給食事業で培った信頼を、新たな価値へ──地域に愛される100年企業を目指すホテルづくり

株式会社桜の森ホテル&リゾーツ 代表取締役 荻久保 康利氏

学校給食業界トップシェアの親会社が学校給食事業で培ってきた経験を活かし、ホテル事業という新たな挑戦としてスタートした株式会社桜の森ホテル&リゾーツ。コロナ禍という先行きが見えない時期にあえて新規参入を決断し、地域とのつながりを大切にしながらブランドづくりを進めています。同社が大切にしているのは、「信頼」と「お客様のためになること」という変わらない軸です。本記事では、事業への想いや経営理念、そして今後の展望について伺いました。

給食事業で培った強みを活かし、地域に愛されるホテルブランドを育てる

――現在の事業内容について教えてください。

当社は2022年に学校給食事業を展開する株式会社東洋食品のグループの新規事業として設立しました。少子化によって学校給食市場の変化が見込まれるなか、新たな事業の柱としてホテル事業を立ち上げました。

現在運営しているホテルは、伊豆にある「伊豆今井浜温泉 今井荘」です。1934年に創業し、昭和天皇や海外要人も宿泊された由緒ある旅館を、2022年に引き継ぎました。そこから約2年をかけてリノベーションし、2024年8月にリニューアルしました。私自身も父、そして息子と三世代で宿泊した思い出のある場所であり、30年後に自分が経営に携わることになるとは想像もしていませんでした。ご縁の深さを感じながら、この宿を100年続く旅館へ育てていきたいと考えています。

今井荘のコンセプトは「スローリゾート」です。オールインクルーシブで、地元の新鮮な食材を楽しめる食事や、ゆったり過ごせるラウンジ、徒歩0分で行ける海など、お客様に心からくつろいでいただける空間づくりを目指しています。リニューアルから約2年が経ち、リピーターのお客様も増え、ブランドとして一定の人気をいただけるようになってきました。 

当ホテルは、河津町の地元企業や地域の皆さまに支えられて成り立っています。だからこそ、地域とのつながりを大切にしながら、河津町の観光産業の発展とともに成長していきたいと思っています。 

コロナ禍だからこそ挑戦したホテル事業 変わらない軸は「信頼」と「お客様のためになること」

――会社の理念や、ホテル事業へ挑戦した背景について教えてください。

ホテル事業を始めたのは、多くのホテルが事業を縮小したり撤退したりしていたコロナ禍でした。先行きが見えない状況ではありましたが、私は宿泊需要は必ず戻ると信じていました。新規参入の立場だからこそ、良い物件と巡り合える貴重な機会でもありましたし、結果として非常に良いタイミングだったと感じています。

また、当時はホテル業界では離職者も多く、自分たちで新しいホテルをつくりたいという想いを持った経験豊富な人材が集まってくれました。

給食事業とホテル事業は一見異なる業界に見えますが、「食」と「公共性」、「ホスピタリティ」という共通点があります。どちらも、お客様に喜んでいただきたいという気持ちが根底にある仕事です。これまで給食事業で培ってきた経験は、ホテルでも必ず活かせるという確信がありました。

企業理念は、「世代を超えて、時代を越えて、人と社会に癒しとくつろぎを与え続けること」です。お客様には何世代にもわたって訪れていただき、地域から愛され、社員には信頼の中でやりがいを持って働いてもらえる会社でありたいと思っています。

判断に迷った時に大切にしているのは 、「社是である『信頼』に合っているか」「本当にお客様のためになるか」という2つの基準です。収益が見込める事業であっても、この考え方に当てはまらなければ取り組みません。その価値観は社員一人ひとりにも浸透しており、ホテル事業への参入にも大きな反対はありませんでした。

現場を信頼して任せることで、それぞれの力が発揮される組織を目指す

――組織づくりや社員との関わりで大切にしていることを教えてください。

私は、事業は人との信頼の積み重ねで成り立つものだと考えています。親会社である給食事業も、その信頼を大切にしながら長年事業を続けてきました。その積み重ねがあったからこそ、新たにホテル事業へ挑戦するときにも、多くの方が力を貸してくださったのだと思っています。

ホテルの立ち上げでは、大手ホテルで経験を積んできた優秀な人材が、「新しいホテルをつくりたい」という想いで集まってくれました。最初は紹介による採用が中心で、その方々がさらに信頼できる仲間を紹介し、人材の輪が広がっていきました。 現在は紹介と応募の両方を取り入れながら、人材を迎えています。

採用で私が最も重視しているのは、人として信頼できるかどうかです。能力や経験ももちろん大切ですが、それ以上に人間性を見ています。

現場の運営については、ホテル業界で経験を積んできたメンバーを信頼して任せています。私は理念や方向性を示しながら、グループとして守るべき安全基準やコンプライアンスを徹底しています。 

桜の森ブランドを広げ、地域の魅力を届ける存在へ

――今後の展望について教えてください。

今後は、桜の森ブランドをさらに育てていきたいと思っています。

現在は2号店の計画も進めており、2027年夏には、箱根小涌谷の国立公園内に「風とこもれび」を開業する予定です。「森を楽しむホテル」をコンセプトに、国立公園の豊かな自然に囲まれながら、癒やしとラグジュアリー、そして発見や楽しさが共存する、新しい滞在体験を提供したいと考えています。

その先は、自社で施設を保有することだけにこだわらず、運営に特化した展開も視野に入れています。これまで培ってきたノウハウを活かしながら、地域の魅力を活かした宿づくり を進め、桜の森ブランドを広げていきたいですね。

一方で、物価の上昇や建設コストの高騰は大きな課題です。しかし、グループ全体の調達力や、これまで築いてきた取引先との信頼関係を活かしながら乗り越えていきたいと思っています。

また、グループ内での人材交流やノウハウの共有を進めることで相乗効果を高め、スタッフがよりお客様に向き合える環境を整えていきたいと思っています。 

判断に迷ったら、お客様を最優先に考える

――経営で譲れないことを教えてください。

私が判断に迷ったときは、いつも「お客様」「会社」「自分」の順番で考えています。

まず、お客様にとって本当に正しいことなのか。次に会社として守るべきことなのか。そして最後に、自分の都合を考えるようにしています。自分たちの都合や効率を優先するのではなく、お客様の満足と安心・安全を第一に考えることを大切にしています。この考え方は、給食事業でもホテル事業でも変わりません。

――仕事以外では、どのようにリフレッシュされていますか。

休みの日は、ゴルフに出かけたり、買い物をしたり、美味しい食事を楽しんだりしてリフレッシュしています。

――親会社から受け継いできた「食」への思いについて教えてください。 

親会社では、食材等の調達などを長年担ってきました。食材へのこだわりは今も変わらず、自分自身の目と舌で品質を確かめることを大切にしています。季節ごとに美味しいものを見極め、その時期ならではの食材をお客様に味わっていただきたいという想いがあります。

――最後に、これからどのような宿を目指していきたいですか。 

親から子へ、子から孫へ、何世代にもわたって愛される宿を目指していきたいと思っています。地域に根差し、お客様に何度でも訪れたいと思っていただける場所をつくり続けていきたいです。

Contact usお問い合わせ

    お問い合わせ内容
    氏名
    会社名

    ※会社・組織に属さない方は「個人」とお書きくだい

    役職

    ※会社・組織に属さない方は「一般」をお選びください

    メールアドレス
    電話番号
    どこでお知りになりましたか?
    お問い合わせ内容

    プライバシーポリシーに同意して内容を送信してください。