患者と医療に寄り添う開業支援――経験と対話で築く“第二の相談役”という存在
合同会社すがコンサルティング&パートナーズ 代表 菅野 智之氏
医療機関向けの経営コンサルタントとして24年間にわたり経験を積んできた菅野智之氏。2026年に合同会社すがコンサルティング&パートナーズを立ち上げ、クリニック開業支援を中心とした新たな挑戦をスタートさせました。単なる開業支援ではなく、「本当にその開業が医師にとって良い選択なのか」を見極める姿勢を大切にしながら、医師や患者に寄り添う支援を行っています。本記事では、会社設立の背景や事業への想い、今後の展望について伺いました。
24年の経験を生かした“第二の相談役”としての開業支援
――会社を立ち上げたきっかけについて教えてください。
私はこれまで24年間、医療機関向けの経営コンサルタントとして仕事をしてきました。昨年、長年勤めていた会社を退職し、その後は医療機関向けシステム販売会社で新事業開発に携わることになりました。ただ、自分自身としてはやはりコンサルティングの仕事を続けたいという思いが強くあり、副業としてコンサル会社を立ち上げることにしたのが始まりです。
一人でできることを考えた時、自分の最も得意な分野がクリニック開業支援でした。以前は土地探しから事業計画、金融機関との交渉、保険の手配までチームで総合的に支援していましたが、それを一人で全て行うのは現実的ではありません。そこで現在は、デジタルコンテンツの制作や、医師が気軽に相談できる“第二のコンサルタント”的な立場での支援を中心に取り組んでいます。
開業を目指す先生方は、初めての経験で不安を抱えていることが多く、既存の支援会社に対して聞きづらいこともあります。そんな時に「何でも聞ける相手」がいるだけで、精神的な支えになると思っています。
――現在の事業の特徴や強みについて教えてください。
これまで10件以上の開業支援を行い、多くの医師と面談してきました。その経験の中で感じてきたのは、業界全体として「開業したい」と言われると、とにかく開業を勧める流れになりやすいということです。薬卸会社も医療機器会社もコンサル会社も、開業によって利益が生まれる構造があります。
しかし私は、「本当にその先生が開業すべきなのか」をまず考えます。実際に過去には、「開業しない方がいい」とお伝えした先生もいました。勤務医として働き続けた方が安定した収入や働き方を実現できるケースもあるからです。
自社の利益のためだけに開業支援を行わないこと。それが私の大きなポリシーです。医師一人ひとりの特徴や状況に合わせ、これまでの経験をもとにオリジナルのプランニングや戦略を組み立てていく点が強みだと思っています。
患者と医療機関、双方に寄り添うという理念
――理念やビジョンに込めている想いを教えてください。
私は、医療機関に発展してほしいという思いを強く持っています。同時に、患者さんにとって「本当に行きたいと思えるクリニック」を増やしたいとも考えています。
医療の世界には、どうしても医療者側の都合やエゴが出てしまうことがあります。患者さんの立場よりも、自分たちの都合を優先してしまうケースも少なくありません。だからこそ、私は「患者と医療に寄り添う」という考え方を大切にしています。
単に経営的に成功するだけではなく、患者さんが安心して通える医療機関をつくる。そのための支援をしていきたいと思っています。
――医療経営の道に進まれた背景を教えてください。
大学時代から医療経営について学んでおり、3年生の時に医療経済の専門家の先生と出会ったことが大きな転機でした。その先生の考え方や、医療を効率的に運営していく視点に強く影響を受け、医療経営そのものに面白さを感じるようになりました。
また、学生時代にアルバイトをしていた大型レストランの立ち上げにも関わった経験があります。そこで出会った経営コンサルタントが、現場を分析しながら指示を出していく姿を見て、「経営コンサルタントは格好いい」と感じました。
医療経営への興味と、経営コンサルタントという仕事への憧れ。その二つが重なり、「医業経営コンサルタント」という仕事にたどり着きました。
“なぜ”を問い続ける姿勢が、コンサルティングの原点
――経営判断の軸となっている価値観について教えてください。
大切にしているのは、ドクターとしっかり向き合い、話を聞くことです。もちろん、全てを医師の希望通りにすれば経営が成功するわけではありません。しかし、思いや考えを尊重しながら伴走することが重要だと思っています。
また、できるだけ費用負担を抑えたいという考えもあります。以前の会社では数百万円単位のコンサル費用をいただくこともありましたが、現在は面談を1時間5000円程度、記事やコンテンツも比較的低価格で提供しています。
「安いけれど頼んで良かった」と言ってもらえる存在になりたい。その思いは強く持っています。
――影響を受けた人物や出来事はありますか。
以前の上司や先輩コンサルタントの存在は非常に大きいです。その方たちは、私が何を提案しても必ず「なぜ?」と問い返してきました。
例えば「人手が足りないので採用が必要です」と伝えると、「なぜ足りないのか」「勤務時間を調整できないのか」と、徹底的に考えさせられました。
その経験によって、常に「なぜそうするのか」を考える習慣が身につきました。今でも医師から「開業したい」と相談された時には、まず「なぜ開業したいのですか?」というところから話を始めます。その結果、場合によっては「転職した方が良い」とお伝えすることもあります。
専門家との連携で広がる支援の形
――今後の展望について教えてください。
今後は、開業支援だけでなく、職員研修、研修動画の制作なども視野に入れています。現在は一人で運営していますが、必要に応じて専門分野ごとのパートナーと連携しながら事業を広げていきたいと考えています。
会社名に「&パートナーズ」と付けたのもそのためです。医療業界はコンサルティングも専門分化されており、診療報酬、介護、歯科、看護など、それぞれに専門家がいます。一人で全てを担うのではなく、信頼できる仲間と協力しながら支援体制を作っていきたいと思っています。
また、医療業界は政治や社会情勢の影響を大きく受ける業界です。オンライン診療や外国人対応など、10年後、20年後を見据えながら、時代の変化を先読みして新しい事業にも取り組んでいきたいと考えています。
――最後に、休日のリフレッシュ方法について教えてください。
現在は休みがほとんどないのですが、趣味はボウリングです。私は2009年にくも膜下出血で倒れ、左手に麻痺が残っています。そのため、片手でできるスポーツを探してボウリングに出会いました。はじめは障害者ボウリング教室に通って、基礎から学びながら続けました。
また、人と話すこと自体も好きです。医師との面談では、経営についてお伝えするだけでなく、医療現場の新しい知識や治療法など、自分が知らないことを教えていただけることも多いです。仕事でありながら、純粋に楽しい時間でもあります。