「大人が変われば、組織も社会も変わる」──fine lab.が提唱する“fine理論”と組織づくり
fine lab. 代表 森 億氏
学校教育の現場で長年指導に携わってきた森億氏は、「子どもを取り巻く環境を本当に変えるには、大人への教育が必要」という思いから、2022年にfine lab.を立ち上げました。現在は企業向けの人材育成や組織開発を中心に、脳機能学や遺伝学、スポーツ学などを組み合わせた独自の「fine理論」をもとに、一人ひとりや組織に合わせたオーダーメイドのプログラムを提供しています。今回は、事業への想いや教育に対する考えについて伺いました。
目次
一人ひとりに合わせたオーダーメイドの人材育成
――現在の事業内容について教えてください。
現在は主に企業を対象に、人材育成や社員研修、リーダー研修、管理職研修、組織開発を行っています。私は脳機能学や遺伝学、スポーツ学などをまとめた独自の「fine理論」を提唱しており、それをベースに研修を実施しています。
プログラムは決まった形を当てはめるのではなく、クライアントと話し合いながら内容を組み立てる完全オーダーメイドです。それぞれの組織が抱える課題や目的は異なりますので、「この会社にはどのような内容が必要なのか」を一緒に考えながら進めています。
企業向けの研修を軸としていますが、オンラインでのコーチングやパーソナルトレーニング、高校・大学受験に挑戦する子どもを持つ保護者へのサポートなども行っています。対象は違っても、根底にある考え方はすべて共通です。
学校教育から“大人の教育”へ
――教師を辞めて独立された理由を教えてください。
学校の教員を辞めた一番の理由は、「子どもを変えたいのであれば、まず大人が変わる環境の構築が必要だ」と考えたからです。
子どもには義務教育という学ぶ場があります。しかし、大人になってから学ぶ場や、親になるために学ぶ場はほとんどありません。そのため、それぞれの企業や自治体が独自に取り組んでいる状態で、共通した学びの機会が少ないと感じていました。
学校現場では子どもたちと接していましたが、その背景には家庭や職場での大人の在り方が大きく影響しています。子どもを取り巻く環境を変えるには、大人への教育が欠かせない。その思いから、教育の対象を社会人へと広げました。
結果を残すためには、指導者を育てることが大切
――スポーツ分野ではどのような取り組みをされていますか。
現在は中学校や高校の部活動において、選手ではなく指導者へのサポートを中心に行っています。
以前は選手やチームへのクリニックも実施していました。しかし、その場では成果が出ても、私が現場を離れると元の状態に戻ってしまうケースが少なくありませんでした。
だからこそ、現場にいる監督やコーチ、スタッフなど指導者を育てることが重要だと考えています。継続的に成果を出せるチームをつくるには、日々選手と接する指導者の考え方や関わり方が何よりも大切です。
そのため現在は、チーム全体ではなく、指導者やスタッフを含めた組織全体に関わりながら支援を行っています。
教育も組織づくりも、一度の指導だけで変わるものではありません。人が変わり、組織が変わるためには継続的な関わりが必要だと考えています。
単発研修ではなく、組織の状態を知ることから始めたい
――今後、特に力を入れていきたい取り組みについて教えてください。
企業からはリーダー研修や人材育成など、単発の研修依頼をいただくことが多くあります。しかし、研修を一度実施しただけで組織が変わることはありません。
私が行いたいのは「研修」ではなく、「トレーニング」です。継続して取り組むことで初めて人は変わり、組織も変わっていくと考えています。
そのために提唱しているのが「組織ドック」です。
人間が健康診断を受けるように、まずは組織の現状を把握してみませんかという考え方です。問題が起きてから対応するのではなく、問題が起きる前に組織の状態を知り、改善につなげていく。その考え方を多くの企業に広めていきたいと思っています。
私は「fine」という言葉を大切にしています。社員一人ひとりが自分自身の状態を理解し、職場の環境も良い状態であること。そのような組織が増えていけば、仕事だけでなく家庭にも良い影響が広がると考えています。
行動には理由がある。その理由を知ることが大切
――研修ではどのような考え方を伝えているのでしょうか。
コンプライアンスや心理的安全性について学ぶ研修は多くありますが、私は「なぜそのような行動が起こるのか」という根本から理解することを大切にしています。
例えば、いじめやハラスメントは「やめましょう」と呼びかけるだけでは解決しません。それは結果であり、その背景には人間の行動原理や脳機能、遺伝的な要因があるからです。
人は自分の価値観と違う相手を無意識に評価してしまう(嫌う)傾向があります。その仕組みを理解しないまま表面的な対策だけを行っても、本質的な改善にはつながりません。
組織ドックでは、一人ひとりがどのような場面で感情が動くのか、自分自身の特性を知ることにも取り組みます。自分を理解し、相手を理解することが、より良い人間関係や組織づくりにつながると考えています。
目指すのは「組織ドック」が当たり前になる社会
――今後の目標や課題について教えてください。
売上を大きな目標にしているわけではありません。
私が目指しているのは、「組織ドック」という言葉が社会の中で当たり前に使われるようになることです。企業で働く人が健康診断を受けるように、組織も定期的に状態を確認する仕組みや文化が広がれば、多くの問題を未然に防げると考えています。
その一方で、今後の課題は人材育成です。現在は一人で活動していますが、この考え方が広がれば、一人では対応できなくなります。
そのため、月に1〜2回オンラインで仲間と学び合いながら、知識やスキルを共有しています。同じ考え方を持つマインドコーチを育成し、より多くの企業へ届けられる体制をつくっていきたいですね。
また、私自身は集客やマーケティングよりも研修やトレーニングに力を注ぎたいと考えています。セミナーの企画や集客を担ってくださる企業やパートナーと協力しながら、この考え方をさらに多くの方へ届けていければと思っています。
――休日はどのように過ごされていますか。
私には休日と仕事の境界があまりありません。生きることそのものが仕事につながっている感覚なんです。
だからこそ、「休養」よりも「活力」を大切にしています。エネルギーを回復させるのではなく、常に活力を貯め続けること(溢れてくる感覚)を意識しています。
そのために実践しているのがマインドフルネスや自然との関わりです。キャンプや釣り、ゴルフ、サイクリングなど、自然の中で過ごす時間を大切にしています。そして、人との関わりも。
また、社会全体としては教育に対する価値観も変えていきたいと考えています。問題を解決する力だけではなく、問題そのものを発見する力を育てることが重要です。
組織を変え、人を変え、その先にある社会をより良いものへ。これからも「fine」という考え方を軸に、人と組織の可能性を広げる挑戦を続けていきたいと思います。