんがひらく、新しいはたおりの世界

アトリエとんからりん 代表 織姫あざみ氏

古くから伝わる「はたおり」に、現代のカルチャーである“推し活”やアニメの世界観を重ね合わせ、新たな作品づくりに挑むアトリエとんからりん。代表の織姫あざみさんは、歌手として活動する一方で、心の奥から湧き上がるように「はたおり」と出会い、2024年3月に個人事業として本格始動しました。糸1本から選び抜くオーダーメイドの作品づくりと、独自の感性が生み出す未来像について伺いました。

はたおりに込める理念と、アトリエの現在地

──現在の事業内容と大切にしていることを教えてください。

アトリエとんからりんは、私1人で運営している個人事業で、はたおり作品の製作・販売を中心に活動しています。糸1本から配色や素材を選び、オーダーメイドでマフラーやストール、帯、小物などを制作しています。量産はできませんが、その方だけの“唯一の一枚”を作れることが最大の強みです。

最近では“推し活”の世界観をはたおりに落とし込み、推しカラーや思い出を布に織り込む作品も多くご依頼いただいています。家族の色、ペットの色、好きなキャラクターの色……身につけるだけで気持ちが明るくなるような、日常を少し潤すアイテムを届けたいと思っています。

電撃のような“出会い”が人生を動かした

──経営者として歩み始めたきっかけは?

1年半ほど前、はたおり作家として活動している女性と出会い、体験として織り機を触らせてもらった瞬間、“これ知ってる気がする”と思ったんです。初めてのはずなのに馴染みすぎて、まるで思い出すように手が動きました。衝動が止まらず、『これをやらずに歳を重ねたら後悔する』と確信し、機材を購入して始めました。

元々は歌手として約15年以上活動してきましたが、今後の人生の軸をもう一つつくりたいという思いも重なりました。はたおりと歌、どちらも自分の表現なので、将来的には両方を掛け合わせた活動も構想しています。

──印象に残った出来事はありますか?

自分のステージ衣装として織った作品を身につけた際、それを見たアーティスト仲間が“私も欲しい”と言ってくれたことが大きな励みになりました。そこからオーダーが広がり、ファンの方が小物を購入してくださるなど、手触りや一点ものの良さが目の前で伝わっていく瞬間は本当に嬉しかったです。

アニメとのコラボで広がる未来

──今後挑戦したいこと、描いている未来は?

大きな挑戦として、来年の『新世紀エヴァンゲリオン』30周年イベントに出店し、公式ライセンスのはたおりグッズを販売します。作品のキャラクターや機体の色を織物に落とし込むのは、オタクとしてもクリエイターとしても本当に胸が熱くなる経験です。2026年まではオンライン販売も許可されていますので、多くの方に届けたいと思っています。

将来的には、映画やアーティストの衣装制作、舞台挨拶での着用など“公式の一枚を織る”仕事にも挑戦したいと思っています。また、体験会や教室、インバウンド向けのアクティビティなど、はたおりを身近に感じてもらえる場づくりにも力を入れていきたいです。

日常の中にある“推し活”と、“整う”時間

──趣味やリフレッシュ方法について教えてください。

正直、最近は趣味と仕事が掛け算になってきているので、純粋に趣味と言えるものはあまり多くないのですが、その中でも大きいのはインドアな趣味である“VTuberの配信を愛でること”です。

アニメも昔から大好きなのですが、VTuberさんの魅力は、画面の向こう側にリアルタイムで“人がいる”ことだと思っています。テレビの向こう側の感覚なのに、双方向でやりとりができる。そこが新しいジャンルとしてとても面白いと感じています。

最初は“時代に取り残されないように”という勉強のつもりで見始めたのですが、気づいたらすっかりハマっていました(笑)。

今の若い世代はTikTokなどで数秒の動画を瞬時に評価する文化がありますが、その“リアルタイム性”や“テンポ感”は、私のものづくりにも大事な視点だと思っています。なので、最近は作業しながらVTuberさんの配信を流していることが多いです。

──インドア以外のリフレッシュ方法はありますか?

もう一つは本当にひねりがないのですが、“散歩”が大好きです。
近所を歩いたり、旅行先でも予定を決めずに気の向くまま散策したり、とにかく足を使って歩くことが好きです。

歩いていると脳がすっきりして、いちばん“整う”感覚があります。アイデアが浮かんだり、悩みがほどけたり、気がつくと心が軽くなっていることが多いですね。

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