音と声で、人のつながりと健康を育む
株式会社くつろぎミュージック 代表取締役 田中 寛子氏
株式会社くつろぎミュージックは、音楽教室、出張コンサートやイベントの企画・開催、ボイストレーニングや歌に関するセミナーを展開しています。掲げるコンセプトは「音がつながる、人がつながる」。音楽をきっかけに世代を超えた交流を生み、地域の中で孤立や孤独を感じる人を減らすことを目指しています。現在は、声を生活機能の一つとして捉え、健康習慣につなげる新たなプログラム「声活ウェルネス」の発信にも力を入れています。本記事では代表の田中寛子氏に、事業への思いや経営の道に進んだ背景、仲間との関係、今後の展望について伺いました。
音がつなぐ、人と地域の未来
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
大きく三つの事業に取り組んでいます。一つ目は、出張コンサートやイベントの企画・開催です。二つ目は音楽教室事業、三つ目はボイストレーニングや歌に関するセミナー事業です。
コンセプトとして掲げているのは、「音がつながる、人がつながる」ということで、音楽をキーワードに世代を超えて人がつながり、地域の中で孤立や孤独を感じずに過ごせるような事業を目指しています。
――事業に込めている思いを教えてください。
私は、人が楽しんでいる姿を見ることが好きです。一方で、もともとは人見知りで、初対面の方とすぐに会話をしたり、対話をしたりすることが得意ではありませんでした。しかし、音楽には言葉がなくても人と人の距離を近づける力があります。
社会の中で生きていくことをしんどいと感じている方に対して、音楽を通して何かできたらと考えてきました。くつろぎミュージックと関わることで、毎日が少しでも楽しくなってほしい。その思いは、事業を始めてからずっと変わっていません。
仲間と築く、持続可能な音楽活動
――経営の道に進んだきっかけを教えてください。
もともと私には、音楽を通して実現したい活動があり、それを一緒にやってくれる仲間がいました。ただ、音楽活動を続けるには、さまざまな費用がかかります。当初はボランティアに近い形で続けていましたが、一緒に活動してくれる仲間には、きちんと対価を支払いたいという思いが強くなりました。
大きな利益が出る事業ではないとしても、音楽の活動だから、ボランティアだからと片付けるのではなく、会社として利益を生み出し、仲間へ還元していく。その意思を表すために会社という形を選び、経営の道に入りました。
――経営判断で大切にしていることはありますか。
最終的な判断は私がしますが、その前に、現在一緒に活動している仲間へ意見を聞くようにしています。また、年齢を問わず、生徒さんや知人にも話を聞きます。
自分一人の考えだけで決めるのではなく、さまざまな立場の人の意見を受け止めたうえで、最後は自分が責任を持って判断することを大切にしています。
無理をさせず、互いに心地よい距離で働く
――現在の組織体制を教えてください。
会社としては、私が一人で担っています。そのほかに、業務委託という形で6人のスタッフが活動に関わっています。
――スタッフとのコミュニケーションで心がけていることはありますか。
人によって心地よい距離感は異なるため、近すぎず、遠すぎない関係を意識しています。スタッフそれぞれに生活環境や家族構成がありますので、仕事をお願いするときには「無理のない範囲で」という言葉をよく使います。
ここまでは一緒に取り組んでほしいと希望を伝えつつ、無理をさせないことを常に心がけています。今後、新しい仲間と働くときにも、私たちが目指す方向や思いを理解し、同じ方向を向いてくれることを大切にしたいです。
――仕事で譲れない価値観はありますか。
まずどんな人でも最初は否定しないことを心がけています。例えば、ピアノを始めたばかりの方が「エリーゼのためにを弾きたい」と希望されたとき、最初から「無理です」とは言いません。まずは「やってみましょう」と受け止めます。
そのうえで、少し簡単なアレンジにするなど、その人に合った着地点を一緒に探します。相手の思いを一度受け入れ、共感しながら方法を考えることは、レッスンでも経営でも大切にしています。
日常から離れる船旅が、心を整える時間
――リフレッシュ方法を教えてください。
大阪以外の場所へ出かけることです。大阪にいると、どうしても仕事のことを考えてしまうため、旅行をして日常から離れる時間をつくっています。
特に船旅が好きです。以前、仕事でクルーズ船に乗り、国内や海外へ行ったことがありました。船内では、お客様と一緒に歌ったり、声を使った体操やリズム体操をしたりするイベントを担当していました。その経験をきっかけに、今も機会があれば船に乗って出かけ、リフレッシュしています。
「声活ウェルネス」を新たな健康習慣へ
――今後、力を入れていきたい事業を教えてください。
これから最も力を入れたいのが、当社で開発した「声活ウェルネス」です。歌や音楽に対して、難しそう、ハードルが高いと感じる方が少なくありません。しかし、歌には自信がなくても、声がかすれてきた、高い声が出にくくなったといった悩みを抱えている方は多くいます。
そこで、歌の上達だけを目的にするのではなく、声を生活機能の一つとして捉え、自分の声を通して健康を見直し、健康習慣を身につけてもらうプログラムを考えました。
――どのように開発してきたのでしょうか。
歌うときの発声練習を土台に、20数年一緒に活動してきた音楽仲間と二人で考えてきました。約10年前から自分たちなりに取り組みを重ね、試行錯誤を繰り返して二人のオリジナルプログラムとして形にしたものです。
4月から発信を始め、行政の事業としても採択されました。中心となる対象は70代前後のシニア層を考えていますが、40代や50代の方にも取り組んでいただける内容になっています。
――現在の課題と、目指していることを教えてください。
私自身が音楽畑で歩んできたため、どのように社会へ発信すればよいのか、どのようにこのメソッドを知っていただくのかが今の課題です。「声活ウェルネス」という言葉は、現在商標登録を申請しています。そして、この「声活ウェルネス」の講師(声活コーディネーター)の養成にも力を入れています。
これから発信を重ね、「声活ウェルネスといえば、くつろぎミュージック」と思い出していただける存在を目指します。声を通して自分の健康を見つめ直す習慣を、より多くの方へ届けていきたいです。