無駄をなくし、すべてを活かす――食から広がる「循環」の社会づくり
一般社団法人食べものに感謝
代表理事 小久保 恵美氏
「ヒト・コト・モノの循環を生む」というテーマのもと、食を起点に社会課題へ向き合う一般社団法人食べものに感謝。子ども食堂を原点に、食品ロス削減や地域コミュニティづくりに取り組んでいます。今後は障がい者支援や女性支援にも広げていく方針です。本記事では、活動の原点と今後の展望を伺いました。
目次
食を起点に広がる循環の取り組み
――現在の事業内容について教えてください。
「ヒト・コト・モノの循環を生む」ことをテーマに活動しています。もともとは子ども食堂からスタートしました。小さなアトリエecodecoKOBO(工房)という活動の中で、十分に食事を取れていない子どもたちに出会ったことがきっかけです。朝だけでなく前日から食べていない子どももおり、何とかしなければならないという思いから、1対1の食事支援に取り組むようになりました。
当時はまだ「子ども食堂」という言葉も一般的ではなく、「食べるアート」として火を使わない料理を伝えながら、食の大切さを届けていました。その後、活動は拡大し、現在では地域全体を巻き込んだ支援へと発展しています。
食品ロスの問題にも取り組んでいます。日本では多くの食材が廃棄される一方で、食べられない人も存在しています。この矛盾を解消するため、農家と連携し、規格外野菜などを活用しています。企業との連携も進み、「HACCO bee(ハッコビー)」という食品ロス削減の取り組みも昨年より展開しています。
また、子ども向けの壁画アート活動「地球はともだちプロジェクト」を通じて見えてきた課題として、不登校など子どもを取り巻く社会問題への支援にも取り組んでいます。
原点にある「もったいない」という感覚
――これまでのキャリアや活動の原点について教えてください。
もともとはアパレル業界にいました。倉庫には売れ残りの商品が大量に積み上がり、ゴミの山のような状態になっている現場を経験しました。そうした光景が、現在の活動の原点になっています。
その後、海外での生活を経て日本を見つめ直し、帰国後は会社員を経て雑貨屋でのものづくりに携わるようになりました。やがて個人でもジュエリー制作を始め、「循環を生むジュエリー」をテーマに創作作家活動もしています。
さらに、子ども向け講座をきっかけに
〜ゴミをゴミとしないART〜「ecodecoKOBO」としてアート活動をスタートしました。「ゴミをゴミとしない資源である」という価値観を伝えてきた経験が、現在のすべての活動につながっています。
循環という価値観と社会課題
――大切にしている価値観は何でしょうか。
すべては「循環」です。物だけでなく、人も同じだと考えています。社会の中でうまくいかない人がいたとしても、それで終わりではありません。必ず別の場所で活躍できる可能性があります。そうした可能性をつないでいくことが重要だと思います。
――その考えに至った背景や、活動の中で見えてきた課題について教えてください。
子ども食堂を始めた当初は、「食べられない子どもを支えたい」という思いが中心でした。しかし活動を続ける中で、問題は食だけではないと気づきました。
経済的な貧困に加え、家庭環境や孤独といった「心の貧困」も深刻です。食事はあっても一人で食べている子どもや、家族で食卓を囲めない家庭が増えています。
また、高齢者の孤独も同様です。現場では、冷蔵庫に何も入っていない方や、買い物に行けない方もいます。そうした現実から、「誰かと一緒に食べる居場所」の必要性を強く感じました。
そのため現在は、子ども食堂にとどまらず、地域全体で支え合うコミュニティづくりへと活動を広げています。家族でなくても、一緒に食事をすることで人は元気になります。
さらに、不登校の問題も深刻化しています。学校に通えない子どもが増え、その先に孤立してしまうケースも少なくありません。
こうした状況から、食だけでなく、人が関われる居場所や機会をつくることの重要性を感じています。
地域のつながりは、災害時にも支えになります。日常から関係性を築くことで、いざというときに助け合える環境が生まれます。現在は各地域の活動に対し、継続できる仕組みづくりも支援しています。
食品ロスを減らす循環の取り組み
――現在注力されている取り組みについて教えてください。
現在、食品ロスを減らす取り組みに力を入れています。農家や企業と連携し、まだ食べられる食材を必要な人へ届けていますが、大切にしているのは、それを一度きりで終わらせないことです。
食材が無駄にならず、必要な人に届き、次へと活かされていく。その流れをつくることが重要だと考えています。
「HACCO bee(ハッコビー)」は、そうした循環を生む取り組みです。企業から提供された食品を届けるだけでなく、その先でも活用されることで、無駄のない状態を生み出します。
名称には箱×運ぶ×「bee(蜂)」の意味を重ねています。蜂が四方八方に広がるように、受け取ったものが周囲へと広がっていく――そんな循環をイメージしています。
また、この取り組みは企業側にとっても、廃棄コストの削減につながります。大きな企業が動くことで、日本全体の意識も変わっていくのではないかと感じています。
食べ物が無駄にならない社会になれば、多くの人が助かり、笑顔も増えます。物価が上がっている今だからこそ、こうした取り組みには大きな意味があると考えています。
人の価値を生かす新たな挑戦
――今後の展望について教えてください。
今後は、障がい者支援や女性支援にも力を入れていきます。障がいがあっても高い技術や感性を持つ方は多く、その価値が十分に活かされていない現状があります。きちんと給料として還元される仕組みをつくっていきたいと考えています。
また、自身の経験からシングルマザーなど孤立しやすい環境にある女性への支援にも取り組んでいきます。
さらに、地域コミュニティについても、ボランティアにとどまらず事業として成立させていくことを目指しています。補助金に依存せず、自立して継続できる仕組みを支えていきたいと考えています。
日々のコンディションの整え方
――活動を続ける上で、ご自身のコンディションはどのように整えていますか。
健康を保つうえで一番大切にしているのは、「腸をきれいにすること」です。普段から野草や海藻など、繊維質なものを取り入れるようにしています。体の中の循環を整えることが、心や思考の安定にもつながると感じています。
以前、妊娠をきっかけに体重が増えた時期がありましたが、食生活を見直し、体の内側から整えることで大きく改善しました。今では自分で体をコントロールできるようになっています。
人の体は変えられるものだと思っています。土と同じで、循環を整えれば健康も取り戻せる。だからこそ、自分自身の状態を整えることも、活動を続けるうえで大切にしています。
「循環」が生み出す未来
――これからどんな社会にしていきたいと思っていますか。
2026年春、新天地へ移住しました。千葉県いすみ市です。海山川があり自然豊かな里山広がるこの場所で生かせる事は正に生きるために必要な循環を意識した生活のモチーフを作り出す事です。
その為に、自社が関わる焙煎士が生み出す珈琲豆を活かした土づくりにも励んでいます。
無駄を減らし、すべてを活かしていける社会になれば良いと思っています。
食べ物だけでなく、ヒトとコトも同様にです。
私は105歳まで生きると決めているんです。長く生きること自体が目的ではなく、その先の未来を自分の目で見たいという思いがあります。
時代は必ず変わっていきます。その中で、自分もその変化の一部として関わり続けていきたいと思っています。