失明を減らすために、世界初の技術を日本から――窪田製薬ホールディングスが挑む眼科医療の未来
窪田製薬ホールディングス株式会社 代表取締役会長 社長兼最高経営責任者(CEO) 窪田 良氏
窪田製薬ホールディングス株式会社は、眼科領域における革新的な技術を通じて、失明を減らすことを目指す企業です。医薬品を中心に、医療機器や早期診断につながる装置などの研究開発を進めています。本記事では、代表の窪田良氏に、現在の取り組みや経営の考え方、今後の展望などについて伺いました。
「失明を減らす」を原点に、医薬品と医療機器を開発
――現在の事業内容について教えてください。
当社は、眼科分野で革新的な技術を活用し、失明を減らすことを目標に設立した会社です。そのための手段として、医薬品や医療機器、早期診断を可能にする装置の開発、情報発信などに取り組んできました。
現在、会社として最も力を入れているのは医薬品の開発です。一方で、AR技術を応用した近視進行ケアデバイス「Kubota Glass®」や、遠隔医療用の網膜モニタリング機器など、医療機器の研究開発も進めています。Kubota Glass®は非医療機器版をすでに販売していますが、医療機器としては開発段階です。網膜モニタリング機器についても、各大学などで臨床試験を行っています。
――Kubota Glass®は、どのような発想から生まれたのでしょうか。
子どもの近視を早い段階から抑えるために、屋内でも目の環境を屋外に近づけられないかという発想から生まれた技術です。
私たちが主な対象として考えているのは、発症初期の近視、つまり子どもの近視です。病気は早期に発見し、早期に介入するほど治療効果が期待できます。また、近年は子どもが屋外で過ごす時間が減っていることが、近視に関わる環境要因の一つとして示されています。
近視は、単に近くが見えにくくなるという問題だけではありません。将来的な目の病気にも関わるため、できるだけ早い段階で進行を抑えることが重要だと考えています。そうした課題に対し、新たなアプローチとして生まれたのがKubota Glass®でした。
眼科医から研究者、そして経営者へ
――経営者になられた経緯を教えてください。
もともとは日本で医学部を卒業し、眼科医として10年以上診療を続けていました。そのなかで、治療法がない患者さんを数多く目にしたことが大きな転機です。自分が持っている医学知識を使い、まだ治療法のない病気に対して新しい治療法をつくりたいと強く考えるようになりました。
その後は研究者の道を選び、渡米して大学で研究・教育に携わりました。大学で発明した技術をもとに、2002年に米国シアトルで会社を起業、当初は大学教員と経営を兼ねていましたが、次第に事業へ集中するようになり、現在に至ります。会社の形態や国籍には変遷がありましたが、一貫して経営に携わってきました。
失敗を許容する文化が、イノベーションを生む
――経営するうえで、譲れない考え方を教えてください。
「失敗を許容すること」です。イノベーションには失敗がつきもので、当社では「高速トライ・アンド・エラー」を大切にしています。
医薬品は、3万種類をつくっても世の中に出るのは1つといわれるほど、開発の成功確率が低い世界です。だからこそ、失敗を避けるのではなく、仮説が違えば早く棄却して次へ進む。その試行錯誤に耐えられるカルチャーをつくることが、イノベーションには欠かせないと考えています。
――採用や組織づくりでは、どのような点を重視していますか。
採用では、人となりと本人のやる気を総合的に見ています。実際に話すなかで、その思いを感じられた方に加わってもらうという考えです。
また、当社のスタッフの多くは米国や欧州に在住しているため、基本的にリモートで仕事を進めています。人数を極力抑えてコストを下げ、効率よく経営することも私の重要な役割です。
認可を見据え、大企業との連携を進める
――今後、特に力を入れていきたいことは何でしょうか。
直近では、主力になることを期待している医薬品の認可を目指し、その後は医療機器についても各国で認可を取得していきたいと考えています。
一方、医薬品開発には長い時間と多額の資金が必要です。現在の大きな課題も資金調達にあります。そのため、数百億円規模の投資が可能な大企業とのパートナリングを基本戦略とし、さまざまな企業と話を進めているところです。
――3年後の事業規模をどのように描いていますか。
現在の売上を1とすれば、100倍ほどにしたいですね。医薬品は認可されれば年間数千億円規模の売上につながる可能性がある一方、「0か100か」という世界でもあります。それだけ大きな可能性を持つ事業だからこそ、長い時間をかけて挑戦する価値があると捉えています。
――最後に、事業を通じて、どのような社会を実現したいですか。
寿命が延びていくなかで大切なのは、単に長生きすることではなく、健康な状態をできるだけ長く維持することです。視力についても、若い頃に近い状態で生涯使い続けられる社会をつくりたいと考えています。
私の原点には、子どもの頃に海外で暮らした経験があります。当時、「日本は米国の技術をまねして改良しているだけだ」と言われ、悔しい思いをしました。それをきっかけに、ゼロから生み出したオリジナルの技術を日本から世界へ発信できる人間になりたいと思うようになったんです。
私たちが目指すのは、日本発のイノベーションで世界初のものを生み出すことです。失敗を恐れず試行錯誤を重ねながら、より多くの人が生涯にわたって良好な視力を保てる社会の実現に向け、これからも挑戦を続けていきたいと考えています。