220年の歴史を次世代へ――老舗が守り続けるもの、変えていくもの。

有限会社ワタヤ商店 (人形のわたや) 代表 西村 和浩氏 (九代目 綿や善兵衛)

江戸時代から続く老舗として、220年以上にわたり地域とともに歩んできた有限会社ワタヤ商店(人形のわたや)。栃木県真岡市で節句人形や提灯を扱いながら、時代の変化に合わせて新たな挑戦を続けてきました。9代目として事業を継承した西村和浩氏は、伝統を守るだけではなく、次世代へとつなぐバトンとしての役割を自らに課しています。本記事では、同社の歩みや大切にしている価値観、そしてこれから見据える未来について話を伺いました。

220年以上続く老舗として受け継がれてきたもの

――事業内容を教えてください。

当社は、雛人形や五月人形、羽子板、破魔弓、盆提灯などを扱うお節句人形・提灯の専門店です。

創業は江戸時代までさかのぼり、栃木県真岡市の地で220年以上にわたり現在も「商い」を続けています。お節句人形及び盆提灯を中心に、地域の方々の暮らしや伝統行事に寄り添うカタチで事業を続けてきたことが、今につながっていると感じています。

また、神社仏閣の祭礼で使われる提灯や、四季折々に開催される地域の行事ごとに関わる仕事にも携わっており、地域の伝統文化をより身近な形で支える役割も担ってきました。

――御社ならではの強みは何ですか?

やはり一番の強みは、創業から220年以上、地元の栃木県真岡市で「商い」を続けてきたことによる「信頼と実績」になります。

私は9代目になりますが、父が8代目、祖父が7代目と、先祖代々この地でバトンをつないできました。各世代には、必ず当時の厳しい課題があり、その都度、ひとつずつその課題を、乗り越えながら積み上げてきた歴史が、今の強みになっています。

伝統を守りながら、新しい価値を生み出す挑戦

――経営者の道に進むことになったきっかけを教えてください。

元々は、大学卒業後、新卒にて大手総合人材サービス企業にて営業職を経験後、ブランドリユースの会社に転職し働いていました。設立して間もないベンチャー企業でしたので、社長室業務や人事採用など経営に近い幅広い業務を経験させて頂きました。

そんな東京での奮闘中の日々、東日本大震災が起こり、実家である「わたや」の店舗が甚大なる被害を受けました。

同時に高齢の祖母の体調不良も重なり、「帰るならこのタイミングしかない」と腹をくくりました。

そこから、9代目として事業を継ぐために戻ってきました。

――9代目として、どのような使命を感じていますか?

お節句(雛人形・五月人形)に縛られず、日本の伝統文化をもっと幅広い形で展開していきたいと考えています。新たなチャレンジとしては、九代目 綿や善兵衛として、着物を含めた和装文化をよりカジュアルに活用した新しいカテゴリー領域として「WATAYA」としての新たな「価値創造」を育てていく。それが「自分の使命」なのかなと感じています。

そんな中、昨年の6月に大阪・関西万博にブース出展したことが、私の中で非常に大きな分岐点となりました。大阪・関西万博では、ニッポンの素晴らしい伝統文化や伝統工芸品に、こんなにも興味を持ってくださる方々が、沢山いるんだとリアルに実感できたからです。

私としても、地元栃木県を代表して、素晴らしい伝統文化を発信する機会を頂き、当店が実用新案を取得し制作しました、名石 大谷石を土台に制作した「わたや」オリジナルの和紙提灯をお披露目させて頂きました。沢山の来場者の皆様に「すごく素敵」と言ってもらえたことも大きかったです。ここには、まだまだ可能性がある、自分だからこそ、できるチャレンジ領域がある!!そう思える瞬間でした。

人と向き合い、信頼を積み重ねる仕事

――社員やお客様との関係づくりで意識していることはありますか?

日々の声かけを大切にしています。忙しい時ほど「今日は大変だけど頑張ろう」「気をつけていってらっしゃい」と一言添えることで、社員一人ひとりの気持ちが前向きになります。

そうした積み重ねが、自然と笑顔につながり、店舗でのお客様との接客にも、良い印象として伝わると感じています。

もうひとつ誇れることは、直近15年間で配達も含めた事故がゼロということです。私は、目配り気配りを徹底し、社員全員で意識してきた結果だと冷静に受け止めています。

これからの時代に向けて描く未来

――伝統文化を次世代につなぐために取り組んでいることは何ですか?

伝統文化を日々継承し、次の世代につなげていくことが大きな軸となります。

お節句人形や盆提灯・御祭礼に加え、和紙や地元の名石・組子細工など、地元栃木県をより身近に感じて頂ける伝統工芸品に、触れられる入口を増やしていきたいと考えています。

ニッポンの伝統文化は、一度途切れると、なかなか元には戻りません。だからこそ日常生活の中で、よりカジュアルに触れられる機会を、私は残していきたいと考えています。

――今後、どのような挑戦をしていきたいと考えていますか?

日本の伝統文化には、まだまだ可能性があると感じています。国内はもちろん、海外の方々にもその魅力を伝えていけたらと考えています。

私としては、お節句に縛られず、日本の素晴らしい伝統文化を九代目 綿や善兵衛として、

伝統工芸・そして新たなチャレンジ領域である着物を活用した和装文化・観光文化を通じて、先人の方々が、これまで積み上げてこられた日本の素晴らしい歴史と文化の奥深さや、温かさを感じてもらえるような取り組みを、これからも続けていきたいですね。

日常にある原点と、これからの歩み

――お休みの日のリフレッシュ方法や趣味などはありますか?

温泉が好きで、時間があると地元の温泉に足を運びます。湯に浸かりながら、頭の中を整理すると、新しいアイデアが浮かぶことも多いです。

また、読書も好きで、仕事に関する本だけでなく、ジャンルを問わず、幅広く読むことで、考え方の幅を広げるようにしています。

――最後に、伝えておきたいことはありますか?

私は九代目 綿や善兵衛として、伝統文化の伝道師、というと言い過ぎかもしれませんが、伝統工芸のことでお困りのことがあった時に「この人にお願いすれば安心」「この人に聞いてよかった」と思ってもらえる立場を目指しています。

もちろん、雛人形や五月人形などのお節句が、自分自身の軸としてベースにしっかりとありつつも、それ以外にもこれから、ニッポンの素晴らしい伝統文化を盛り上げるべく、沢山チャレンジしたいことがあります。

伝統は古いからこそ価値があるのではなく、誰かの暮らしの中で生き続けるから意味がある。このような感覚を持ちながら、次の世代へとしっかりとバトンを渡していける、そんな橋渡し役になれたら嬉しいです。

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