高校生と地域企業の出会いをつくる――Pathpixが描く、地域に根ざした就職支援
株式会社Pathpix 代表取締役 古居 克巳氏
株式会社Pathpixは、高校生の新卒採用支援に特化し、学校や地域企業、自治体をつなぐ事業を展開しています。公的な就職支援の現場で14年間にわたり新卒者の就職支援に携わってきた古居克巳氏が、2024年9月に法人化。高校生が地元の企業や産業を知り、自ら進路を選べる環境づくりに取り組んでいます。本記事では、同社の事業の特徴や創業の背景、地域に根ざした就職支援への思い、今後の展望について伺いました。
目次
学校と企業をつなぎ、高校生の選択肢を広げる
――現在の事業内容について教えてください。
当社は、高校生を対象とした新卒採用支援を行っています。学校と連携しながら生徒の就職を支援し、その結果として企業の採用活動も支えていく事業です。
高校生の採用では、人材紹介という形ではなく、生徒と企業が出会うための環境をつくることが当社の役割です。現在は、地域の企業に学校へ足を運んでいただき、校内で企業説明会を開催する取り組みを積極的に進めています。
――事業の特徴や強みはどのような点にありますか。
私自身、公的な就職支援の現場で14年間、新卒者の就職支援に携わってきました。その中で地域の企業や高校、大学と連携しながら仕事をしてきた経験があります。公的な就職支援の現場を離れた現在も、これまで築いてきた関係を生かし、学校と直接連携しながら就職支援を行えることが強みです。
公的な就職支援では、実施できる時期や内容があらかじめ決められていることが少なくありません。しかし、本来必要なのは、生徒が就職先を決める前に企業を知る機会です。当社では、学校内で企業との接点を増やし、生徒が比較しながら進路を考えられる環境をつくっています。
情報不足によるミスマッチを減らしたい
――理念やビジョンには、どのような思いが込められていますか。
大学生の就職活動と比べると、高校生が企業を知るための情報や機会は限られています。十分に知る場がないまま就職先を選び、面接を受けるケースもあります。そうした情報不足によるミスマッチを少しでも減らすために、企業と出会う機会を増やすことを大切にしています。
また、生徒だけでなく、学校の進路担当の先生方にも地域企業を知っていただく必要があります。先生は異動によって数年ごとに替わることがあり、配属された地域の企業に詳しいとは限りません。企業に学校へ来てもらうことで、生徒と先生の双方が企業の話を聞き、地域への理解を深められると考えています。
――「Pathpix」という社名の由来を教えてください。
「Path」は、人や企業が進む道筋を表しています。「Pix」には、その道筋を描き出すという意味を込めています。
人と企業との間にある最適な道筋を描き出し、高校生が将来の進路を、より具体的かつ鮮明に思い描けるようにしたいという思いから、「Pathpix」と名付けました。
公的な就職支援の現場で感じた限界が、創業のきっかけに
――経営の道に進まれた背景をお聞かせください。
公的な就職支援の現場でも、前例にとらわれない取り組みを数多く進めてきました。ただ、公平公正な立場である以上、特定の企業について踏み込んだ情報を伝えることには限界があります。生徒や先生が正確に判断するために必要な情報があっても、公的な立場では伝えにくい場面がありました。
本当に必要な情報を正しく伝え、生徒が納得して進路を選べる環境をつくるためには、自ら公的な就職支援の枠組みの外へ出て活動する必要があると考え、創業に至りました。
――経営判断の軸となっている価値観は何でしょうか。
「本当に学校のため、生徒のためになるのか」ということです。目先の利益だけではなく、その取り組みが生徒の進路選択に役立つのか、学校と企業のより良い関係につながるのかを判断の基準にしています。
私は地域の花火大会を復活させる実行委員の代表も務めてきました。地域ににぎわいをつくるためには、若い世代がその地域に残り、活躍できる環境が必要です。地域にはどのような企業があり、どのように地域を支えているのかを知ってもらうことが、地元で働く選択肢につながると考えています。
正確な情報と、自分の言葉を大切にする
――企業や学校とのコミュニケーションで意識していることを教えてください。
事実に基づいて話すことです。数字を含めた情報についても、なぜその数字になっているのかまで確認し、正確に伝えるようにしています。生徒や先生、企業が正しく判断するためには、前提となる情報の正確さが欠かせません。
高校生の採用では、企業が生徒と直接接点を持てる機会が限られています。そのため、基本的な窓口は学校です。企業が学校との関係を築き、先生が安心して生徒に企業を紹介できる状態をつくることが重要だと考えています。
――今後、一緒に働きたいと感じるのはどのような人ですか。
年齢に関係なく、自分の考えを率直に話せる人です。相手の顔色を見て発言を変えるのではなく、自分の考えを自分の言葉で伝えられる人と働きたいと思います。
採用の場でも、準備した答えを完璧に話す人より、言葉に詰まりながらも自分の言葉で一生懸命伝えようとする人のほうが、企業担当者の心に響くことがあります。
地域ごとの支援者をつなぐ仕組みをつくる
――今後、取り組んでいきたいことを教えてください。
学校と、その学校が所在する自治体との接点を増やしていきたいと考えています。自治体には、地域の産業や企業に関する情報があります。自治体がハブとなり、学校や生徒へ地域の情報を発信できる環境をつくることが目標です。
また、就職活動が本格化する高校3年生だけでなく、1年生、2年生の段階から進路を考えられるプログラムも広げています。卒業時点になっても進路の方向性が定まっていない状態ではなく、早い段階から自分の将来について考え、 自分なりの道筋を決められるよう支援していきたいです。
――現在の課題について教えてください。
事業が私個人の経験や人間関係に依存していることです。企業の担当者が替わっても学校との関係を築けるよう、支援の方法を仕組み化していきたいと考えています。
将来的には、私自身が東京や名古屋へ出向くのではなく、それぞれの地域に同じ思いを持って動ける人を増やしたいです。地域を越えて就職を希望する高校生がいれば、各地域の支援者同士が連携して企業や学校をつなげられるネットワークをつくることが目標です。
ただし、地域によって支援の考え方に差が出てしまうことには不安もあります。同じ思いを共有できる人をどのように見つけ、育てていくかが、これからの課題です。
「やってみたい」という気持ちが道を開く
――休日はどのようにリフレッシュされていますか。
妻と温泉地や銭湯を巡ることが多いです。夜のミーティングを終えた後、そのままお風呂に入って帰ることもあります。ゆっくり過ごしながら気持ちを切り替える時間になっています。
――これから経営を始める方へメッセージをお願いします。
できるかできないかは、やってみなければ分かりません。「できる」と確信できるまで待つのではなく、まずは「やってみたい」という気持ちを優先してほしいと思います。
やってみたいという思いで動き始めると、支えてくれる人が周囲に現れます。それを期待して始めるわけではなくても、自分の思いを信じて走り続けることで、自然と道は開けていくのではないでしょうか。