中小企業を支える知財パートナー――出願から補助金活用まで伴走する弁理士の挑戦

髙井総合知的財産事務所 代表・弁理士 髙井 智之氏

髙井総合知的財産事務所は、中小企業を中心に、特許・商標などの知的財産権の出願サポートを行う事務所です。代表の髙井智之氏は、弁理士として15年にわたり知財実務に携わり、現在は行政書士も兼任し、知的財産権取得に関する補助金申請サポートにも取り組んでいる「二刀流」の士業です。本記事では、事務所の特徴やこれまでのキャリア、今後の展望について伺いました。

中小企業に寄り添う知財サポート

――事務所の概要や支援内容について教えてください。

当事務所は現在、従業員を雇う形ではなく、私一人で運営し、分野によって外部の専門家と連携しながら案件に対応する体制をとっています。小規模事務所ではありますが、その分フットワーク軽く動けるのが特徴です。お客様は中小企業が中心ですが、それなりの規模を有する企業とも、お取引させていただいております。

弁理士は、新しい技術・デザイン・ブランドなどの「知的財産」――すなわち、皆様の独自の商品・サービスの強みを競合相手による模倣から守る専門家です。例えば、商品・サービスを提供し続けることができるのも知的財産が特許権・実用新案権・意匠権・商標権によって守られているからですが、これら知的財産権の出願・取得のサポートをするのも弁理士の仕事の1つです。

弁理士として知的財産権の出願・権利等の業務に携わる一方で、行政書士として知的財産権取得に関する補助金申請のサポートも行っています。特許や商標の出願・登録費用は、中小企業にとっては決して小さくない負担ですが、そうした補助金を活用しながら、中小企業の知財への投資を後押しできるようにしています。

また、外国出願の経験もあり、海外での権利取得を目指すお客様にも外国の弁理士事務所と連携しながら対応できる体制を整えています。連携の力も活かしながら、できるだけ幅広いニーズに応えられるようにしています。

弁理士としての歩み――独立の背景とターニングポイント

――弁理士を志したきっかけは何でしたか。

理系出身者の多い弁理士ですが、私自身は、文系学部(法学部)の出身です。両親はともに教員を務めていました。その両親の姿を見て育ったので、子どもの頃は自分も教師になるものと自然に思っていました。

ただ、「人に知識を教える」ことも素晴らしいことですが、私の中では「人に知識を与えながら知識で人を助ける仕事をしたい」という思いが強くなっていきました。その中で選択肢として選んだのが法律系の仕事でした。「法律家」といえば弁護士や司法書士がまず挙がりそうですが、「新しい発明が生まれたから特許を取る」、「新しいブランドを立ち上げるから商標登録する」といった前向きな企画や構想に関わることができる弁理士に魅力を感じ、この道を選びました。

――独立までの過程や背景を教えてください。

大学院在学中に弁理士試験に合格し、東日本大震災の直後に都心の弁理士事務所に入りました。5〜6名くらいの規模の事務所で、特許等の実務を習得しました。

最初の転機は、弁理士になって6年目の時です。この頃、所属事務所の代表に就任したのが弁理士事務所経営者としての出発点でした。事務所経営に携わりつつ、大企業の案件や外国案件も多く扱わせていただき、貴重な経験を積むことができました。一方で、大企業を相手に仕事をする大変さも強く実感しました。

令和2年頃、複数のクライアントから特許案件の依頼を打ち切られるという事態が続きました。自分の知らない間に、ある企業との取引が解除されていたこともあり、「自分は世の中から必要とされていないのではないか」と強い孤立感を感じたこともありました。

ただ、同時に味方になってくれる人たちや、今後も私に依頼をしたいという方々もいました。その方々とは、現在も良好な関係が続いています。

そうした経験を通じて、「経済や産業の発展に資することを使命とする弁理士の多くが大企業の方向ばかり向き、日本の9割以上を占める中小企業のことを顧みなければ、中小企業が置き去りになってしまうのではないか。そうなってしまえば、日本の産業力は低下し、ひいては国力も低下してしまうのではないか」と考え、中小企業やスタートアップを支援する弁理士事務所をつくりたいという思いが強まりました。

そして、令和3年に立ち上げたのが、現在の当事務所です。「今が“どん底”だとしたら、後は這い上がっていくしかない」という思いの再スタートでした。それは、かつての事務所運営における様々な変転・苦境を乗り越え、自分自身の精神的再建を果たす旅の始まりでもありました。

弁理士の仕事を通じて世の中を豊かにしたい

――今後の展望をお聞かせください。

「自分が関わった案件が社会の役に立ち、その結果、世の中が豊かになること」を大切にしたいと考えています。例えば、複数の鉄道会社の車両に設置されている防犯カメラには、私が依頼を受けて特許に導いた技術が使われています。

このように自分が弁理士として携わった技術が社会に広まる事例を通じて、社会に貢献していきたいと考えています。

また、日本弁理士会の活動の一環で高校や国立高専における講演にも取り組んでいますが、これから社会に出る方々に知的財産や弁理士を身近に感じていただけるよう、この活動も今後も継続していきたいです。

今後も、敷居は低く且つ品質の高い弁理士サービスを提供するため精進してまいります。

――業界の未来について思うことはありますか。

弁理士を目指す人が減っている傾向があると感じています。もし、その背景に、悪い意味での「徒弟制度」のような働き方や、「ブラック」と評されてもおかしくない労働環境が残っている点があるとすれば、それは、弁理士業界自身が自分自身の魅力度を下げているのではないかと感じます。

さらに、インターネット上には低価格を打ち出す弁理士事務所を見受けますが、安さだけで弁理士を選んだ結果、「思っていた内容と違った」というような思いをされているユーザーも少なからずいらっしゃるのではないかと考えます。

弁理士は公益性の高い仕事ですが、決してボランティアではありません。自らの知識と時間をリソースとしてサービスを提供する知識労働者です。本来は、適切な対価をいただきながら品質の高いサービスを提供することが、弁理士業界全体の価値向上につながるはずです。将来的には、弁理士側が自分たちの価値に見合った価格設定をしやすくなり、それを弁理士業界全体で後押しできるような環境が整備されることを願っています。

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