金融AIで格差のない社会へ――利益を社会へ還元する18年の挑戦

IBL株式会社 代表取締役 勇川 モラディメハディ氏

IBL株式会社は、株式、為替、先物、暗号資産、貴金属など、複数の金融市場を対象としたAI自動取引システムの研究・開発に取り組んでいます。その構想の根底にあるのは、技術によって利益を生み出すことだけではありません。金融AIによって生み出された価値を社会へ還元し、経済格差や戦争のない未来につなげたいという強い思いがあります。約18年にわたる研究・開発を経て、現在は主要システムの実証実験を行うとともに、将来的な社会実装に向けた準備を進めています。今回は、IBL株式会社の事業の特徴、開発を始めた背景、組織づくり、そして今後の展望について、代表取締役の勇川モラディメハディ氏に伺いました。

金融取引の常識を変えるAI

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

金融市場における売買判断と取引を、人工知能によって自動化するシステムを研究・開発しています。対象としているのは、株式、外国為替、先物、暗号資産、貴金属など、世界のさまざまな金融商品です。

一般的には、株式用、FX用、暗号資産用というように、市場ごとに異なるシステムが使用されます。しかし、当社では複数の市場や通貨、金融商品を一つの仕組みの中で分析し、同時に運用できるシステムを開発してきました。一つの市場だけに依存せず、それぞれの市場の値動きや相関関係を確認しながら、複数の対象を組み合わせて運用できることが当社システムの大きな特徴です。

なお、当社が顧客から資金を預かり、顧客資産を直接管理・運用する仕組みではありません。利用者本人が保有する証券口座や取引口座にシステムを接続し、技術提供や設定・運用支援を行う形を想定しています。

――開発はどのように進めてきたのでしょうか。

この取り組みは、約18年前に始まりました。国内外の仲間と資金を出し合い、これまでに約10億円を研究・開発へ投じてきました。当社には現在、役員および社員を合わせて32名が正式に在籍しており、そのうち14名がエンジニアとして開発に携わっています。さらに、海外の技術者や協力者とも連携しながら、長い年月をかけてシステムの検証と改良を続けてきました。

今年、実運用に向けた主要システムが完成し、現在は実証実験および社会実装に向けた検証を進めています。現在の構成では、30の取引対象に対して、合計360のAI判断モジュールが連携して稼働しています。それぞれのAI判断モジュールが異なる市場、時間軸、方向性、相場環境などを分析し、それらの判断を組み合わせながらシステム全体を動かしています。

金融の力で世界平和へ

――会社の理念やビジョンには、どのような思いが込められていますか。

私が目指しているのは、単に会社の利益を増やすことではありません。まず事業として成功し、そこで生み出された利益や価値を、社会貢献や世界平和につなげることが目的です。継続的な利益がなければ、格差をなくすための活動や、社会を支援する取り組みも長く続けることはできません。

そのため、金融市場において持続的に価値を生み出せる仕組みをつくり、そこで得られた成果を社会へ還元したいと考えています。会社だけが豊かになるのではなく、社員、利用者、地域社会、そして次の世代へ価値が循環する企業を目指しています。

――その思いを持つようになった背景を教えてください。

私は14歳の頃に戦争に巻き込まれ、少年兵として戦場に立つことを余儀なくされました。目の前で多くの子どもたちが命を落とし、生き残った人々にも深刻な心身の傷や後遺症が残りました。その光景を、私は今でも忘れることができません。

自分の子どもや、これから生まれてくる次の世代には、同じ経験を絶対にしてほしくないという思いがあります。子どもや女性の権利を傷つける行為は、どのような国、組織、企業によるものであっても許されるべきではありません。それが、私の人生と経営における譲ることのできない一線です。私は戦争を経験したからこそ、平和について言葉だけで語るのではなく、経済的な仕組みをつくることによって、社会を変えていきたいと考えています。

――経営判断で大切にしていることは何でしょうか。

自分の子どもだけではなく、日本で生きるすべての子どもたちの将来を考えることです。会社の決算は、利益と損失だけで評価されるものではないと考えています。どれだけ雇用を生み出したのか、どれだけ人材を育成したのか、どれだけ社会へ価値を還元したのかについても、企業の成果として示されるべきです。

企業が得た利益が一部の人だけに集中するのではなく、社員、利用者、地域、教育、福祉などを通じて、社会全体へ循環する仕組みが必要です。企業は社会の中で活動している以上、利益を上げる責任と同時に、社会へ貢献する責任も持っていると考えています。

――どのような社会を実現したいと考えていますか。

子どもが生まれた段階から、金融や株式、資産形成について学び、将来に向けて資産を育てられる社会を構想しています。18歳になるまでに、教育や生活の基盤となる一定の資産を形成できれば、若い人たちは大きな借金や経済的不安を背負うことなく、社会へ出ることができます。もちろん、金融商品には価格変動や損失のリスクがあります。そのため、金融教育、リスク管理、法令遵守を前提とした仕組みが必要です。

将来的には、関係法令や必要な制度を整備したうえで、より多くの人が金融市場や資産形成について学び、経済活動へ参加できる機会をつくりたいと考えています。利益を保証するという意味ではなく、正しい知識と技術を用いて、自分の将来を主体的に考えられる環境を整えることが目標です。

平和への思いを力に変える

――組織では、どのようなコミュニケーションを大切にしていますか。

当社には、役員と社員を合わせて32名が正式に在籍しており、そのうち14名がエンジニアです。また、海外の技術者や協力者とも連携しながら、研究・開発を進めています。メンバーに共通しているのは、できるだけ早くシステムを実用化し、その成果を社会貢献につなげたいという思いです。技術開発だけを目的とするのではなく、「何のためにこの技術をつくるのか」「完成した技術を社会でどのように役立てるのか」という目的を共有することを大切にしています。

国籍、文化、言語、専門分野が異なるメンバーが関わっているため、互いの意見を尊重し、問題が起きた際には責任を追及するのではなく、解決策を一緒に考えるようにしています。

――今後、どのような人と一緒に働きたいですか。

社会貢献や平和への思いを共有できる人です。全国へ仕組みを広げるためには、会社だけの力では十分ではありません。政府、自治体、政治家、金融機関、民間企業、教育機関など、さまざまな組織との連携が必要になると考えています。また、退職した方や高齢者を含むボランティアの方々にも、経験や知識を生かしていただける仕組みをつくりたいです。

多くの人にシステムや金融教育を提供するためには、口座設定、システム設定、利用方法の説明、リスク管理、利用者支援などを担当する人材が欠かせません。技術だけではなく、人を支援することに喜びを感じられる方と一緒に、大きな社会の仕組みをつくっていきたいです。

金融AIを全国へ広げる

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

現在のシステムは、主に過去の値動き、価格の変化、相場の方向性、ボラティリティなどを分析するテクニカル判断を基盤としています。次の開発段階では、企業業績、金利、経済指標、金融政策、政治情勢、国際情勢などを分析するファンダメンタル判断も組み合わせます。さらに、LLMやエージェント型AIを導入し、複数のニュースや経済情報を自動的に収集・分析する仕組みを構築したいと考えています。

相場が動いた後に反応するだけではなく、相場が動く可能性のある要因を事前に分析し、複数のシナリオを想定できるシステムに挑戦します。非常に複雑で難しい開発ですが、世界でも例の少ない、テクニカル分析、ファンダメンタル分析、LLM、エージェント型AIを統合した金融AIシステムを目指しています。

――現在の課題と、最終的な目標を教えてください。

最初の課題は、開発した仕組みの有効性を、長期間にわたる透明性の高い実績によって証明することです。短期間の成績だけではなく、さまざまな市場環境においてどのように機能するのか、リスクをどのように管理するのかを検証する必要があります。その結果を政府、自治体、政治家、企業、研究機関などにも確認していただき、必要な法律、制度、設備、教育体制を整えたうえで、社会へ広げたいと考えています。

仕事の自動化が進む未来では、従来の雇用や給与だけでは生活を支えることが難しくなる可能性があります。そのため、公的な給付だけに依存するのではなく、一人ひとりが金融教育や資産形成、さまざまな経済活動へ参加できる新しい仕組みが必要です。そこで生まれた価値が消費、雇用、教育、社会貢献を通じて循環し、社会全体を支える形をつくることが最終的な目標です。

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

家族と過ごすことに加え、長年にわたりスポーツにも取り組んでいます。格闘技については、約20年間にわたり、若い人たちを中心にボランティアで指導してきました。ブラジリアン柔術では、2024年のSJJIF世界大会ノーギ・ライト級で優勝しました。また、同大会のほかのカテゴリーでも入賞しています。

体を動かすことや、若い世代へ技術、礼儀、忍耐力を伝える時間は、仕事とは異なる大切な活動です。スポーツを通じて学んだ、諦めないこと、相手を尊重すること、困難な状況でも冷静に判断することは、会社経営やシステム開発にもつながっています。

Contact usお問い合わせ

    お問い合わせ内容
    氏名
    会社名

    ※会社・組織に属さない方は「個人」とお書きくだい

    役職

    ※会社・組織に属さない方は「一般」をお選びください

    メールアドレス
    電話番号
    どこでお知りになりましたか?
    お問い合わせ内容

    プライバシーポリシーに同意して内容を送信してください。