株式会社さいころ食堂 代表取締役 大皿彩子氏
株式会社さいころ食堂は、「誰もが同じ食卓を囲める世界」を目指して、100%プラントベースの飲食事業やプロデュースを展開しています。広告代理店から独立し、自らの信念を形にしてきた代表・大皿彩子氏に、これまでの歩みと組織運営、そして未来への展望について伺いました。
食を通じて世界をつなぐビジョン
――まず、御社の事業について教えてください。
私たちは「食」を通じて人と人をつなぐことを理念に掲げています。広告業界でキャリアを積んだ後、「もっと多くの人に関係するコミュニケーションをしたい」という想いから、食の分野に軸足を移しました。2016年に中目黒で100%プラントベースのカフェを開業し、その後はベーカリーの展開やプロデュース業へと広がっています。
現在は直営店舗の運営に加え、他社との協業や海外とのパートナーシップを通じて、より多様な人々が同じ料理を楽しめる食卓の実現を目指しています。食は国境を越える共通言語であり、その可能性を最大限に引き出すことが使命だと考えています。
広告から飲食へ――キャリアの原点と転機
――経営者になられたきっかけを教えてください。
高校時代から広告に関心を持ち、大学でも広告をテーマに学びました。広告代理店に就職して7年間勤務しましたが、ターゲットを限定する広告手法に物足りなさを感じるようになりました。「より多くの人と関わる仕事がしたい」と考えたときに、自分の人生のテーマである“人とのコミュニケーション”を食に見出したのです。
当初は一人で食に関するプランニング業を行っていましたが、「理想の食空間を自ら形にしたい」と考え、カフェやベーカリーを立ち上げました。すべてプラントベースとしたのは、宗教や文化的背景に関わらず誰もが同じ食卓を囲めることを目指したからです。
――印象に残っている取り組みはありますか。
海外展開として、ドバイのミシュラン獲得レストランと提携したことです。利益よりも「次世代へつなぐ」ことを重視し、レシピやノウハウを惜しみなく共有しました。真似されて広がっていくことこそが、自分たちの存在意義だと考えています。
主体性を育む組織づくり
――社員やアルバイトとの関係について伺います。
現在は社員が10名弱在籍しています。店づくりでは店長、ディレクター、シェフに大きな裁量を与え、それぞれが自分の店として責任を持てる環境を整えています。食は作り手の人柄が出るため、現場の自由度を高めることが店の魅力につながると考えています。
社員採用では「倫理観」を最も重視します。人を悲しませない、感謝を忘れないといった基本的な価値観を持てるかどうか。さらに、仕事と人生を切り離さず、楽しみながら取り組める姿勢も大切にしています。社員やアルバイトとは家族のような関係であり、休日でも一緒に畑へ出かけるなど、生活と仕事が地続きになっている点が特徴です。
また、社員一人ひとりが「食で何を実現したいか」を語れるようになることを大切にしています。経営者だけでなく現場の声がそのまま会社の方向性につながるよう、会議や日常の雑談でも積極的に意見を交換しています。そうした小さな積み重ねが、組織全体の成長を支えています。
食の未来とこれからの挑戦
――今後の展望について教えてください。
私たちは単に店舗を増やすことを目指していません。大切なのは「どんな人でも共に囲める食卓」というコンセプトを広げていくことです。今後は農業や流通など食に関わる仕組みにも挑戦していきたいと考えています。農家と都市をつなぐ仕組みづくりや、新しいサービスの構築など、食の未来をより豊かにする取り組みを模索中です。
国内外で同じビジョンを共有できる仲間と協働し、仕組みそのものを変えていく挑戦を続けていきます。規模の拡大よりも、理念に共感する人が増えていくことこそ、さいころ食堂の成長の証だと考えています。
走り続けることで見える景色
――プライベートでのリフレッシュ方法を教えてください。
毎朝ランニングをしています。30分ほど走るだけで頭がすっきりし、前向きな思考に切り替えられます。経営には悩みも多いですが、体を動かすことで自然とポジティブになれるので、欠かせない習慣になっています。
ランニングを続けるように、一歩一歩積み重ねながら世界中の人々をつなぐ食卓を実現していきたいと思っています。

