女性が元気でいることがすべての始まり――セルフケアから未来の性教育をつくる
株式会社moN 代表 西田 美華氏
株式会社moNは、35歳以降の女性を主な対象に、オンラインサロンの運営や商品開発、顧客サポートに取り組んでいます。事業の根底にあるのは、女性が自分の体や心を知り、自分自身を大切にできる社会をつくることです。実体験を重ね、本当に必要だと確かめたものだけを形にするという姿勢を貫きながら、セルフケアを当たり前の文化にし、未来の性教育へつなげることを目指しています。事業を始めた背景や組織づくり、これから実現したい未来について伺いました。
女性支援の先にある「未来の性教育」
――現在の事業内容について教えてください。
当社では、私自身が運営しているオンラインサロンを起点に、商品開発やセミナー、お客様のサポートなどを行っています。大きな柱は商品開発で、特に女性支援につながるものをつくることに力を入れているところです。
オンラインサロンは、35歳以降の女性を主な対象としています。デリケートゾーンのケアやメンタルなどについて、まず「なぜケアが必要なのか」を知っていただくことを大切にしてきました。
理由がわかり、自分ごととして捉えられるようになると、実際に行動してみたいという気持ちにつながります。そこでセルフケアの方法をお伝えし、一緒に取り組んでいく形です。カウンセリングというより、情報を届けながら伴走していくイメージですね。
――事業を通じて実現したいことは何ですか。
大きなビジョンは、未来の性教育につなげることです。その手前にあるのが、今を生きる女性への支援だと考えています。
私は、女性が元気でいることがすべての始まりだと考えます。日本の社会を良くしていくためにも、まず女性が心身ともに元気でいることが大切です。
そのため、事業を考えるときには「これは誰の役に立つのか」を強く意識しています。単に利益につながるから取り組むのではなく、本当に必要な人に必要なものを届けられるかどうかが判断軸です。
実体験を重ねた先に生まれた現在の事業
――現在の事業につながったきっかけを教えてください。
エステサロンで多くの女性と向き合うなかで、「なぜデリケートゾーンのケアはないのだろう」と違和感を持ったことが、1つの出発点でした。
30歳で子宮がんを経験したことで、さらに自分の体やデリケートゾーンについて深く学ぶようになりました。その後、サロンは予約が取れないほどになりましたが、自分にしかできない形では広がらないとも感じるようになったのです。
さらにコロナ禍でお客様がサロンに通えなくなり、離れていてもサポートできる方法を考える必要が生まれました。そうした流れのなかで、オンラインサロンや法人という現在の形につながっています。
――経営で大切にしている判断軸は何ですか。
まず、自分がワクワクできるかどうかです。ただ、実際に決断するときには、それ以上に「これは誰の役に立つのか」を考えるようにしています。
もう1つ譲れないのは、自分が体験していないことを事業に入れないことです。商品開発であれば、まず自分で試し、その上でお客様にも体験していただきます。必要性を確かめてから商品にするのが私のやり方です。
工場にも足を運びますし、パッケージを選ぶときも実際にさまざまなものを見ます。知らないもの、また自分がいいと思えるものでないと、全力でお伝えすることはできません。なぜ良いのかを自分自身が理解し、熱量を持って伝えるためにも、まず自分が知ることを大切にしています。
近すぎず、離れすぎない組織づくり
――社内のコミュニケーションで意識していることはありますか。
一番意識しているのは、近くなりすぎないことです。以前、距離が近くなりすぎてうまくいかなかった経験があるため、現在は適切な距離を保つようにしています。
ただし、コミュニケーション自体はかなり取ります。毎週戦略会議を行い、しっかり話す時間を設けています。また、スタッフ本人だけを見るのではなく、家族などの背景も知った上で接することを大切にしてきました。
各部署で取り組んでいることは違うため、必要以上には介入しません。一方で、やり取りの中で「少し元気がないのかな」と感じたら、直接声をかけてご飯に行くこともあります。
自由にしてもらいながらも、きちんと様子を見る。近くなりすぎず、それでも家族のように向き合う距離感を意識しています。
――人材育成では、どのようなことを大切にしていますか。
現在、一番時間もお金もかけているのは人材への投資です。私だけの考え方に染まらないよう、外部のさまざまな人にも関わっていただき、多様な価値観に触れてもらう機会をつくっています。
以前は、私と同じ方向を向いてもらうことが良いと思っていました。しかし、私の考え方ややり方をそのまま実践しようとすると、無理をしてしまう人もいます。
目の前の人を潰してまで、世のなかに何かを広げても意味がありません。それぞれに役割があり、得意なことも違います。その人自身の可能性を見つけてもらうために、必要であれば1人のために会議をするほど時間をかけています。
セルフケアを当たり前の文化にするために
――現在、新たに挑戦していることを教えてください。
一般社団法人「未来型性教育」では、無料で情報を得られるオープンチャットを2026年8月1日に開放しました。現在、そこにはさまざまなお母さんたちが参加しているところです。
これから規模を広げながら、現在の日本に必要な性教育のあり方について、一緒にアウトプットしながら形をつくっていきたいと考えています。
また、以前から見てきた下着ブランドとのコラボレーションも決まりました。私が考える「体にいい下着」のあり方を、実際の商品づくりを通して形にしているところです。
単に物をつくるのではなく、その背景に教育があり、女性の人生を支えるところまでつなげたいという思いがあります。
――最終的に実現したいことは何でしょうか。
セルフケアを当たり前の文化にすることです。「私なんて」と自分を否定したり、自己肯定感を持てずに悩んだりする人は、世のなかにたくさんいると思っています。
私自身も、以前は自分の体や自分自身を嫌い、否定していた時期があります。しかし、セルフケアを通じて自分を大切にするきっかけが生まれ、本当の意味で自分の体を好きになりました。人間としても、自分自身を好きになれたのです。
その経験から、自分の体を知り、自分自身を大切にすることこそ、根本にある性教育なのではないかと考えるようになりました。企業規模を大きくしたいわけではありません。夢や野望を持っている女性の応援のためであれば企業も大きくするし、必要であれば出資をしたり、一緒に取り組んだりしたいと思っています。
私自身がすべてを成し遂げられなくても、発信し続けることに意味があると考えます。セルフケアを当たり前の文化にし、それを未来の性教育につなげていく。そのために、自分自身で経験を重ねながら、1つずつ形にしていきたいです。