多材質ダイカストで現場を支える――富士ダイカストが描く「開発から寄り添うものづくり」

富士ダイカスト株式会社 代表取締役 櫛田 雄基氏

創業約60年の歴史を持つ富士ダイカスト株式会社。3代目の櫛田雄基氏は、アルミだけでなく亜鉛や真鍮など多材質のダイカストに対応し、開発段階から材料提案まで担う体制を築いてきました。受け継いだ技術を、いかに次の世代へと手渡していくのか。真摯に向き合い続ける櫛田氏の経営観と、その先に描く富士ダイカストの未来に迫ります。

多材質で挑戦する「材料提案」という強み

――事業の特徴を教えてください。

ダイカストはアルミが基本で、現在はADC12が主流ですが、当社はADC12以外も常に扱っており、ADC3、ADC5などにも対応しています。さらに亜鉛ダイカストも社内ででき、一般的なZDC2だけでなく、耐摩耗性を良くした材料や、亜鉛にアルミが27%入ったZA27も鋳造できます。

加えて真鍮ダイカストも社内で行っており、真鍮の規格の一つであるCAC203を使っています。真鍮ダイカストは日本でも5社くらいしかやっていないのではないかと思います。材料だけで常時10種類ほど扱っており、これを特徴として前面に出していきたいですね。

――開発段階からの関与も強みだとか。

開発の段階から関わると、この用途ならこの材料が良い、と提案できる幅が広いと思います。同業より言えることがあるのは、材料の知見を積み重ねてきたからです。

受け継ぐ覚悟を支える3代目としての原点

――櫛田様は事業を引き継がれた形でしょうか。

はい。父から引き継ぎ、現在3代目です。戦争から帰ってきた祖父が会社を立ち上げました。もともとダイカストの仕事に携わっていて、「会社に使われるよりも自分でやった方がいい」という考えだったのだと思います。祖父が49歳、父が19歳のときに、祖母も含めた3人で立ち上げたそうです。

――社外で修行してから入社されたそうですね。

大学卒業後、金型屋さんに1年間修行に行き、翌年4月から自社に入りました。小学校の頃から手伝いはしていましたが、ダイカストの仕事で一番重要なのは金型です。父から「金型屋がいい」と勧められ、金型の構造や、どうしたらどうなるのかを学ぶために行きました。

変化の時代に挑む新たな3本柱

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

今後は、AI技術・工事案件・アプリケーション開発の3本を軸に展開していきたいと考えています。

AI分野では自社開発のシステムをさらに改良し、顧客ごとの課題解決に役立てていきます。工事案件では、大学施設のシリーズ化されたプロジェクトを継続的に受注し、信頼を積み重ねていく計画です。さらに、これまでの経験を活かしてアプリケーション開発にも注力していきます。

AIやITの進化によって業界は大きく変わっていきますが、会社としての立ち位置を見極めながら、挑戦を続けていきたいです。

対話と整備で組織を支える

――組織運営で意識していることを教えてください。

10人ほどなので普段から話せますが、毎朝8時に朝礼をし、9時にパートさんが来るので9時にも朝礼をします。不具合やクレームがあれば翌朝必ず全員に共有し、改善策を話します。毎月月末には全員参加のミーティングも行います。

土曜日の出勤日には、30分早めに機械を止めて全員で掃除をします。油漏れなど普段気づかない点に気づけますし、作業中はお喋り禁止でも、掃除の時間は少し会話が生まれています。

働く環境を整え、未来を描く

――今後、実現したいビジョンはありますか。

ダイカストはアルミを700度で溶かすので工場内が熱い。ここ数年、夏が本当に暑くて、空調が効かないので窓を開けて扇風機や換気扇、スポットクーラーぐらいでしか涼を取れません。材料を溶かすところから熱が漏れないような設備を、どこかで開発してもらって、他の会社と同じぐらい空調が効く工場で働けるようにしたいです。

それから、今は3Dプリンターが世界的に主流になっています。熱があまり出ないメリットがあるので、将来的には工場に3Dプリンターを100台、200台並べて作るかもしれません。そんな変化も頭に入れながら、作業員が快適に働ける環境を整えないと、新しい人が入ってこなくなる業界になってしまう。そこは大きなテーマですね。

人と縁で気持ちを整える

――最後に、リフレッシュ方法を教えてください。

今55歳ですが、草野球をやっています。高校の同級生など、50代の仲間とやるのがリフレッシュになりますし、終わった後の飲み会も楽しいですね。あとは、子どもが小中のときに入っていた「親父の会」の仲間と、OBになっても集まったりします。

それから毎週日曜日は、妻と一緒に歩きます。近所を1時間くらい、喋りながら歩く時間が良い息抜きになっています。

材料も技術も、現場も人も、一気に変えられるものではありません。だからこそ、毎朝の共有や掃除の手を止めないように――働く環境とものづくりの未来を整えていきたいと思います。

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