「毎日楽しく生きる」を経営の軸に――人と向き合い、静岡から新たな価値を生み出す
株式会社ヒロワールド 代表取締役 福島 翔平氏
株式会社ヒロワールドは、歯科医院を支えるデンタル事業を長年にわたり展開しながら、現在はマーケティング事業や静岡に特化した「しずドラ」にも取り組んでいます。2代目として会社を引き継いだ福島氏が掲げるのは、「毎日楽しく生きる」というシンプルな言葉。その価値観を軸に、新たな事業への挑戦や顧客との関係づくり、組織づくりを進めています。今回は福島氏に、事業の特徴や経営者としての歩み、大切にしている考え方について伺いました。
38年続く事業を土台に、新たな領域へ挑戦
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
大きく分けて3つの事業を展開しています。一つがマーケティング事業で、企業の中に入ってマーケティング戦略を組んだり、SNSや動画制作、インハウス化の支援をしたりしています。
もう一つが、静岡をドラマティックにするというコンセプトから生まれた「しずドラ」です。静岡県在住で、地域をよく知るメンバーと一緒に取り組んでいます。自社でもSNSアカウントを運用し、静岡県内35市町村を回る企画など、地域に特化した発信を続けてきました。
そして、会社として最も長く続けているのがデンタル事業です。父の代から38年にわたり、静岡県を中心に歯科ディーラーとして、歯科医院の開業支援から診療用のチェア、レントゲン、歯ブラシや歯磨き粉、治療器具まで幅広く扱ってきました。
――マーケティング事業では、どのようなことを大切にしていますか。
SNSや動画を作ること自体を目的にはしていません。「Instagramを運用したい」という相談が来ても、まず「何のためにやるのか」を考えるところから始めます。
特に大事にしているのが、「N1分析」「N1インタビュー」です。実際のお客様一人に深く話を聞き、その人が何を求め、どこで困っているのかを理解したうえで施策を組み立てます。SNSが必要ならSNSを使えばいいし、チラシが必要ならチラシを作ればいい。大切なのは、手段ではなく目的なんです。
僕自身、できれば最終的には社内でマーケティングができる状態になってほしいと思っています。そのため、こちらからすぐに答えを出すのではなく、相手自身に考えてもらうことも多いですね。中長期で伴走しながら、社内に力を残していくことを意識しています。
会社の未来を考え、2018年に踏み出した一歩
――新しい事業に挑戦するようになったきっかけを教えてください。
もともとは歯科ディーラーだけで事業を続けていくことに限界も感じていました。会社の将来を考えたときに、「何かの分野で知名度を取ることが必要なんじゃないか」と考えたんです。
そこで2018年から「歯科ディーラーYouTuber」として活動を始めました。当時は仕事でYouTubeを活用する人が今ほど多くなかったので、他社がやっていないことに挑戦しようと思ったんですね。
3年ほど、週2本のペースで動画を出し続けました。朝4時、5時に起きて会社へ行き、台本を考えて、昼間は歯科ディーラーの仕事をする。帰宅してから撮影や編集をする生活でした。今振り返ると、よくやっていたなと思います。
ただ、2018年は僕にとって大きな転機でした。それまでは大きな会社でサラリーマンをしていた感覚が残っていて、家業に戻ってからも「ただ働く」ような意識がどこかにあったんです。でも、「自分がちゃんとしなければ会社がなくなるかもしれない」と強く認識した。それが経営に本気で向き合う第一歩だったと思っています。
――もともと会社を継ぐことは決めていたのでしょうか。
いずれ継ぐつもりではいましたが、一度は自分の力で就職活動をしてみようと考えました。その結果、PALTACに入社し、営業職からキャリアをスタートしています。
自分の力を試すために一度外へ出た経験があり、その後ヒロワールドへ戻りました。そこで培った経験も生かしながら、父の代から続く事業を土台に、新しいことを取り入れてきたという形ですね。
「毎日楽しく生きる」がすべての判断軸
――経営や仕事をするうえで、軸になっている考え方はありますか。
僕は「毎日楽しく生きる」という言葉を掲げていて、名刺にも書いています。仕事も含めて、何かを判断するときは基本的にそこに沿っているかどうかを考えています。
仕事は人生の中で大きな割合を占めますよね。それなのに「仕事は大変なもの」「やりたくないことを我慢してやるもの」と考えるのは、少し違うんじゃないかなと思うんです。どうせ多くの時間を使うなら、楽しく仕事ができた方がいい。その考えは社員に対しても同じですね。
うちのメンバーはかなり自由に動いています。それぞれ大変なことは当然ありますが、「月曜日が来るのが嫌で会社に行きたくない」という人はいないんじゃないかなと思っています。みんなにも、毎日楽しく働いてほしいんです。
――人との関係で大切にしていることは何でしょうか。
会社を大きくして全員を幸せにすることは、僕たちの規模では難しいと思っています。ただ、ご縁があって目の前にいる人は絶対に幸せにしたいんです。
父の代から38年会社が続いてきた背景にも、人との関係を大切にしてきたことがあると思っています。僕たちは大手ではないからこそ、一人ひとりときちんと向き合う。「目の前で困っている人を助けられなければ、その後ろにいる100人、1000人だって助けられない」と考えています。
仕事は価値を提供し、その対価としてお金をいただくものです。そこには必ず相手がいる。だから相手のことをしっかり考えるのは、僕にとって特別なことではなく当たり前なんですね。
目の前の人への「解像度」を上げ続ける
――経営の中で壁にぶつかったとき、どのように向き合っていますか。
うまくいかないときは、相手や物事に対する「解像度」が低いことが多いと思っています。だから壁に当たったときほど、「そもそも何のためにやるんだっけ」「これは誰のためになるんだっけ」と考え直します。
マーケティングでも経営でも、相手を深く理解することが大切です。相手への解像度が高くなれば、「ここで困っているんだな」「本当はこれを伝えたいんだな」ということが見えてくる。その積み重ねが、より良い仕事につながると思っています。
これからも無理に会社を大きくすることだけを目指すつもりはありません。一緒に仕事をする方との相性やご縁を大切にしながら、目の前の人にしっかり価値を届けていきたいですね。
自分自身も、社員も、関わってくださる方々も毎日を楽しめるように、人とのつながりを大切にしながら、一つひとつの仕事に向き合い続けていきたいと思っています。