“バショ(地域)”と“ヒト”、そして“モノ”の価値をつなぐ――RECLO villageが描く倫理的循環のかたち
RECLO village 代表 片山 裕平氏
地域の魅力を引き出しながら新たな価値を創出するRECLO villageは、飲食と物販を軸に、地域活性化に取り組んでいます。本記事では、将来的には生産にも踏み込み、地域に根ざした循環型の事業を目指しているという代表の片山裕平氏に、現在の事業内容やその背景にある想い、今後の展望などについて伺いました。
地域資源を活かす“飲食×物販”の取り組み
――現在の事業内容について教えてください。
現状は、飲食と物販を同じ施設のなかでお楽しみいただける場として「LOCASSE TAMBA」を運営しています。お客様に食事を楽しんでいただく場であると同時に、モノを手に取っていただける空間としても機能させているスタイルです。
今後については、さらに一歩踏み込んで、生産の領域にも関わっていきたいと考えています。すでに別の場所で畑づくりを進めており、将来的には生産・加工・販売までを一貫して行う、いわゆる六次産業の形を目指しています。
いずれにしても、前オーナーから引き継いだ「地域を活性化する」という大きなテーマ自体は変わっていません。その想いをベースにしながら、自分なりに事業の幅を広げていければと考えています。
――ほかにも特徴はありますか。
神戸でもう一店舗、「Recro」という店を運営しています。そこではジーンズのリペアと飲食を組み合わせた業態を展開しており、リペアを通じて「モノを長く使う」という価値観を発信しています。単に直すだけではなく、その背景にあるストーリーや愛着も含めて大切にするという考え方です。
また、この施設では愛犬の同伴来店が可能で、週末になると多くのお客様がペットと一緒にご来店されます。ドッグカフェのような感覚でご利用いただいているお客様が非常に多い印象です。人だけでなく、家族の一員であるペットとも一緒に時間を過ごせる場所として受け入れていただいている点は、特徴の一つだと感じています。
“倫理的世界観の循環”を生み出すために
――事業に込められた想いについてお聞かせください。
共通して掲げているのが、「倫理的世界観の循環を創造する」というテーマです。少し抽象的に聞こえるかもしれませんが、モノや食に対する向き合い方を見直すきっかけをつくりたいという想いがあります。
例えばジーンズのリペアであれば、「壊れたら捨てる」のではなく、「直して使い続ける」その過程でモノへの愛着が深まりますし、「大切にする」という意識が自然と生まれてきます。
同じように、飲食の分野でも、生産側に関わることで「この食材がどれだけ手間をかけて作られているのか」ということを実感できるはずです。特に飲食は、日常に近い分、価値観を伝える手段としても大きな役割があると思っています。そうした気づきを通じて、食べ物やモノに対する見方が変わっていく――その積み重ねが、倫理的な価値観の循環につながると考えています。
家族と縁がつないだ経営への道
――この道に進まれたきっかけを教えてください。
飲食の経験はもともと少しだけあったのですが、直接的なきっかけとなったのは、父の存在です。
2018年、父が長年経営してきた古着屋が倒産しました。その流れのなかで「ジーンズをリメイクしてほしい」という話があり、そこからリペアの仕事を始めたのがはじまりです。2019年ころからは、昼間にジーンズのリペアをしながら、別の仕事も並行して続ける形で活動していました。
――現在の施設を引き継いだ経緯についてもお聞かせください。
この施設には父が物販で関わっており、オーナーとも家族ぐるみのつながりがありました。オーナーが運営をやめるタイミングで「誰かやらないか」という話が出た際に手を挙げたのが、私です。その結果、引き継ぐことになりました。
ハンバーガーショップで働いた経験はなく、本当に突然のスタートでしたが、新しいことに挑戦する機会として前向きに捉えました。
――経営において譲れない軸は何でしょうか。
判断の基準としているのは、「倫理的かどうか」です。
これまでの経験のなかでは、必ずしも倫理的とはいえない形で利益を得るような場面も見てきましたし、私自身もそうした環境にいた時期もあります。だからこそ今は、「これは倫理的かどうか」という視点を大切にしているのです。
たとえ利益が見込めることであっても、違うと感じたものには手を出さない――その基準を、日々の行動や意思決定の軸にしています。
“長所を伸ばす”組織づくり
――組織運営で大切にしていることは何ですか。
長所を伸ばすことです。以前はできていない部分を指摘することが多かったのですが、それではうまくいかないと気づきました。私自身がそうした環境で育ってきた影響もあり、無意識に同じような関わり方をしていたと思います。
ただ、それが今の時代に合っていないと感じるようになり、考え方を変えました。今はスタッフそれぞれのよい部分に目を向けて、そこをどのように伸ばしていくかということを意識しています。対面で話すときも、できるだけ前向きなフィードバックを心がけています。
――どのような人と一緒に働きたいですか。
自分にない部分を持っている人です。一人でできることには限界があるため、それぞれの強みを持ち寄り、補い合えるチームが理想だと思っています。
また、自分がしんどいと感じることにも向き合える人も、貴重な存在です。楽なことだけでなく、大変なことにも取り組める姿勢を持っている人と一緒に働きたいと考えています。
向き合うべき課題と、広がる挑戦
――現在の課題と、今後の展開についてお聞かせください。
課題はさまざまあるのですが、特に感じているのはスタッフの育成についてです。日々の動きや基本的な業務について、まだ十分に共有できていない部分があります。
これまでは自分の動きを見せることで伝えてきたつもりでしたが、それだけでは不十分だと感じています。今後は、業務をしっかり言語化し、マニュアルとして整理していく必要があるでしょう。
現在のスタッフはもともとの知り合いが多く、関係性が確立している分、伝えづらさも感じています。そのため、今後は誰が入ってきても働きやすい環境を整えることが重要です。
事業面では、メニューの幅も広げていく予定です。現在はハンバーガーが中心ですが、地域の食材を活かしたプレートメニューの開発を進めています。敷地の広さを活かしてバーベキューの導入も検討しており、冬には鹿やイノシシを使ったジビエ料理の提供も視野に入れています。
また、この施設は前オーナーがほとんどDIYで作り上げたものなのですが、その影響もあり、私もゼロから空間をつくることに挑戦してみたいと思っています。将来的には別の土地、できれば他府県や海外でも同じような施設をつくってみたいです。
特にアメリカは、父の仕事の関係で何度か訪れたことがあり、文化的にも魅力を感じている場所です。ハードルは高いですが、いつか実現できればと思っています。