レガシー技術を守りながら、新たなDX市場へ――フレア・テクノロジーが描く挑戦
フレア・テクノロジー株式会社 代表取締役 生沼 勝巳氏
フレア・テクノロジー株式会社は、IBM i(AS/400)のシステム開発・保守を主軸に、ERP領域やプロセスマイニングを活用したDX支援にも取り組んでいます。既存事業で培った技術を守りながら、新たな収益の柱として自社製品「ProcessFlare」の開発にも注力しています。今回は代表取締役の生沼勝巳氏に、同社の強みや事業に込めた思い、組織づくり、今後の展望について伺いました。
目次
レガシーシステムの技術力を、次の価値につなげる
――現在の事業の特徴や、他社にはない強みについて教えてください。
当社のメイン事業は、AS/400のシステム開発・保守です。会社を立ち上げた当初から取り組んできた事業で、現在も収益の中心になっています。
市場全体では、汎用機からオープン系システムへの移行が加速する中対応可能な事業者は減少傾向にあります。加えて、技術者の高齢化や若手人材不足が進行しており、専門技術の継承や安定したサービス提供が業界共通の課題となっています。そのため、「今後どう保守していけばいいのか」と悩まれている企業も少なくありません。
当社では若手人材の採用を継続するとともに、AS/400を含むレガシーシステムのノウハウ継承にも注力しています。業界全体で技術者不足が進む中でも、技術者を安定的に確保・育成している点は当社の強みです。また、VPNを活用したオンライン保守体制を構築しているため、場所を問わず迅速なサポートを提供できます。人材と運用体制の両面からお客様を支えられることが、当社の競争優位性につながっています。
――既存事業以外では、どのような展開をされていますか。
当社は、既存事業を守るだけでなく、将来を見据えた新しい市場の開拓にも積極的に取り組んでいます。ERP分野ではSAPやInfor LNなどに対応し、AS/400をご利用中のお客様が将来的にシステム移行を行う際にも、これまで培ってきた業務知識を生かしながら継続してご支援できる体制を構築しています。
さらに、プロセスマイニング分野では自社開発製品「ProcessFlare」を展開しています。業務ログを分析して業務の流れや課題を可視化し、ボトルネックを明らかにすることで、業務改善や新たなシステム開発の提案につなげることが可能です。お客様の課題を発見し、改善策まで提案できる点は、当社ならではの付加価値であり、今後さらに強化していきたい領域だと考えています。
中小企業にも使えるプロセスマイニングを
――ProcessFlareを開発されたきっかけを教えてください。
システム開発は当社の主軸事業ですが、創業から3年間は売上が大きく変化せず、このまま既存事業だけに依存していてはいけないという危機感を持っていました。今後も需要は続くと考えていますが、事業が永続的に成長する保証はありません。だからこそ、次の成長を支える新たな収益源が必要だと考えたのです。
その中で着目したのがプロセスマイニングでした。欧米ではすでに普及が進んでおり、日本でも今後確実にニーズが高まる分野だと感じていました。一方で、市場にある製品の多くは大企業向けで価格も高く、中小企業には導入しづらいものが中心でした。そこに市場の空白があると考え、中小企業のお客様にも手軽に活用していただけるプロセスマイニングツールとして開発したのが「ProcessFlare」です。お客様の業務を可視化し、改善につなげることで、新たな価値を提供していきたいと考えています。
――会社の理念には、どのような思いを込めていますか。
「常識を超えたITの種をまき、お客様が花を咲かせる力になりたい」という想いを大切にしています。常識に縛られていては、新しい価値は生まれません。だからこそ当社は、既存の枠組みにとらわれることなく、新しい技術やアイデアに積極的に挑戦し続けています。
ProcessFlareも、そうした考えから生まれた製品です。現在はAI技術も積極的に取り入れていますが、単に最新技術を活用するだけではなく、信頼性の確保にも力を入れています。特にAIのハルシネーションを抑制する独自技術の開発を進めており、関連する特許申請も行っています。
私たちはこれからも、「新しさ」と「信頼性」の両立を追求しながら、お客様にとって本当に価値のある製品やサービスを提供していきたいと考えています。
「社員がハッピーか」を経営判断の基準に
――経営の道に進まれた経緯を教えてください。
前身となる会社で21年間勤務し、取締役や社長として経営に携わってきました。社長就任は突然のことでしたが、多くの方に助けられながら経営を学び、事業を継続してきました。
多くの学びを得る一方で、次第に自らの理念やビジョンを形にする会社をつくりたいという思いが強くなっていきました。経営を任される立場として培った経験を生かし、自らの責任で新たな価値創造に挑戦したいと考えたことが、独立を決意した大きなきっかけです。
こうして会社を立ち上げましたが、昔から一緒に働いていた仲間が集まってくれたことは、とても嬉しかったですね。人とのつながりこそが、当社の原点だと思っています。
――経営判断で大切にしていることは何でしょうか。
私が経営判断をするうえで最も大切にしているのは、「それが社員の幸せにつながるかどうか」です。当社は社員がいてこそ成り立つ会社です。そのため、何かを決断するときには、会社の利益だけでなく、社員にとってより良い方向につながるかを常に考えるようにしています。
また、社員の意見にも積極的に耳を傾けています。実際に、自社製品である「ProcessFlare」も社員との対話の中から生まれたアイデアです。
さらに、組織運営においては、曖昧なコミュニケーションを避けることも意識しています。特に指示や方針を伝える際には、誤解が生じないよう具体的かつ明確に伝えることを心掛けています。
やる気を重視し、挑戦できる人材を育てる
――採用の際に、一緒に働きたいと感じるポイントを教えてください。
モチベーションや向上心です。面接では、本人が本当にやる気を持っているのかを見極めるようにしています。もちろん見立てが外れることもありますが、採用した以上は責任を持って育成していくことが大切だと考えています。
新入社員については、入社後約半年間は外部研修で基礎を学び、その後はプロジェクトに参加しながらOJTを通じて育成しています。また、メンター制度も導入しており、業務面だけでなくさまざまな相談に対応できる体制を整えています。
――経営や仕事で大切にしている考え方はありますか。
私が大切にしている言葉の一つが、「Stay Hungry, Stay Foolish」です。現状に満足せず、常に新しいことに挑戦する姿勢を忘れないことが、成長の原動力になると考えています。
その考えは会社全体にも共有しており、変化を恐れず挑戦し続ける文化を育んでいきたいと思っています。失敗を恐れるのではなく、まず一歩踏み出すことが大切だと考えています。
ProcessFlareとAIを、次の成長の柱へ
――今後、特に取り組んでいきたいことを教えてください。
今後は、まず自社製品である「ProcessFlare」のさらなる成長に力を入れていきたいと考えています。単に業務ログからボトルネックを可視化するだけでなく、「どのように改善すればよいのか」という問いに対して、AIが具体的な改善案を提示できる仕組みも取り入れています。業務の課題発見から改善提案までを一貫して支援できる製品へと進化させていきたいですね。
また、もう一つの重点分野がAIです。今後はシステム開発の現場でもAIの活用がますます広がっていくと考えており、それに対応できる体制づくりを進めていきたいと思っています。そのため、AIに精通した人材の採用や育成にも力を入れていく方針です。AI時代には、単にツールを使うだけでなく、AIから最適な答えを引き出すために適切な問いを設計する力が重要になります。こうしたAI活用のスキルやノウハウを会社全体で強化し、お客様により高い価値を提供できる企業を目指していきたいと考えています。
テニスとスポーツ観戦でリフレッシュ
――休日はどのようにリフレッシュされていますか。
プライベートではテニスを楽しんでいます。休日にはコートに立つことが多く、長年続けている大切な趣味の一つです。また、所属するITコミュニティが主催するテニス研修会にも社員と一緒に参加しており、コーチの指導を受けながら仲間との交流も楽しんでいます。
野球観戦も好きで、会社で保有している東京ドームのシーズンシートを社員にも活用してもらっています。仕事を離れた場所でリフレッシュしてもらえる機会になればと考えています。
自宅では、YouTubeで投資や経済に関する情報をチェックすることも多く、さまざまな知見を得ながら視野を広げるよう心掛けています。
――最後に、これから経営者を目指す方へメッセージをお願いします。
「覚悟を持って挑戦してほしい」ということです。経営には正解のない判断が数多くあり、その結果に対する責任を最終的に負うのは経営者自身です。だからこそ、自ら決断し、その責任を引き受ける覚悟が何より大切だと思います。
私は、会社の中で最も努力し、最も責任を負うべき存在は経営者だと考えています。社員に成長や挑戦を求めるのであれば、まず経営者自身が率先して行動し、その姿を示さなければなりません。その積み重ねが社員やお客様からの信頼につながり、会社の成長を支える原動力になると考えています。
経営は決して簡単な道ではありません。しかし、その分だけ大きなやりがいがあり、多くの学びや出会いも得られます。人とのご縁や信頼関係を大切にしながら、ぜひ恐れずに挑戦していただきたいと思います。