環境と労災の両面から技術を磨く。大北氏が語る、自動化と地盤改良への一貫した視点
株式会社大北耕商事 代表取締役 大北 耕三 氏
繊維産業の排水規制対応から始まり、タオルという地場産業、食品工場の機械設計、潤滑剤の充填機、さらに軟弱地盤を対象にした技術開発まで、大北氏はさまざまな産業分野で機械と技術の開発に携わってきました。その根底にあるのは、単なる効率化ではなく、環境負荷の低減と労災防止を両立させたいという考え方です。今回は、現在の事業の考え方からこれまでの歩み、組織への向き合い方、そして今後に向けた視線までを伺いました。
目次
自動化の先にあるのは、環境と安全を守るという発想
——今の会社では、どのような理念や考え方を大切にされていますか。
私自身はもともと繊維産業の人間です。そこで最初に強く意識したのが、公害の問題でした。染色会社では大量の汚染水が出るので、そこをどう改革していくかが重要でした。排水規制がかかる中で、自分で装置を入れ、活性汚泥の設備なども導入してきました。
その後も一貫しているのは、環境災害と労働災害の両方を減らすということです。自動化というと効率化だけの話に見えますが、私にとっては人身事故を防ぐためでもあります。人間は取り換えがききません。機械なら直せますが、人間はそうはいきません。だから、自動化を進める理由は、製品を安定させることと、現場の事故を減らすことの両方です。
また、自動化は単純に機械を一台作れば終わりではありません。材料を運ぶ、つかむ、加工する、寸法を確認する、そうした工程全体がつながって初めて自動化になります。私はその一連の流れ全体を設計することを重視してきました。繊維、食品、充填、搬送、地盤関連まで分野は広いですが、根本にある考え方は同じです。
技術だけでは終わらせない。その責任を引き受けるために経営の道へ
——これまでのキャリアを教えてください。
親の会社を継ぐ流れの中で、自分で現場に入ってやってきました。最初は繊維の排水対策から始まり、その後はタオル産業に入りました。温泉マークのタオルなどで使う技術を、この地域でほとんど独占的に扱うところまで持っていきました。さらに、繊維加工の際に必要な水を三分の一程度まで減らす機械も考えて成功しました。
ただ、報告書を出したことで技術を模倣され、東南アジアに機械が出ていった経験もあります。実際に自分が設計し、使い方まで分かっている機械が、別の形で売られてしまったこともありました。
インドネシアでは、動かない機械を立て直すために呼ばれ、現地で原因を突き止めて動かしたこともあります。食品産業では、とある食品の工場設備に関わり、京都にある工場の機械も設計しました。グリスの充填機については特許も取りました。
——経営者になられた理由を教えてください。
知識だけを作っていても駄目だと思ったからです。技術を売って終わりではなく、できた商品まで引き取る、その一連の責任を持つべきだと考えています。商社の仕事も見てきましたが、売ることばかりで、本当の意味で技術を理解していないと感じる場面もありました。
その点、私は現場で技術がどう使われ、何が起きるかまで見てきたので、最後まで責任を持ちたいと思ったんです。
印象に残っていることは数え切れませんが、現場で見たことは大きいです。繊維でも地盤でも、表に出ない問題がたくさんあります。だからこそ、技術は現実に動いてこそ意味があると思っています。
現地を理解し、技術を押し付けない。組織運営とこれからの挑戦
——組織運営や人との関わりで大切にしていることを教えてください。
人材については、日本人にそのまま教えればいいというものではないと思っています。海外であれば、現地の人たちを理解して、その土地の産業を成長させることが大事です。
日本人が前に出て日本人だけで固まると、どうしても現地との摩擦が起きます。だから私は、その地域の人たちが自分たちで成長できる形を意識しています。
——今後の展望を教えてください。
今後について、今取り組んでいることの詳細はまだ公開できない段階です。ただ、これまでやってきた技術を社会にどう生かすかは、はっきりしています。特に地盤の分野では、軟弱地盤を固める水平加圧工法や、それを測るためのNSWSの開発を進めてきました。
軟弱な地盤から、固まり始めた状態、さらに風化した石のような領域まで測れるように、機械を何度も改良してきました。
関西空港の沈下の話もそうですが、地盤の問題は日本だけの話ではありません。中国でも認められた特許がありますし、マレーシアやバングラデシュなど、技術を必要としている国はあると考えています。
ただ、私は高く売りつけるやり方は取りません。作り方を教えて、自分たちで作れるようにした方がいいという考えです。国としてライセンスを持つ形の方が健全だと思っています。
技術が本当に社会貢献につながるとしたら、日本国内だけではなく、災害や戦争の後の再建、インフラや住宅の基盤整備にも役立つはずです。そういう意味で、地盤というテーマは、これからさらに大きな意味を持つと考えています。
仕事の外でも続く探究心。言語と宗教をたどる時間
——お仕事以外で取り組んでいることはありますか。
一般的な趣味のようなことは、あまりしていません。今やっているのは、サンスクリットやアラム語、真言などを紐解くことです。宗教や言葉の流れを自分なりに調べています。実際に、三蔵法師が歩いた場所や、お釈迦様が生まれた場所にも行っています。
私にとっては、これも勉強の延長です。現地に行って、自分の目で見て、つながりを理解することを大事にしてきました。技術でも歴史でも宗教でも、机の上だけでは分からないことがあるからです。そうやって見てきたものが、今の考え方の土台になっていると思います。