京都の羽織を世界へ――海外経験とマーケティングを生かし、職人とともに新たな価値を届ける
KyotoHaoriZEN〜禅〜 代表 前野 貴嗣氏
KyotoHaoriZEN〜禅〜は、京都で羽織を中心に販売活動を行っており、イタリアやドイツ、ポーランドをはじめとした各国へ日本の羽織を届けています。今後は京都の職人や商人とのつながりを活かし、ゼロから仕立てた高付加価値な羽織を海外へ展開する構想も進めているといいます。本記事では、代表の前野貴嗣氏に、海外市場に目を向けた背景や事業に込める想い、今後の展望などについて伺いました。
京都の羽織を、海外の顧客へ届ける
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当店では、京都市内に店舗を構え、羽織を中心に販売しています。もともとは、オンラインを中心に海外へ販売してきました。
扱っている羽織は、正絹をはじめ、ポリエステルやウール、綿などさまざまな素材のものがあります。現在はイタリア、ドイツ、ポーランドなどヨーロッパのお客様を中心に販売しており、顧客はほぼ100%海外の方です。
――海外のお客様に特化するようになったのはなぜでしょうか。
これまでの海外経験を活かせることに加え、日本のものづくりは海外市場に可能性があると感じたからです。
もともと私はヨーロッパで留学エージェントの仕事をしており、海外に関わる経験を重ねてきました。その後、国内でアパレルを手がける企業とのご縁から、海外向けECの立ち上げと運用に参画したことが、現在の事業につながっています。
海外へ販売するなかで、国内で価格競争をするのではなく、品質や背景にあるストーリーも含めて価値を感じてくださる方へ届けたいと考えるようになりました。そうした経験から、海外のお客様を中心に事業を展開しています。
多様な挑戦の先で見つけた「羽織」という軸
――改めて、これまでのご経歴についてお聞かせください。
学生時代は京都の大学に通い、卒業後に半年ほど、イギリスへ語学留学しました。帰国後は個人事業としてトラックでの移動販売を始め、その後は神戸でパーソナルジムやレンタルスタジオを立ち上げました。
コロナ禍をきっかけに事業を閉じたあとにも企業にてパーソナルジムの運営に携わりましたが、もう一度海外へ行きたいという想いからマルタへ渡り、現地の学校などとのつながりをつくりながら、マルタ留学のエージェント業務に携わりました。ヨーロッパを中心に約40カ国を回った経験も、今の海外向け事業に大きく活かされています。
帰国後も、ヨガスタジオの開業や複数企業の取締役、マーケティング責任者など、さまざまな仕事を経験してきました。一方で、「何でもできる反面、一つに突出しきれていない」という点は悩みでもありました。そこで今は、自分が今タイムリーに力を入れたいものとして、羽織に軸を絞って事業を行っています。
――経営するうえで大切にしている考え方は何ですか。
一番大切にしているのは、「自分のやりたいことを曲げない」ということです。
経営をしていると、利益や人間関係など考えなければならないことはたくさんありますし、外的な要因から「これは難しいのではないか」と思うこともあります。それでも、まず「自分はこれをやりたい」という軸を持ち、そのためにどう動けばいいのかを考える――その姿勢で進んできたからこそ、さまざまな人とのつながりやご縁が生まれたと思っています。
これからも、この軸は強く持ち続けたいですね。
職人の技術と想いを、海外へ
――今後、どのような事業にしていきたいと考えていますか。
会社や店舗をただ大きくするのではなく、羽織を本当に好きになってくださる方を海外に増やしていきたいと考えています。誰もが知るブランドを目指すというより、「知る人ぞ知る」存在であっても、その価値を理解してくださる方に深く好きになってもらえる事業にしたいです。
今後は、京都の職人さんや商人の方々とのつながりを生かし、ゼロからつくる高付加価値な羽織にも挑戦していく予定です。アメリカや北欧、ドバイなども視野に入れながら、職人さんの技術や思い、日本文化の価値まで含めて海外へ届けていきたいと思っています。
また、事業から生まれた利益を職人さんたちへ還元していくことも大切にしています。さまざまな職人さんの技術をかけ合わせながら新しい商品を生み出し、本当に価値を感じてくださる方へ届けていきたいです。
――職人や日本文化について、どのような発信をされていますか。
YouTubeでは、日本の職人さんや後継者不足といったテーマを英語で発信しています。職人さんに一日密着し、その仕事や技術、背景にある課題などを海外の方に伝える取り組みです。
Instagramでは、日本国内で展開中の店舗における羽織のラインナップ紹介やクライアントの方々による体験内容の紹介を行っています。
海外の方からは「こんなことが起きているとは知らなかった」という反応も多く、コメントもほぼ海外からいただいています。羽織の顧客を増やしていくことと、日本の職人や文化そのものの認知を広げていくこと。この二つを並行して進めていきたいですね。
――最後に、仕事のなかでやりがいを感じる瞬間を教えてください。
一番やりがいを感じるのは、海外のお客様に羽織を通じて日本の文化や歴史を知っていただき、喜んでもらえたときです。羽織について説明した際に表情が明るくなったり、「日本について新しいことを知れた」という反応をいただいたりすると、とても嬉しいですね。
また、事業の立ち上げから仕入れ、マーケティング、広告運用、接客、販売まで一気通貫で携われることにも面白さを感じています。これまで培ってきたGoogle広告やリスティング広告、P-MAX広告(1つのキャンペーンで検索、YouTube、ディスプレイ、Gmailなど、Googleのすべての広告枠へ自動配信し、AIの機械学習で入札やターゲティングを最適化するGoogle広告のメニュー)、Meta広告などの経験も活かしながら、自分で施策を動かし、その先にいるお客様の反応まで直接確かめられることが、この仕事ならではの魅力です。
これからも羽織を販売するだけではなく、そこに携わる職人さんの思いや日本文化の価値まで含めて海外へ届け、本当にその価値を理解し、好きになってくださる方を増やしていきたいと思っています。