自然と向き合う時間を事業に変えるという経営の選択

株式会社GREEN MOUNT 代表 加藤 朗史氏

かつてサーフィンという自然との対話を軸に、企業で店舗運営やインストラクターとして現場に立ちながら学びを深めた加藤朗史氏。東日本大震災を契機に「人として、どう生きるか」を問い直す旅が始まり、家族とともに屋久島へ移住した。

そこから始まったのが、自然の中で自分自身と向き合うための場づくりと、それを通じて人々と自然をゆるやかに結ぶ事業の創造です。

ガイド業を中心とした事業を立ち上げ、効率や拡大を追い求める経営ではなく、「自分と向き合う時間をつくる」ことを軸にした事業運営とはどのようなものなのでしょうか。個人事業から法人化に至った背景と、これからの展望について話をうかがいました。

自然を“家”とする事業のかたち

――GREEN MOUNTの現在の事業内容を教えてください。

株式会社GREEN MOUNTは、「自然を近くに」という理念を中心に、屋久島の豊かなフィールドを舞台にした体験を提供しています。自然をガイドするだけでなく、自然の時間の中で自分自身と向き合い、新しい視点や感覚を取り戻すための旅をデザインしています。

屋久島の山、森、川、海という多様な自然を、単なる目的地としてではなく、プロセスの中で感じながら歩くことを大切にしています。トレッキングやキャンプだけでなく、SUP(水上散歩)やSUPヨガのように五感で自然と調和する時間も提供し、心と体のバランスを取り戻す体験へと誘います。

そのプロセス自体を体験価値とすることで、旅の記憶が単なる「観光」ではなく、日常や人生へとつながる豊かな感覚へと変わっていく。そんな関係を大切にしています。

自分の足で見つけた道

――屋久島移住と企業化までの背景を教えてください。

もともと千葉を拠点に、サーフィンを仕事として自然と向き合っていました。その現場での学びは、体と環境をつなぐ最前線の実感でもありましたが、「自然の中で本質的な学びを深化させたい」という思いを強くしていきました。

震災を機に家族と屋久島へ移住し、生活そのものが自然との関わりに根ざす環境へ変わりました。工場勤務などを経験した後、自らの力ではどうにもならない現実の中で、人と自然をつなぐガイドという仕事に出合い、その可能性に大きなやりがいを感じました。

しかし体力と時間に制約のあるガイドという働き方に限界を感じる中で、「自分の時間を自分で決められる仕事のカタチ」を模索し、2013年に個人事業としてGREEN MOUNTを始め、後に法人化へと進みました。

人と自然の関係性を大切にする組織作り

――スタッフや関わる人との関係で意識していることを教えてください。

現在のGREEN MOUNTには、外注で関わるスタッフや、新たにチームに加わったメンバーがいます。また、同業者との横のつながりも大切にしています。

ここで大切にしているのは、「教える立場にならない」ということです。自身の経験や考えは惜しみなく共有しますが、誰かに同じ道を歩ませることを目的にはしていません。その人自身が自分の人生をどう描くか、その思考を支える材料と余白を提供したいと考えています。

そして、感情で人を動かすのではなく、自発性を尊重するコミュニケーションを大切にしています。これが長く健全な関係を築いていく基盤になると信じています。

体験を拡張する未来の事業像

――今後の展望や描く未来について教えてください。

ガイド業は身体と時間を使う仕事であり、年齢を重ねるにつれて自然な限界が訪れると感じています。そこで、体を使わなくても「自然を近くに」という理念を伝えられる新しい形をつくっていきたいと考えています。

その一つが、尾之間の森に佇む SNAPPEROCK という宿泊体験です。ここは1日1組限定のプライベートな空間で、屋久島の自然と共に暮らすように滞在する体験を提供します。広いデッキで焚き火を囲んだり、薪を拾って焚き火をともしたり、時間をかけてコーヒーを焙煎したり──自然のリズムを取り戻す時間は、滞在そのものが価値となる体験です。

この宿は、使い捨てのアメニティを置かず、地元の杉を使用したセルフビルドによる環境配慮設計など、地球と共生する価値観を体現しています。

さらに、屋久島へ来る機会がない方へも価値を届けたいという思いから、障害者施設や高齢者施設、企業研修などへ自然体験の本質を届けるプログラムや、映像やアート表現を通じた伝え方など、多様な形で理念を拡張していくことを視野に入れています。

ガイド・宿泊・クリエイティブといった複数の事業を通じて、「自然と向き合う時間が人生にもたらす価値」を分かち合いながら、自分自身も問いと変化を続けていきたいと考えています。

日常の中の自然との対話

――オフの日の過ごし方やリフレッシュ法は?

日々の仕事も生活も、自然の中にあるので、境界線が薄くなっています。しかし、波がある日は可能な限り海に入り、波のリズムに身を委ねることで、日々のストレスや緊張が自然と解けていく感覚を大切にしています。

草むしりや薪拾い、焚き火の準備なども、すべてが自然との対話であり、内面の静けさと感覚の芯を磨く時間です。こうした日々の営みそのものが、仕事と人生の循環になっていると感じています。

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