定年後に法人設立を決意──知の蓄積で挑む“第二の経営人生”

Yuki H1合同会社 社長(CEO 平井 信行 氏

定年退職を機に、長年の公務員キャリアから一転。税務調査や不正防止、教育・コンサルティングの経験を生かして「Yuki H1合同会社」を立ち上げた平井代表。アメリカやイギリスの大学院でのMBA講師としての顔を持ち、国内外で“学びの循環”を生み出す平井氏に、創業の経緯や今後の展望を伺いました。

4つの柱で構成される多角的な経営支援

──まずは、事業内容について教えてください。

弊社は大きく4つの柱を掲げています。一つ目がセミナー・研修・講師事業です。現在、アメリカ・マサチューセッツ州立大学大学院のMBA講師として財務会計を教えたり、また、過去には東北大学で教養課程の講義を担当したりしたこともありました。また、公認不正検査士(CFE)として大手専門学校で質問解答講師を務め、不正防止やコンプライアンス教育にも力を入れています。さらに、日本語教師資格も活かし、ベトナム人技能実習生への日本語教育も行っています。

もう一つが経営コンサルティング事業。税務・財務・コンプライアンスを含めた総合的な経営支援を行っています。三つ目が税務調査対応。公務員時代に培った調査経験を活かし、企業顧問としてのサポートも提供しています。そして最後に財務監査事業。上場企業の社外監査役としても関与し、経営の健全化に貢献しています。

定年後は、自分のやりたい仕事を

──創業のきっかけはどのようなものでしたか?

定年退職を機に、“自分のやりたい仕事をしたい”と思ったことが大きな動機です。再雇用という選択肢もありましたが、それよりも、自ら法人を立ち上げて自由な発想で動きたいと考えました。教えること、伝えることは昔からの夢でもあり、それが今、実現できていることに大きなやりがいを感じています。

一人で挑む、信頼ネットワーク型の経営

──現在の組織体制について教えてください。

基本的には代表である私ひとりで運営しています。リスクを最小限にしながら、自分のペースで事業を進めるスタイルです。ただ、相続など専門領域によっては、信頼できる専門家と業務委託契約を結び、ネットワーク型で対応しています。信頼を基盤に、質の高いサービスを維持することを大切にしています。

一人で経営を担うというと孤独な印象を持たれがちですが、実際には「ひとりで全部を抱える」という意味ではありません。むしろ、自らの判断で最適なパートナーとつながり、柔軟にチームを組成できる点が強みです。

案件の規模や領域に応じて、公認会計士・税理士・司法書士などの専門家と連携しながら、ワンストップで課題解決に取り組む。その都度、最適な布陣を整える“プロジェクト型経営”が、自社の特徴だといえます。

講師業を軸に、次世代へ“学び”を広げる

──今後の事業展開についてお聞かせください。

今後は講師業をさらに強化していきます。昨年は近畿税理士会から依頼を受け、国際税務に関する研修を担当しました。今年も日本税理士会連合会主催の全国統一研修会で、リアル・収録の各5時間の講義を税理士に対し行いました。こうした機会を通じて、“正しい知識”を次の世代へ伝えることが私の使命だと思っています。

単に知識を教えるだけでなく、「現場のリアル」を伝えることを意識しています。税務や会計の世界は法改正のスピードが早く、実務の現場では常にアップデートが求められます。教科書的な知識だけでなく、実際の現場でどう判断し、どう対応すべきかを伝えることが、本当の意味での“学び”だと思うのです。

こうした実践的な講義は、受講者からも「即戦力になる」「現場の判断軸が明確になった」と好評を得ています。研修後に「今後も継続的に学びたい」という声が届くことが、何よりの励みになります。

自分の経験や失敗も含めて伝えることで、次の世代の専門家がより早く成長できる。それが業界全体の底上げにつながると思っています。

無理をせず、着実に前へ

──最後に、読者へのメッセージをお願いします。

私は60歳からの挑戦として会社を立ち上げました。人はいつからでも、何歳からでも学び直せるし、新しい挑戦ができると思います。これまでの経験を生かしながら、社会に貢献し、自分のペースで進んでいく。そんな生き方を今後も続けていきたいです。最後に私の座右の銘は、「時間は有限!努力は無限!後悔は永遠!」です。

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