動画編集で「大人の“底値”」を上げる――「働く」をもっとかっこよく、夢中になれるものへ
株式会社ブイスト 代表 山田 一真氏
株式会社ブイストは、映像制作と動画編集のオンラインスクールを軸に、クリエイティブの力で社会をより良くすることを目指す会社です。「大人の“底値”を上げる」を理念に、売上の規模よりも自らの熱狂と顧客への責任を重んじる山田氏。本記事では、起業の背景や教育へのこだわり、組織運営、AIを見据えた今後の展望について伺いました。
目次
映像制作と伴走型スクールで「大人の“底値”」を上げる
――現在の事業内容と、動画編集スクールの強みを教えてください。
当社の主な事業は、Web動画の制作と、動画編集オンラインスクールの運営です。スクールでは、個人や中小企業の経営者に動画制作の技術やノウハウを提供しています。
強みは、オンラインでも隣に家庭教師がいるようなサポートを受けられることです。動画講義で学び、分からない部分をZoomで一緒に操作します。広告費などを削り、手厚い支援を低価格で届けることにもこだわっています。
――御社の理念には、どのような思いが込められていますか?
当社は「大人の“底値”を上げる」を理念に掲げています。原点は、新卒で福岡から上京し、埼玉県から渋谷の会社へ通っていた頃の経験です。
学生時代は、社会人とは世の中に貢献しながら、目を輝かせて働くかっこいい存在だと思っていました。しかし、満員電車で目にしたのは、仕事を苦痛や、お金のために乗り越えるものとして捉える大人たちです。憧れていた姿との違いに、大きなカルチャーショックを受けました。
だからこそ、動画編集を教えるだけで終わらせたくありません。身につけたスキルを生かして仕事を獲得し、自分の人生や事業に主体的に取り組めるようになることがゴールです。
仕事を愛し、やりたいことに熱狂する「かっこいい大人」を増やすことが、私の目指す未来です。受講生にも「今はかっこ悪いので、かっこよくなりましょう」と率直に伝えています。
動画への熱狂と家族への責任が導いた福岡での起業
――動画の分野へ進んだ原点を教えてください。
中学生の頃、スマートフォンの普及とともに、テレビからインターネットへ移り変わる流れを体感したことが原点です。YouTuberという言葉がまだなかった時代からYouTubeに夢中になり、「いつか動画に関わる仕事に就くだろう」と感じていました。
新卒で入った会社も、映像制作や動画マーケティングを手がける企業です。私は好きで熱狂できるものを仕事にしてきたのだと思います。
――会社員から経営者へ転身したきっかけは何だったのでしょうか?
最初は会社員として働きながら、SNSで集客して動画編集スクールを運営していました。本業8時間、副業8時間、睡眠8時間の「8×8×8」を基本に、往復約2時間の通勤中も発信を続けた結果、個人事業の売上が約9,800万円に達したんです。
母が病に倒れ、治療費や妹の大学の学費、家族の生活費を私が支える必要があったことも、そこまで取り組めた理由です。さらに収入を増やす必要があり、より多くの人の役に立てる可能性も感じて起業しました。
拠点に福岡を選んだのは、好きな九州でプロダクトに専念したかったからです。競合や情報の多い東京を離れ、人脈や情報をあえて引き算しました。
卒業生と築く在宅チームと、変化を生む本気のサポート
――組織運営で意識していることを教えてください。
現在、社員はおらず、在宅の業務委託パートナーと運営しています。カリキュラムを終えて当社の基準を超えた受講生に声をかけ、採用する形です。考え方が共有され、指示書やマニュアルもあるため、オンラインでも円滑に進められます。
卒業生の採用は、採用コストを抑え、スクールを低価格で提供することにもつながっています。
――受講生への指導で大切にしていることは何でしょうか?
目先の顧客満足を追わないことです。優しく接して気持ちを満たすだけなら、仮の満足はつくれます。しかし、企業から仕事を受ける以上、駄目な部分は駄目だと伝えなければなりません。
努力の最中は「厳しい」「このスクールは嫌いだ」と思われるかもしれません。それでも、実力がつき、成果が出たときに支援の意味を理解してもらうことが本当の満足です。
私自身もセミナーやグループコンサル、勉強会、LINEグループを通じて、今も直接支えています。
売上より「熱狂」と責任を選ぶ、天狗にならない経営
――経営判断の軸になっている考えを教えてください。
「売上が出そう」「儲かりそう」ではなく、私が熱狂できるか、お客様に責任を持てるかを優先しています。
協業の提案をいただいても、やらない選択の方が多いですね。商機は逃していると思いますし、年商だけを考えれば別の道もあったかもしれません。
それでも、覚悟を持って骨を埋められない事業には取り組みたくありません。売上は相手が決めることくらいに捉え、規模とは別の価値を追っています。
――経営をする上で「これだけは譲れない」という想いはありますか?
「実力以上のことはしない」という姿勢です。
動画が好きだった時期に動画編集が流行ったことなど、時代や運に下駄を履かせてもらった部分も大きいと感じています。だからこそ、常に上には上がいると考え、「調子に乗るな」と自分に言い聞かせています。
個人事業で大きな売上が出た頃は、人への接し方にも、いきがった部分が表れていたと思います。経営を続ける中で気づき、自分を客観視できたからこそ、会社を伸ばすために上場企業のグループへ入る決断もできました。
今も「私は天狗だ」という前提で、自分を見ています。
――休みの日は、どのようにリフレッシュしていますか?
田舎へ車を走らせ、九州の山や川、海、森で友人とアウトドアを楽しみます。渓流で遊んだり、イノシシや鹿の肉を鉄板で焼いて食べたりしていますね。
自然の雄大さに触れると、「自分はちっぽけだ」と感じます。リフレッシュが一番の目的ですが、自分の小ささを知ることが、天狗になるのを防いでいるのかもしれません。
エフ・コードグループとの共創と「AI×動画編集」への挑戦
――事業を広げるうえで、現在感じている課題を教えてください。
課題は、会社のリソースと私自身の実力です。
経営者4年目になり、業務委託の方へ仕事を任せることには慣れてきました。ただ、人・物・金を適切に動かす経営者というより、今もプレイヤーだと感じています。
今後は社員の採用やオフィス、実店舗を持つことなども経験し、会社のリソースを増やしたいです。私に属人化しているノウハウを広げることも課題だと捉えています。
――今後、どのような事業やサービスに挑戦していきたいですか?
2025年8月に上場企業のエフ・コードグループへ入りました。グループ内にはオンラインスクールやIT系サービスを展開する会社が複数あるため、競争ではなく、共にサービスをつくる「共創」に取り組みたいです。
動画制作も、自分だけで手を動かす時代から、AIを仲間にして効率的に多くの動画を生み出す段階へ移り始めています。当社のスクールも進化に追いつき、「AI×動画編集」を学べるスクールとして広げる施策に取り組んでいきます。