地域とともに歩む日本語学校――専門性とつながりを大切に育む学びの場
島原国際日本語学校 校長 小渕 見早氏
長崎県島原半島にある島原国際日本語学校は、日本語教育を通じて留学生の学びを支えるだけでなく、地域との交流にも力を注ぐ日本語学校です。日本語教師として長年現場に立ち、研究や大学での教育にも携わってきた小渕見早氏が、その経験を生かして設立しました。専門家だからこそ実現できる教育と、地域に根差した学校づくりへの思い、そして経営者として大切にしている価値観について伺いました。
目次
専門性を生かした日本語教育と、地域に開かれた学校づくり
――現在の事業内容について教えてください。
当校では、認可を受けた日本語学校の運営を中心に行っています。それに加えて、長崎県の島原半島にある島原市・南島原市・雲仙市の3市で、地域日本語教室も開催しています。地域に暮らす外国人の方々が安心して生活できる環境づくりにも取り組んでいます。
――他校にはない強みはどのような点でしょうか。
一番の強みは、日本語教育を専門とする私自身が立ち上げた学校であることです。日本語教師として現場を経験し、大学院で日本語教育を研究し、その後も大学などで教育に携わってきました。その専門性を土台に学校を運営しています。
もう一つ大切にしているのが、地域との関わりです。日本語学校だけが独立して存在するのではなく、地域の方々に学校や学生を理解していただきながら、一緒に暮らしていくことを大切にしています。
実際、学生が地域の方と顔を合わせ、あいさつを交わし、一緒に作業をするようになると、地域との距離がぐっと縮まります。そうした積み重ねによって学生も安心して生活できるようになりますし、地域の方や企業にも学生の姿を知っていただけるようになりました。
現在在籍している約70名の学生全員が地域でアルバイトをしており、人手不足が課題となる地域を支える存在にもなっています。
日本語教師としての経験が学校設立につながった
――学校を立ち上げたきっかけを教えてください。
設立へ踏み切る大きなきっかけとなったのはコロナです。
近隣の学校が休校となり、私自身も仕事を失いました。当時は子どもが3人いて、大学へ通勤するには距離も遠く、子育てとの両立が難しい状況でした。仕事を続けるためには、自分で学校をつくるしかないと決断したんです。
もちろん簡単ではありませんでした。資金調達、先生集め、学生募集という三つの大きな課題がありましたが、タイミングにも恵まれました。コロナ禍で仕事を探している先生方がいたこと、以前教えていた学生がネパールで学校を運営しており後押ししてくれたこと、そして金融機関や地域の方々の支援があったことで、一つひとつ実現していくことができました。
学校を立ち上げるということは、自分一人の力では決してできません。これまでの学生との長年のつながりや、多くの方とのご縁があったからこそ学校を立ち上げることができました。
――経営判断の軸になっている価値観を教えてください。
一番大切にしているのは、自分がワクワクするかどうかです。
経営者になると、日々大きな判断をし続けなければなりません。相談できる相手も限られる中で決断を重ねるのは大変ですが、「楽しい」と思えるか、「ワクワクできるか」という感覚は、いつも判断基準になっています。
否定しないコミュニケーションが組織を支える
――組織運営で意識していることはありますか。
常に意識しているのは、相手を否定しないことです。言葉遣いも含めて、否定から入らないよう心掛けています。
――一緒に働きたいと思う人物像を教えてください。
小さな学校なので、代表である私と職員との距離も、職員と学生との距離も近い環境です。その中でも、職員は自分の立場を理解して仕事を遂行していくことが大切ですね。
そして何より、何事も学びと捉えて楽しく考えられる人と一緒に働きたいと思っています。学生の事故やトラブルなど、毎日のようにさまざまな出来事が起こります。一つひとつに振り回されるのではなく、「次はどう改善しよう」と前向きに考えられる人が向いていると思います。
経験を次に生かしながら前へ進めることが、この仕事ではとても大切なんです。
学生が主体的に学べる教育を目指して
――今後取り組みたいことを教えてください。
現在、日本語学校業界は大きな転換期を迎えています。新たな認定制度への対応が必要になり、カリキュラムも見直さなければなりません。
これからは先生が一方的に教える授業ではなく、学生自身が考え、学び、自分で成長を実感できる教育が求められています。そのため、学生が自分で目標を立てて、実践し、できたと思える経験を積み重ねながら、主体的に学べる授業づくりを進めていきたいですね。
また、先生方の育成も大切です。学生は素直で前向きな子が多いので、その良さをそのまま伸ばしてあげたいと思っています。そのためにも、先生自身が学ぶ姿勢を忘れずに、柔軟に学生と向き合うことが大切だと考えています。
「好き」という気持ちが原動力になる
――仕事をする上で譲れない思いを教えてください。
やはり「楽しさ」と「ワクワク感」です。
好きなことは、時間を忘れて考えたり調べたりできます。努力しようと意識しなくても自然と向き合えるんです。一方で、無理に頑張るだけでは長く続きません。
私自身、日本語教育も学生と関わることも本当に好きなんです。学生は明るく前向きで、その姿に私自身も元気をもらっています。だからこそ、この仕事を続けられているのだと思います。
――最後に、休日のリフレッシュ方法を教えてください。
料理とお酒が好きなので、自宅で料理をしながら子供たちと過ごす時間がリフレッシュになります。
旅行も好きですが、子どもが5人いるので遠出はなかなか大変ですね。それでも家族みんなで車に乗って、行けるところまで出かけて車中泊をするなど、車での旅を楽しむこともあります。
経営を経験したことで、多くの経営者が日々大きな判断を重ねながら会社を支えていることを実感しました。そして、その悩みを話せる相手は限られていることも分かりました。だからこそ、相談できる相手、友人や経営者同士のつながりは本当に大切だと感じています。
人とのつながりを大切にしながら、これからも地域とともに学び、歩み続ける学校づくりを続けていきたいですね。